第15章:聖女とディーヴァの「全身メンテ」
「……な、何よそれ! 私もよ! 私の歌声だって、最近少し高音の伸びが『ズレてる』気がするわ! カイル、私のも直しなさい!」
セシリアが、嫉妬と期待で鼻息荒く詰め寄ります。
「わかった。セシリアは喉の共鳴箱(胸郭)が少し硬いね。……はい、リラックスして」
コンッ。コンッ。
「はふぅぅぅぅぅぅ……んっ!?」
セシリアの口から、天使の軍勢が合唱しているような、物理的な破壊力を持つ「神の歌声」が漏れ出しました。彼女の背後には、幻覚ではない本物の光の翼が生え揃っています。
「クラリスも、魔法の回路が少し詰まってる。……コンッ」
「あ、ああああ……温かい……力が溢れて……」
クラリスの持つ杖が、あまりの純粋な魔力の流入に耐えかねて、世界樹の枝へと進化(先祖返り)を始めました。
【SNS:王都実況掲示板:新人パーティー観察スレ 6】
501:名無しの冒険者
【目撃談】木漏れ日の森に、伝説の「光の勇者」と「大天使」と「世界樹の聖女」が現れたんだが。
502:名無しの冒険者
いや、それカイルのパーティーだろwww
さっき街の入口で、レオンがくしゃみしただけで、街道の魔物が全滅してたぞ。
503:名無しの冒険者
楽器職人カイル、ついに「人間」を「神」に調律し始めた模様。
本人は「整体のついでです」って言ってるけど、それ、創造神の仕事だからな?
504:名無しの冒険者
ちなみに、カイルに調律されたレオンの今のLv、鑑定してみた奴いるか?
505:名無しの冒険者
鑑定した瞬間に魔石が爆発して、「測定不能(Over the God)」って出た。
#カイル被害者の会(神域) #もうお前らだけで魔王倒せるだろ #楽器職人(概念)
「……うん、みんな良い音になったね。これで次の依頼も安心だ」
カイルは満足げに、ハンマーを腰にしまいました。
目の前には、拳一つで山を穿つレオン、歌声で死者を蘇らせるセシリア、指先から森を再生させるクラリス。
「……なあ、カイル」
光り輝く肉体を手に入れたレオンが、遠い目で言いました。
「俺、もう普通の剣を持ったら、持った瞬間に剣が粉々に砕けるんだけど。これ、どうすればいい?」
「あ、そうだね。じゃあ次は、剣をレオンの力に合わせて『調律』してあげないと。……忙しくなりそうだな」
カイルの「無自覚な親切」は、ついに仲間たちを人間という枠組みから解き放ってしまいました。
平和な王都に、最強(物理)を通り越した「最響」のパーティーが爆誕した瞬間でした。




