第26章 不協和音の化身(カオス・ノイズ)
カイルが世界の「仕様変更」を繰り返した結果、世界はあまりにも平和で、美しく、そして**「静かすぎる」**場所になってしまいました。
争いは消え、病は癒え、雨は降るべき時に降り、風は心地よいリズムを刻む。しかし、その「完璧な調律」が、ある存在を激怒させることになります。
第40章:不協和音の化身
ある日の午後。カイルが「小鳥の囀りのピッチ」を微調整していた時、空の色がどす黒い紫色に染まりました。
空間がガラスのように割れ、そこから一人の男が這い出してきます。全身から不快なノイズを放ち、歩くたびに黒いモヤが地面を汚していく存在――「不協和音の化身」ノイズです。
「……耐えられん! 何だこの世界は! どこを向いてもドレミファソラシド……ヘドが出るほど心地よいではないか!!」
ノイズは耳を塞ぎながら絶叫しました。
「音楽には不協和音が必要なのだ! 歪み、軋み、狂った音こそが生命の躍動だろうが! お前の『完璧な調律』のせいで、俺の居場所がなくなっちまったんだよ!」
ノイズが腕を振ると、カイルが整えたばかりの美しい空気が、黒いノイズによってかき乱され、人々は不快な頭痛に襲われ始めました。
「カイル、あいつヤバいぞ! 俺たちの武器の和音を、あいつの発するノイズが打ち消しやがる!」
レオンがハープ剣を構えますが、ノイズの放つ「意味不明なリズム」に、光の巨人の力さえも空回りしてしまいます。
カイルは、怒り狂うノイズをじっと観察していました。
「……なるほど。君は『ズレ』そのものなんだね。でも、今の君の音は、ただの雑音だよ。……それじゃあ、もったいないな」
「何だと……!? 俺の存在を否定するか!」
「否定はしないよ。ただ、君は『使いどころ』を間違えてるだけだ」
カイルは【漆黒のハンマー】ではなく、一本の小さな**【調律用音叉】**を手に取りました。
「いいかい? 綺麗な和音だけじゃ、音楽は単調で飽きちゃうんだ。君みたいな『歪み』が入るからこそ、曲には深みが出る。……僕の指揮に合わせて、そのノイズを鳴らしてごらん」
カイルが地面をハンマーの柄でトントンと叩き始めました。それは、世界そのものをリズム楽器にする「ベースライン」の構築。
「クラリス、メロディを! セシリア、高音の装飾を! ノイズ……君は、その『歪んだ音』でスパイスを効かせて!」
「……は!? 何を言って……」
困惑するノイズでしたが、カイルが放つ圧倒的な「リズムの強制力」に、彼の体は勝手に動かされてしまいます。ノイズが放っていた不快な音は、カイルの調律によって「重厚なロック」のような、世界を刺激する**「心地よい不協和音」**へと変換されました。
• クラリスのフルートが空気を癒やし、
• セシリアのバイオリンが空間を華やかに彩り、
• ノイズの「歪み」が、世界に「熱量」と「刺激」を与える。
それらがカイルのハンマーによる完璧な拍子の中で一つになった瞬間、世界はただ平和なだけの場所から、**「生きていてワクワクする場所」**へと進化しました。
「……。……くそっ。……悪くない。俺のノイズが、こんなに格好良く響くなんて……」
演奏が終わった時、ノイズの体から黒いモヤが消え、彼はただの「少しパンクな格好をした音楽家」のような姿になっていました。
「分かったよ、調律師。お前の作る『完璧な世界』に、少しだけ俺の『毒』を混ぜてやる。それが一番面白い音楽になるんだろ?」
「話が早くて助かるよ。これからは、君がこの世界の『アクセント係』だ」
【SNS:王都実況掲示板:……(全域通信)】
990:名無しの冒険者
【奇跡】さっきの演奏、聴いたか!?
ただ綺麗だった世界に、急に「魂を揺さぶるような熱さ」が戻ってきたぞ!
991:名無しの冒険者
わかる! 平和すぎて少し退屈だったけど、今は冒険に出たくてウズウズしてる。
楽器職人のカイル、まさかの「世界の敵」までスカウトしてバンド組んじゃったよwww
992:名無しの冒険者
ギルドの看板に「不協和音も受け付けます」って書いてある。
犯人は言わなくてもわかるな。
#カイル被害者の会(改めファンクラブ) #不協和音はスパイス #世界がライブ会場
「……ねえ、カイル。これで本当に、世界中の音が揃ったのかしら?」
セシリアが満足げな汗を拭いながら尋ねます。
「いや、まだまだだよ。音に終わりなんてないからね」
カイルは微笑み、再びハンマーを手に取りました。
?億回のループの果てに、少年が辿り着いたのは、完璧を求めることではなく、**「あらゆる音を愛すること」**でした。
「さあ、みんな。次はどんな音が聞こえてくるかな?」
カイルのハンマーは、今日も世界のどこかで、新しくて面白い「音」を求めて響き続けるのでした。




