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無限♾ループに囚われ  作者: Alicecloud


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1章 死の記憶と、最悪の再会

「カイル、お前はここで死ね。それが『光の勇者一行』にとって最大の貢献だ」

冷徹な声が響く。声の主は、かつて親友だと思っていた勇者レオンだった。

視界の端では、聖女のクラリスが怯えたような、しかしどこか見下すような目でこちらを見ている。

ここは魔王城の最深部一歩手前。

周囲を魔王軍の精鋭、黒騎士ブラックナイトたちに包囲されていた。

脱出手段は、レオンが持つ一度きりの転移結晶のみ。

「待ってくれ、レオン! 俺がいたからこそ、ここまで魔物の弱点を分析して……!」

「黙れよ、無能な『記録係』。お前の仕事はもう終わりだ。これ以上、経験値を吸われるのは御免なんだよ」

レオンの蹴りが俺の腹にめり込む。

俺の体は、黒騎士たちの群れの中へと放り出された。

「ああ、そうだ。記録係らしく、自分が食われる瞬間までしっかり記録しておけよ?」

背後で転移の光が弾ける。

奴らは逃げた。俺を肉壁にして。

「ガ、アッ……!」

鋭い剣が胸を貫く。視界が赤く染まり、内臓が焼けるような熱さに包まれる。

意識が遠のく中、俺は腰に下げていたボロボロの古書――「無名の年代記」を強く握りしめた。

こいつは、親に捨てられた俺の唯一の私物だった。

《条件をクリアしました。固有スキル【無限回帰インフィニティ・ループ】を起動します》

機械的な声が脳内に響き、俺の視界は暗転した。

……気がつくと、俺は立っていた。

爽やかな風が吹き、木々がざわめく音が聞こえる。

「――おいカイル、聞いてるのか? お前は今日限りでクビだ」

耳に馴染んだ、ヘドが出るほど傲慢な声。

目の前には、魔王城に行く前の、まだ「王都のギルド裏」にいた頃のレオンたちがいた。

(……生きている? いや、戻ったのか?)

胸を貫かれた感触は、まだ生々しく残っている。

だが、傷一つない。

「……ああ、聞いてるよ。追放だろ?」

「ふん、物分かりがいいな。無能のくせにプライドだけは高いと思ってたが」

レオンが鼻で笑い、銀貨が数枚入った袋を地面に投げ捨てる。

前回の人生では、俺はここで泣いて縋り、結局「便利屋」としてタダ同然で付いていくことを選んでしまった。その結果があの魔王城だ。

(もし、これが夢じゃないなら)

俺はあえて、前とは違う行動をとってみることにした。

レオンに背を向け、そのまま王都の門へ歩き出す。

「おい、無視すんのかよ!」

背後でレオンが怒鳴っているが、どうでもいい。

その直後だった。

王都の広場に、突如として巨大な転移陣が出現した。

前回の人生では、数日後に起こるはずだった「魔物の大氾濫スタンピード」だ。なぜか時期が早まっている。

「な、なんだ!? 魔物が……街の中に!」

逃げ惑う人々。

俺の目の前に、あの時俺の命を奪った「黒騎士」が現れる。

今の俺には、抗う術はない。

(……試してみるか)

俺は逃げなかった。

黒騎士の剣を、そのまま喉元に受け入れる。

「ガ……ッ!!」

二度目の死。

しかし、恐怖はなかった。

《リスポーン地点を更新しました。第2回試行を開始します》

再び、風の音。

「――おいカイル、聞いてるのか? お前は今日限りでクビだ」

確信した。

俺は、死ぬたびにこの「追放の瞬間」に戻される。

そしてこの世界は、俺が死ぬたびに少しずつ絶望的な方向へ「変質」している。

「……面白い」

俺は地面の銀貨を拾わず、レオンの目を見据えて笑った。

「レオン。お前、10秒後に右から来る馬車に泥を跳ねられるぞ」

「はあ? 何をバカな――」

グチャッ。

レオンの高級なマントが、通りかかった馬車の泥で見事に汚れる。

「……予兆ログは全部、俺の頭の中に記録されてるんだ」

1億回死ぬか、1億回殺すか。

俺の、終わらない復讐と修行の時間が始まった。

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