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ドリー。  作者: EtEt
1/8

75年前、そして75年後。

この小説には、

実在の機関・団体名等が出てくる場合があります。

ご都合の悪い点などございましたらお知らせ下さい。

「スズキさん 良かったですね。あなたは運が良い。」



何のことか分からなかった。



「あなたが事実上、最後の刑死人ってことですよ。」



そうか、俺が最後か。

馬鹿なことをした。今更どうしようもないが。



「何でそんな暗いカオするんです?」



男が笑いながら言った。

殴り飛ばしてやろうかと思った。



「だから言ったじゃないですか。事実上って。」



事実上・・・?

何のことか分からなかった。








タカハシは新聞を広げていた。

新聞の一面には日本の癌完全治療から75周年を祝う式典が

昨日行われたことを報じている。



「75周年ねぇ 何で5年刻みでやるんですか?」



返事はない。



「あのー もしもし?」



急に目の前に女が現れた。

ソファに座っていた彼はのけ反ることが出来ず

ただ背筋が奇妙にのびた。



「いちいちうるさいんですよ。もう少し仕事熱心になりませんか?」


「悪い悪い。」



彼女はヨシダと言った。

一応はタカハシの秘書ということになる。

新聞を取り上げたのは彼女だった。



「先程14:15 共民党ヨシハラ派衆議院議員、ナカムラが死にました。」


「いいよそんな長い説明。 ナカムラで分かるよ大体。」



大体という言葉に多少の苛立ちは感じたものの、

ヨシダは続けた。



「恐らく、暗殺かと。」


「ヤな時代だねぇ。」


「先生ッ ホントにやる気あるんですかぁ?」


「人はすぐ殺されるわ

 殺したヤツは死刑にならないわ

 昔と変わったのはテレビがメガネなしで3Dで見れるぐらいだし。



 ・・・そんな良い時代じゃないよねぇ。」




「で、何やればいいの?」



ヨシダは困惑していた。

が、すぐにタバコに手を伸ばすタカハシを制止した。



「いてッ 何すんのヨシダ。」


「いてッ じゃないですよ 何タバコ買ってんですか。」


タカハシの手はまたもタバコに伸びていたが

今度はヨシダは止めなかった。



「いいだろ 一箱ぐらい・・・」


「ダメです。タバコ一箱いくらすると思ってるんですか?」


「いいじゃん 諸経費で落とせば。」


「だから私、政治家って嫌いなんです。」


「あぁ寂しいなぁ ヨシダにフラれたぁ」



そう言うとタカハシは背広を取った。

議員バッヂは付けっぱなしだった。



「出かけるよ。」


「御気を付けて。」



この会話だけは今までと違い、

妙な真剣さが取り巻いていた。

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