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15 冒険者ギルドへの登録

「……はい、『鑑定』」


 私たちのやり取りに多少呆れながらも、何も言うことなく水晶を掲げるお姉さん。

 結果は――。


「うん、問題ないかな。この子は全然大丈夫だね」

「あ、ちょ……」


 カレンが焦ったかのようにお姉さんの言葉を遮る。

 言い切っていたからあまり意味はないけど。

 やっぱりカレンは年上か。

 それに十二歳以上。

 ……ん? 『全然』、大丈夫?


「その水晶って、どの程度正確にわかるんですか?」

「姉さんっ!?」

「ん? んー、ハッキリと年齢がわかるわけじゃないんだけどね。十二歳を境目に色が変わるようになっているんだけど、十二歳ピッタリの人は正直わかりづらいんだ。でも、この子はわかりやすかったね」


 そう言ってカレンへと視線を向けるお姉さん。

 そして、その視線を逸らすカレン。

 普段視線を合わせる私の視線でさえ、逸らしている。


「……カレン?」


 じとー、っとした視線を向ける。


「な、なんでしょうか……」

「こっちを見なさいよ」


 ずいっ、とカレンの翠眼(すいがん)を覗き込むように身体を寄せる。


「あ、あの……姉さん、近いです」

「私より年上なのに『姉さん』って、おかしいでしょ。いったい、いくつなのよ」

「さ、さぁ……。自分の年齢なんて……。わ、忘れてしまいました」


 しどろもどろに視線を彷徨(さまよ)わせながら答えるカレン。

 そのまま視線で珍しく動揺しているカレンを問い詰める。


「あー、コホン。冒険者の方には色々とワケありの方がいるからねー」


 (とが)めるつもりはないのだろうが、あまりにも見てられなかったのか、カレンに助け船を出す受付のお姉さん。

 その言葉で私が離れたからか、あからさまに安堵の息を吐くカレン。


「……今度、ゆっくりとお話ししようか」

「うっ……」

「えーっと、それじゃ、これに記入してもらいたいんだけど、文字は書けるかな?」


 言葉に詰まったカレンを横目に、お姉さんへと向き直る。

 これは……登録用紙か。

 懐かしいな。

 名前、年齢、種族、性別、などなど書く欄が並んでいる冒険者ギルドへの登録用紙。

 私も以前はこの用紙で登録したんだった。


「私は大丈夫ですが……カレンもわかる?」


 私の肩越しに覗き込んできたカレンは、小さくうなずくと私と同じように横へ並んで羽ペンを手に取った。

 やはり、言葉がわかるから文字もわかるのかな?

 どういう風に見えているかは謎だけど……。

 あとで聞いてみるか。

 さて、私も書かないと。

 隣で羽ペンを走らせているカレンを横目に、登録用紙へと記入していく。

 名前――コトミ。

 年齢……十一歳。くっ……。

 種族は人間。当然、女性。

 ん……?


「得意な、もの……?」


 あれ? 確か以前は職種を書く欄だったような気がしたんだけど。


「あぁ、それは剣が得意とか魔法が得意とか、そういうのを書いたらいいよ」


 羽ペンの止まった私の手元を覗き込むように教えてくれるお姉さん。


「昔は職種とか書いていたんだけどね。Gランクの子とか、子供には職種とかないだろうし、変わったんだ」


 なるほど。

 それなら私は、『魔法』でいいや。

 本当は『剣』も書くのだろうけど変に目立つのは嫌だし。

 別に自己申告だから何を名乗っても構わないだろう。

 そうやって手早く必要事項を記入し、カレンの手元を覗く。

 普段であれば「プライバシーの侵害ですっ」とか言って隠すんだけど、年齢がバレた? からか、素直に見せてくれるカレン。

 相変わらず秘密の多い少女ではある。

 その手元には不慣れな字で……。

 名前……カレン。

 年齢、十二歳……。嘘だな。

 得意なものは……。


「どうしましょうか」


 うーん、魔眼使いの場合、だいたいは斥候役(せっこうやく)としての得意な物――例えば短剣やナイフなどが得意とする傾向がある。

 なぜなら、遠くを視る遠視(えんし)や、物を透かして視る透視(とうし)など、非戦闘向きの能力(ちから)を持つ魔眼が大多数だからだ。

 そのため、魔眼だけに頼らず、身体を鍛えることが多いのだが……。

 カレンは少々規格外であるため、あまりそのことを(おおやけ)にしない方がいいだろう。


「うーん、カレンも『魔法』としておこうか」


 何かあっても『魔法』と言えば説明できるだろうしな。


「これでお願いします」


 私とカレン、二人分の登録用紙を受付のお姉さんへと渡す。


「はーい、それじゃ、出来上がるまでしばらく待っててね」


 そう言ってお姉さんは奥へと引っ込んでいった。

 手持ち無沙汰になった私たちは、そのまま受付の反対側に掲げてある依頼ボードへ。

 貼り付けられているメモのような物は依頼事項が記載されている紙である。

 まばらになっているボードには魔物の討伐や薬草採取、護衛依頼など冒険者向けの依頼はもちろんのこと、荷物の配達や街の掃除、家庭教師や家政婦のようなもの、これは冒険者がやることか? と、思わないでもない、よくわからない依頼も張り出されていた。

