第21章 極限の調律と「火山の温泉化」
「言葉のトーン」を調律し、王都を究極の「正直村」に変えてしまったカイル。しかし、仲間のレオンたちは強くなりすぎ、既存の武器では彼らの「出力」に耐えられなくなっていました。
「……カイル、また剣が粉々になっちまった。俺の振りに、鉄がついてこれないんだ」
光の巨人が、折れた大剣を申し訳なさそうに見せに来ます。
カイルは少し考え込み、ハンマーを手に取りました。
「分かった。武器という概念を捨てよう。レオンたちの魂の響きをそのまま形にした、**『伝説の楽器型武器』**を僕が作るよ」
究極の素材を鍛えるため、一行は王都の北に位置する『焦熱の業火火山』を訪れました。ここのマグマはどんな鉱石も溶かしますが、その熱はあまりに荒々しく、繊細な調律には向きません。
「……うーん、この火山の鼓動、すごく『怒り』が混じってるね。これじゃあ素材がかわいそうだ」
カイルはお馴染みの音叉を火山に突き刺すと、ハンマーで**コンッ……コンッ……**と一定のリズムを刻み始めました。
「ちょっと、火力のピッチを落とすよ」
キィィィィィィィン……
その音が山全体に響き渡った瞬間。
煮えくり返っていた赤黒いマグマが、見る間に透き通ったエメラルドブルーの液体へと変化しました。温度は1200°Cから、ちょうどいい42°Cへ。
「よし、最高の『露天風呂』……じゃなくて、鍛冶場になったね。みんな、浸かっていいよ」
「いや、火山を温泉に変えるなよ!!」
レオンがツッコミを入れながらも、あまりの気持ちよさに肩まで浸かって「極楽だ……」と溶けていきます。
カイルはこの温泉(元・火山)の中で、魔王の心臓ハンマーを振るいました。魔王の素材、聖女の祈り、そして神様からくすねた「銀河の塵」を練り合わせ、三人のために「楽器」を鍛え上げます。
完成したのは、誰も見たことがない形状の武具でした。
1. レオン専用:【轟雷のハープ剣・カリバー】
• 見た目: 巨大な大剣だが、刀身がハープの弦のようになっている。
• 効果: 剣を振るたびに重低音の和音が響き、その振動で「斬る」のではなく「分子の繋がりをほどく」。空振りをしても、その音を聞いただけで悪しき者は浄化される。
2. クラリス専用:【慈愛のフルート杖】
• 見た目: 透き通った水晶の杖。横笛としても吹ける。
• 効果: 奏でるメロディがそのまま障壁や治癒魔法になる。彼女が吹く「子守唄」は、死者すら「あと五分だけ……」と言って二度寝(復活)させる。
3. セシリア専用:【天上のバイオリン弓】
• 見た目: 弓としても使えるバイオリン。
• 効果: 矢を放つたびに超高音の旋律が空間を裂く。彼女の演奏に合わせて矢が踊り、必中の追尾能力を持つ。
第27章:世界最響のオーケストラ、始動
「……なんだこれ。軽く振っただけで、空が笑ってるみたいな音がするぞ!」
レオンがハープ剣を奏でると、雲が割れ、虹がかかりました。
「私の声と、この笛が完全に『同調』してる……。カイルさん、これ、武器っていうより、体の一部みたいです」
クラリスが嬉しそうにフルートを吹くと、周囲の枯れ木が一瞬で満開の花を咲かせました。
カイルは満足げに、自分のハンマーを腰にしまいました。
「武器は人を傷つけるためのものじゃない。世界と調和するためのタクト(指揮棒)なんだ。……さあ、最高の音楽を奏でに行こうか」
【SNS:王都実況掲示板:新人パーティー観察スレ 9】
901:名無しの冒険者
【目撃談】『焦熱の業火火山』が、なぜか「世界最高の温泉リゾート」になってるんだがwww
頂上から鼻歌を歌いながら降りてくる三人組がいたぞ。
902:名無しの冒険者
その三人組、持ってる武器が全部「楽器」だったろ?
さっき巨大なドラゴンの群れに襲われてたけど、剣士のガキが剣の弦を「ベンッ」って弾いた瞬間、ドラゴンが全員ダンスしながら空の彼方へ飛んでいったぞ
903:名無しの冒険者
楽器職人カイル、ついに「暴力による解決」を「セッションによる解決」に上書きしやがった。
魔物すらファンにしてしまうとか、もう冒険者ギルドいらないだろこれww
904:名無しの冒険者
#カイル被害者の会(ドラゴン愛好会) #世界一物騒な演奏会 #火山でいい湯だな
「……ねえ、カイル。次はどこを『調律』しに行くの?」
セシリアが、新調したバイオリン弓を愛おしそうに撫でながら尋ねました。
「そうだね。……さっきから、西の方で『海の鳴き声』が少しフラットしてる気がするんだ。ちょっと波のリズムを直しに行ってみようか」
カイルはそう言って、軽やかな足取りで歩き出しました。




