レルの涙
驚いたような顔をするリコラルとコーナーにマリアが逆に驚いた。
(何で2人とも驚いたような顔をしているのかしら?)
「君には婚約者がいないと聞いていたけど、好きな者はいたのか……」
リコラルとコーナーが深刻そうな顔をしている。
「あ、あの~、私に好きな人がいたらダメなんですか? 何故か、王妃様もイントの男性と結ばれることを期待されているようですが、私はそもそもここに嫁ぐために来たのではないのですし」
「……ああ、そうだね。婚約者がいないと聞いて、皆、勝手に期待してしまっていたから………。まあ、今後の参考までにこの国の色々な魅力を知ってもらえれば光栄だよ」
何だか苦笑いするリコラルが気になったが、今のマリアにはイントに嫁ぐ予定も無いので気にしないことにした。変に期待させて騒がせる方が迷惑だろうと、考える。
(それよりも……今はレルのことよ!)
マリアはレルの腕をとって組むと、レルに小声で囁いた。
「レルったら戦った相手に見初められるなんてやるわね~このこの!」
「お嬢様、からかわないで下さい。コーナー様のお気持ちは嬉しいですが、私にはすぐに受け入れられる余裕なんてないんですよ」
レルは嬉しいというよりも複雑そうな表情を浮かべていた。
(からかいすぎたかしら?)
「まあそうよね。突然言われてもね。あなたの気持ちがハッキリするまでイントでゆっくりするのも悪くないわ」
「……すみません。一刻も早くデルタに帰るべきなのにゴタゴタしてしまって。ああも真剣に言って下さる方がいると、きちんとお返事すべきだとは思いまして。お嬢様の配慮がとてもありがたいです」
「気にしないでいいのよ。ほら、コーナー様が心配そうな顔をしてこちらを見ているじゃない」
コーナーがレルを見つめる瞳は恋する人そのもので……マリアは内心、興奮してしまう。
(もう、何でレルはこの状況に少しも嬉しそうじゃないのかしら?コーナー様もガッチリ系のイケメンよ?)
「ひとまず、舞踏会まで準備をしながらリラックスして過ごしてほしい」
リコラルの言葉にマリア達はうなずいた。どちらにせよ、船が出せるまでここにいるしかないし、父も急ぎ戻らなくていいと言っているのだ。
「それはそうと…先ほど、殿下が言おうとしていたことは何だったのですか?覚悟って…」
コーナーがマリアの言葉にピクリと反応する。
「また、改めて話すよ。レル嬢の気持ちも見えてきたらね」
リコラルは気になる言い方をしてその話は打ち切られた。
………中庭でのやりとりから数日が経ち、王妃肝いりの舞踏会がいよいよ明日に迫っていた。今は夕食が済み、寝るまでのくつろぎ時間を楽しんでいる。
(この数日間ずっとダンスの練習をしていた成果を見せる時がとうとうやって来たのね)
ダンスの練習はちびっこ達や、例の“男でも女でもない人”達が指導をしてくれた。ちびっこ達とは、ほぼ遊んでいる感じだったが、彼らは役に立っていると思って喜んでいた。そんな彼らを見ると微笑ましい気分になった。
ちなみに、マリアはデルタでもまだ本格的に舞踏会に出る機会が無かったのもあり緊張している。舞踏会に出席した経験がないレルはもっと緊張していた。
「レルは運動神経がいいからすぐにダンスをマスターしたじゃない?私なんて何回もステップを間違えちゃったわ。ちびっこ達の足を踏まなくて良かったわ」
ダンスはちびっこの中でも一番年長のグラムはダンスが上手だった。一丁前に紳士っぽく振る舞うものだから、笑ってしまったら彼はプリプリ怒っていた。グラムは宮廷で仕えるためにダンスを小さな頃から叩き込まれていたらしい。
「いえいえ、お嬢様の華麗さには劣りますから」
「もう、そんなことを言って。レルはキレイよ。コーナー様から見染められるくらいなんだから」
「あれはそういうのではなくて私の忠義心にお気持ちを動かされたんだと……」
「それだけじゃないと思うわよ?」
マリア達の部屋には大輪の白い花が飾られている。コーナーがレルのためにプレゼントした花だった。
「………」
レルが無言になる。何をそんなにためらうのだろうと、マリアは思った。
(レルのことだから、私をデルタに返すことが第一だと考えているのでしょうね。気にしなくていいのに)
レルはとてもよく仕えてくれる姉のような存在だったから、正直、レルがいなくなると寂しい。だけど、彼女が幸せになることを望んでいた。彼女は既に20歳なのだ。結婚していてもおかしくはない年齢だった。
「レル、私のことを心配して側にいてくれようとするのはありがたいけど、私は大切なレルの幸せを願っているのよ?」
「……こちらこそありがたいお言葉です。私はお嬢様の側にいることが本当に幸せなんです。とても感謝してもしきれないくらいに」
「レルったら、大げさ」
「大げさなどではありません。本当なんです」
ふとレルの顔を見たら、レルは涙を流している。
「ど、どうしたの!?何で泣いているの?」
レルの涙にマリアは焦る。
「私には……私には人生を簡単に決められない理由があるんです」
「この前もそう言っていたわね。理由って何?私のことは気にしなくていいのよ」
「そうじゃないんです。……お嬢様にお聞かせできるような話じゃありません」
「…………私は知りたいわ。だって、レルが泣くほどの理由なんだもの。 よく考えたら私、あなたが屋敷に来てからのことしか知らないし。あなたのことをもっと知りたいの」
マリアの言葉にレルは考えるような表情をしたのだった。
レルの涙のわけは.......。
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