 この時間に残っている依頼はだいたいが曰く付きで、あまりいい依頼ではないことが多い。

 昔の私はそんな依頼の中から実入りのいい依頼を探してはその日の生活費を稼いでいた。

 懐かしい気持ちになりながら、まだかかりそうであったため、近くにあった備え付けの椅子に座る。

 ギルドの雰囲気は何年経っても変わらない。

 どこか懐かしさを感じるそれは、少し昔を思い出しそうになった。


「姉さん、『魔法』というのはどうしてですか?」

「あぁ、それね。あとで説明してあげるよ」


 こんなとこじゃ誰が聞いているかわからないからね。

 居酒屋で食事している冒険者たちも、意識はこっちを向いているだろうから。

 そうしてそのまましばらく待つと――。


「コトミさーん、カレンさーん、出来たよー」

「…………」


 目の前に居るのに大声で名前を呼ぶ受付のお姉さん。

 こめかみを押さえながら、初めて冒険者登録したときのことを思い出す。

 ギルドで登録するときは名前を広める習慣でもあるのか?

 盛大にため息を吐きながらも、これ以上名前を連呼されても叶わないため、急いで席を立つ。


「はーい、こちらがギルドカードになります」


 そう言って渡されたのは金属製のプレート。

 そこには登録番号と名前、ギルドランクが刻印されている。

 カレンはF、私はG……。くっ。


「ギルド初心者の心構えを説明するんだけど、いるかな?」


 んー、私は必要ないけど……カレンもいるしな。

 一応聞いておくか。

 そうやってギルドのことについて説明してくれる受付のお姉さん。

 冒険者ギルドの役割――それは依頼人と冒険者の仲介を受け持つ組織であり、その仲介手数料や冒険者たちが収めた魔物の素材、時には訪れる街や国からの依頼料によって運営が成り立っている。

 そんなギルドはこの国――王国や隣国の帝国、獣人の国など、どんな国にも存在している。

 さらに、どの国にも属さず、国家や貴族たちの権力にも屈せず、独自のルールで秩序を守り、自由を象徴とした独立している組織である。

 所属している冒険者たちの最低限の身分を保証し、ある程度のランクがあれば国を(また)いでの移動も可能となる。

 当然、ギルドにも独自の規則があり、それに背くと最悪冒険者資格の剥奪となる場合もある。


 ギルドランクにはFからSまでの七段階が設定されており、冒険者自身の力量やギルドの貢献度などでランク分けされている。

 ギルドの依頼にも受注最低ランクというものが設定されており、低いランクのうちは危険度の低い簡単な依頼しか受けられないようになっている。

 これは、無謀な若者や新人たちを早死にさせない措置となっており、割のいい依頼――危険度は高いが報酬も高く設定されている依頼――は受けられないようになっている。

 ほとんどは知っている内容であったけど、十年前に新しく出来たルールもあるらしい。

 その一つが、今私の手元にあるGランクのギルドカード。

 見習い扱いとなっているランクである。

 冒険者が大幅に減ったため、年齢制限を無くしたい。

 だけど、無駄死にされても困る。

 そういう想いから制約のついたギルドランクが誕生することになった。

 その他、相談所のようなこともやっており、素材の入手方法や魔物の出現情報などを教えてもらうこともできる。


「……と、いうことで、あなたたちも今日から我々冒険者ギルドの仲間だよ。何か困ったことや相談事があれば遠慮なく言ってね」


 そう言って締めくくるお姉さん。

 ま、何はともあれ、無事冒険者ギルドに登録できたんだから……いいか。

 自分自身へ言い聞かせるように納得させ、首にかけたギルドカードを服の内側へしまい込む。

 あまりギルドランクを見せるものじゃないしな。

 上位ランクの冒険者の中には自慢気に見せていることもあるけど、私は別に目立ちたいわけでもないし。

 さて、これで用事は終わりかな……あ、そういえば――。


「早速なんですが、目覚草(めざめそう)の生息域ってどこだかわかります? 採取に行きたいんですが」

「んー、目覚草か。また珍しい物を探しているね。ちょっと待ってね」


 考える素振りを見せながら、受付の中にある書棚を探し出すお姉さん。

 そのまま数冊の冊子を持ってきてとあるページを開く。


「あった、あった。えーっと……あまり新しい記録じゃないけど、以前はこの街から北に行った、フェネオンという村の近くに群生があったみたいだね」


 フェネオン?

 さすがに聞いたことがないなぁ。


「結構、距離がありますか?」

「うーん、大人の足でも片道三日はかかる、かな? 馬車でもあれば早いだろうけど、定期便のない場所となるしね」


 それなりに距離があるな。

 まぁ、三日ぐらいならなんとかなる距離でもあるが……。

 往復六日、リンちゃんをそのまま寝かせておくことになる。

 そんな状態で問題ないのか心配にはなるが……。


「わかりました。もう少し考えてみます。ありがとうございました」


 一通りのやることはやったし、もうギルドに用はないかな?

 あとは目覚草をどうするかだけど、これはアウルとも相談だな。

 そう思い、ギルドから外に出ようとすると――。

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