あと一人。
世間にはタカハシ法務大臣誕生と同時に
自衛隊の解散。第二次大戦以来の日本軍再編のニュースが飛び交っていた。
防衛省は存続するが、内閣総理大臣ヤマガタは
陸軍・空軍・海軍それぞれに大臣一人を置いた。
既に九条は破棄している。
それに大臣の数は本来14人以下と憲法で定められているが、
実際は場合により17人まで置くことが出来る。
今回は15人である。
ヤマガタはこれを違憲では無いとし、
半ば強引に押し切る形となった。
これが第九条破棄の理由。
75年前に既に仕組まれていたのか・・・
タカハシはヤマガタの後ろを歩いている。
彼は法務省の面々、具体的には副大臣、検事総長、
公安審査委員会委員長、公安調査庁長官と4人に挨拶を済ませていた。
しかし、ヤマガタはあと一人いるのだという。
「ヤマガタさん。」
反応はない。
「あと一人というのは?」
「ここにいる。」
その部屋の中には、
一人の男が座っていた。
「あなたは?」
「法務省顧問のオバタです。以後宜しく。」
―嫌な感じのする笑顔だった。
「あの・・・」
スズキはまだよく飲み込めていなかった。
「何です?」
「いや、ずっとここにいないといけないんですか?」
「そうです。では私は仕事に戻ります。」
ヨコミゾは扉を閉め、
それっきり来なかった。
「・・・。」
正直スズキは暇だった。
試しにベッドの数を数えてみた。 46だった。