4章 完遂
「殺せ! こいつは魔物に魂を売った裏切り者だ!」
レオンが叫び、剣を抜いて突進する。王都最強と言われた一撃。
しかし、カイルは指先一つ動かさない。
「【記録抹消】」
カイルが呟くと、レオンの剣が空中ですり抜けた。
自動書記により「レオンの攻撃が命中する未来」そのものが、物語のページから削除されたのだ。
「なっ……!? 手応えがない!? 魔法か、幻術か!」
「いいえ、レオン様。……彼は、この世界の『法則』そのものを書き換えているのよ」
後ろで震えていたクラリスが、絶望に満ちた声で呟いた。彼女の鑑定眼には、今のカイルが人間ではなく、この世界を記述する「神のペン」そのものに見えていた。
カイルは、魔物たちに命じた。
「殺す必要はない。……この街の『真実』を、すべて自動書記で空に投影しろ」
空が巨大なスクリーンへと変わる。
そこには、魔王城でカイルを突き飛ばしたレオンの醜い笑い声、自分たちだけ逃げ出した臆病な姿、そしてこれまで二人が名声のために切り捨ててきた多くの犠牲者たちの記録が、一秒の狂いもなく再生された。
「や、やめろ! 消せ! それは嘘だ!」
レオンの叫びは、民衆の怒号にかき消された。




