表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/84

子犬を探していたら宰相の娘に嫌味を言われてしまいました

 私はころちゃんの夢を見て飛び起きた。


 ころちゃんが檻に入れられて運ばれていったのだ。

 私はいくら手を伸ばしても届かなかった。

 本当に最悪だった。

 手の届かなかったころちゃんのことを想うと、涙が後から後から流れてきたのだ。


「姫様、どうされたのですか?」

 朝の準備をしに来たサーヤは驚き慌てていた。


「サーヤ! ころちゃんが檻に入れられて遠くに連れていかれたの!」

 私はそう言うと泣き出した。


「まあまあ、姫様、大丈夫ですよ。ころちゃんは必ず帰って参りますから」

 サーヤはそう言って私を抱き締めてなぐさめてくれたが、その必ず帰ってくるという根拠は何処にあるんだろう?


 夢の中でころちゃんは檻に囚われていたのだ。そんなのあんな子犬が逃げ出せるわけはないのに!

 私はサーヤの言葉には納得できなかったが、サーヤに抱いてもらえると、母に抱かれたことを想い出して、何故か、涙が止まったから不思議だ。


 母の抱っこは無敵だった。小さい頃に泣き虫だった私は良く母に抱っこして慰めてもらっていたのだ。

 まあ、母がいない時はサーヤが抱いて慰めてくれたし、その延長みたいな感じなのだ。


 でも、早く、ころちゃんを探さいないと!

