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 それは父、国王との謁見の際のこと。


「王太子の仕事で忙しいお前を急に呼んでしまい、悪かった」


 父である国王は、王の椅子に座っていながらも、ひどく疲弊した様子だった。

 体をいくら飾りてても、やはりその疲れ切った顔は隠すことができないのだろう。その原因は、私にも容易に想像できた。


 まだ年もそこまで行っていないのに、もう髪に白が混ざり始めた父を前に、私は深く平頭した。


「とんでもございません。久しぶりに父上とお会いできたことを、誠に嬉しく思っております」


 「うむ」とかすれた声で返事をした父は、もともと青白かった顔をさらに白くしながら、少々身を乗り出してたずねた。


「それで、例の件について、報告を」


 長い挨拶も抜かして本題を突きつけたのは、度重なる疲労からか、それとも元々の気質故か。


 後者はありえないだろうな。と思った。父は昔から、私にも弟にも貴族とはなんたるかを重ねて説く人だった。それはもう、母が子供に本を読み聞かせるように、優しく、丁寧な口調で。

 しかし、それが父なりの愛情表現だということは、物心ついたときに察した。真面目で曲がったことが大嫌いな性格も相まって、子供の将来は親次第という言葉が心に染み付いていたのだろう。彼は、人一倍責任感が強い人でもあった。


 そんな王を私は尊敬していたが、今の父はやはり違うものだった。自分の大切な人さえも奪っていく奴に、怒りを募らせるばかりだ。


 疲労とは、まで人を変えるものなのか。だったら、毎日仕事に忙殺されている私は、いったい誰なんだろうと自嘲気味に心で笑う。


 焦れたように足を小刻みに揺らす父を尻目に、私は口を重く開いた。


「は。それが、やはりサイラス公爵の力は絶大なようで……」


 その一言ですべてを察したのか、父は軽く手を一振した。


「もうよい。全てわかった。呼び出して済まなかったな。引き続き頼む」


 私は短く返事をすると、軽く礼をして謁見の間から出た。



 いつもは「きちっと礼をせんかい!」と怒る声も、今日は聞こえなかった。

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