第14章:骨組みの調律と「光の相棒」
街を、噴水を、そして魔王の寝床までを整えてしまったカイルの「職人魂」は、ついに身近な仲間たちの**「身体」**という究極の精密楽器へと向けられました。
本人にとっては、古くなったギターのネックを調整するような軽い気持ちだったのですが……。
「……ねえ、レオン。さっきから剣を振るたびに、右の肩甲骨のあたりから『ギシッ』て、嫌な摩擦音が聞こえるよ」
クエストの帰り道、カイルは真剣な表情でレオンの背中を見つめました。
「え? ああ、最近ちょっとハードな依頼が続いてたからな。まあ、寝れば治るだろ」
「ダメだよ。放っておくと、その振動が腰まで伝わって、君の歩行リズム(テンポ)が完全に崩れちゃう。……ちょっとじっとしてて。職人として、見過ごせないな」
カイルは魔王の心臓(漆黒の真核)で作った例のハンマーを取り出しました。
「えっ、ちょ、カイル!? それ、魔物を粉砕するハンマー……ひぎゃあああッ!?」
カイルがレオンの背中の特定のツボ――骨の「節」の部分に、ハンマーの柄をコンッと軽く当てました。
キィィィィィィィン……
その瞬間、レオンの体から、人間が発するはずのない「澄み渡った和音」が響き渡りました。
「……あ、あれ? 痛くない。っていうか……何だこれ、全身の細胞が……整列していく……!?」
レオンの体から溢れ出す、眩いばかりの光。
骨格は黄金の比率へと組み替えられ、筋肉は最高密度の弦のように張り詰め、不純物が一瞬で蒸発していきます。
光が収まった時、そこにいたのは、身長が数センチ伸び、神話の彫刻のように完璧な肉体を持った、**「光の巨人」**のごとき威容を纏ったレオンでした。
「よし、これで骨組みの歪み(ノイズ)は取れたよ。レオン、少し動いてみて」
「……おう。ちょっくら、その辺の岩でも――」
レオンが軽く拳を突き出した瞬間。
ドォォォォォォン!!
衝撃波だけで前方の丘が一つ消滅しました。
「……やりすぎよカイルさん!! レオンさんが人間を卒業しちゃったじゃない!!」
クラリスが絶叫しました。