 食事を取り終わると、その日も私は王宮の中をころちゃんを探そうとした。

 今日も騎士さん達とサーヤ、庭師の爺やらが率先して手伝ってくれた。

 侍女たちも手分けしてころちゃんを見ていないか王宮内をくまなく聞いてくれるそうだ。

 私達は早速手分けして部屋の外て探し出したのだ。

 でも、半日かけて探してもころちゃんは何処にも居なかった。


「ああら、何処の庭師かと思ったら、カーラ王女殿下ではございませんか? このような所で何をしていらっしゃるのですか?」

 嫌味な声に振り返ると、そこには一番会いたくないアレイダがいたのだ。


「これはアレイダ嬢、ごきげんよう」

 私は慌てて、立ち上がって挨拶した。

 アレイダも挨拶を返してくれた。


「ごきげんよう。カーラ様。何か探し物ですの? 皆様必死にゴミじゃなくて、物を動かして探していらっしゃいますけれど……何か大切な物を無くされたんですの?」

 そこで顔がにこりと笑ってくれた。私の一番嫌いな笑みだ。


「もっとも殿下にしたら宝物でも私にしたら大したものでは無い気もしますが。安い物でしたらお譲りしましてよ」

 アレイダはそういつて笑ってくれたのだ。


「な、なんだと!」

「殿下に対する狼藉、許すマジ」

 そのアレイダの言葉に騎士達がいきり立つが、私は手で制した。


「いえいえ、アレイダ嬢が仰るように、大したものではありませんわ」

 私は精一杯、見栄を張って答えたのだ。


「ひょっとして、子犬がいなくなったのですか?」

 コリーが聞いてきた。

「えっ、なぜあなたがそれを?」

 私は取り繕うのを止めて思わず認めてしまった。

 そして、まじまじとコリーを見た。


「いや、あの、皆さんが子犬が隠れそうな物陰を「ころちゃん! 何処にいるの?」と呼んで探していらっしゃいましたから」

 私突っ込まれて、しどろもどろでコリーが答えてくれた。

 でもその目が泳いでいるのを私は見逃さなかった。


「コリーさん、何かご存じですの?」

 私は慌てて、コリーに近付いた。


「いえ、私は何も」

 コリーは否定したが、目の逸らし方が絶対に怪しい。


「コリーさん、何か知っているなら教えて」

 私は掴みかからんばかりに、コリーに近付いた。


「いえ、私は知っていることは」

「嘘おっしゃらないで! その顔は何かを絶対に知っているはずよ」

 私が決めつけて言うと


「ちょっと王女殿下、我が家の侍女に何を言ってくれるんですか? 何も知らないって言っているじゃないですか?」

 横からアレイダが文句を言ってきた。


「でも、コリーさんの動きが挙動不審よ」

「いえ、私は殿下の犬によく似た子犬を市場近くで見ただけで」

 必死にコリーは言い訳した。


「えっ、市場ってどこの市場?」

 私が畳み掛けると

「それは、ええええっと、中央市場です」

 少し逡巡してコリーが話してくれた。


「中央市場ってそれは孤児院の近くよね?」

「そ、そうですわ」

「殿下、いい加減離して下さい」

 アレイダが近づいてきて、強引にコリーを引き離してくれた。


「本当にいくら王女殿下でも、強引すぎますわ」

「本当にそうですわ」

「そんなに大切だったら首輪に繋いでおけばよろしかったのに」

「放し飼いにされるからよ」

「だから逃げられるのですわ」

 女たちは好き勝手なことを言ってくれた。

 確かにそうだ。首輪をつければよかったのだ。


「でも、あんな小さい子犬に首輪をつけるなんて、野蛮なことは出来ませんわ」

 私は思わず大きな呟いていた。


「「えっ」」

 アレイダと取り巻きたちは一瞬私の言葉に固まってしまった。


「や、野蛮ですって、カーラ様、あなた、私が野蛮だっておっしゃるの」

 アレイダは私の言葉にきっとして睨んできた。


「そうは申しておりませんけれど、あのような小さい子犬に首輪をつけるなんてとても可哀想だなと」

 私は曖昧に頷くと

「まあ、可哀想なんて言っているから逃げられるのではありませんか」

 その言葉は私にぐさりと突き刺さった。

 そうかも知れない。

 首輪をして繋いでいたら逃げ出すことは出来なかったはずだ。


「まあ、今後は考えられたほうがよろしくてよ。

 まあ、皆様、時間がありませんわ」

 そう言うと勝ち誇ったようにアレイダ達は去っていったのだ。


「姫様大丈夫ですか?」

 後ろからサーヤが声をかけてきた。


「あいも変わらず野蛮な女たちでございますね」

 サーヤが私が思わずもらした言葉を使っていってくれたんだけど、それはまずいだろう。また、父に知られたら注意されるかもしれない。


「サーヤ、野蛮は言いすぎよ。私の言葉が過ぎたわ」

 私は注意した。


「でも、ころちゃんは市場まで逃げたと思う?」

 私がサーヤに聞くと、


「それはないと思いますよ。それに姫様が王宮を出るのは無理ですからね」

 サーヤの言葉に後ろの騎士さんたちも頷いてくれるんだけど、私はすぐにでも王宮の外にころちゃんを探しに行きたかった。


ここまで読んで頂いてありがとうございました


新作始めました『悪役令嬢に転生させられた地味令嬢ですが、ヒロインの方が強くて虐められているんですけど……』https://ncode.syosetu.com/n7240kb/


こちらも面白いので是非ともご覧下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

このお話の次の話

『悪役令嬢に転生させられた地味令嬢ですが、ヒロインの方が強くて虐められているんですけど……』https://ncode.syosetu.com/n7240kb/


私の今一番熱い人気の作品はこちら

『【電子書籍化】王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』https://ncode.syosetu.com/n9991iq/


表紙画像
1巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど 卒業パーティーは恐竜皇子と恐れられるお義兄様と一緒に』
上の表紙絵はおだやか先生が可愛いエリーゼを守る格好良いお義兄様を描いて頂きました。
このなろうで書いたのに【お義兄様との洞窟探検】2万字の描き下ろしが追加されています。
小さいヒロインのエリーゼはダンジョンに潜りたいとお義兄様に無理やり連れて行ってもらって、巻き起こす大騒動。
後で知ったお義父様(皇帝)が怒るもエリーゼの前に撃沈、更に行ったダンジョンにはなんとあの…………、とても面白いお話になっています。

■【3千字のSS商人の娘の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD3SHSJV/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/86f757d2dd7d3674900eac6783288ad5/

表紙画像

表紙絵はおだやか先生が美しい、お義兄様とエリーゼのキスシーンを描いて頂きました。
2巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… 帝国に帰還しての宮廷夜会、お義兄様にキスされてしまいました』
こちらの新規書き下ろしはセッシーとの出会いです。皇帝一家でセシール湖にお出かけしたエリーゼはお義兄様たちと湖の地下宮殿に冒険に出かけます。
反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSSドレス工房の主の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/2/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DGQ7J6VH/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/178537d615973d18a4cb8adc53c66c16/

3巻表紙画像

表紙絵はおだやか先生がエリーゼをお義兄様が抱きあげる美しいシーンを描いて頂きました。
3巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。』
こちらの新規書き下ろしは学園に出る幽霊竜退治です。学園時代のお義兄様の幽霊騒動にエリーゼが一緒に冒険します
とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSS連れ子様の護衛騎士・シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B0DK55BWGS/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/e9901759f61337b88109b29ff7a5ffb0/

ぜひとも手にとって見ていただければ嬉しいです。

アルファポリスのレジーナブックスにて

【書籍化】

しました!
2023年6月28日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。


■アマゾンへのリンク

■楽天ブックスへのリンク

■hontoへのリンク


手に取って読んで頂けたら嬉しいです。

なろうの掲載ページ『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

第一部は書籍化の規約上3分の1残して後は他者視点で繋いでいます
「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」
頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、
でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。


私の

3番人気の作品はこちら

『モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~』https://ncode.syosetu.com/n8311hq/

私の

4番人気で100万文字の大作の作品はこちら

『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』https://ncode.syosetu.com/n8911gf/



このお話の前の話

『男爵令嬢に転生したら実は悪役令嬢でした! 伯爵家の養女になったヒロインよりも悲惨な目にあっているのに断罪なんてお断りです』https://ncode.syosetu.com/n7673jn/

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