ヒミツの話
「神聖力って知っているよね?」
「もちろんです。神聖力は主に聖女様が持ってらっしゃる力ですよね?」
「そうだよ。イントの中でも聖女は神聖力を多く持つ」
「イントの中でも?イントには聖女様がいらっしゃるんですか?」
「まあ、何人かいるね。まだ、幼いけど」
「何人かいるって…!そんなことがあるんですか?」
各国は聖女の存在を求めていた。聖女には聖なる力があって大きな災害を予見したり、邪気を払ったりという特殊能力があるからだ。デルタには現在、聖女はいない。だから、デルタでは聖女の登場を皆が期待している。それなのに、このイントには聖女が何人もいるというのか。
聞くところによると、イントで生まれた者ならば男性・女性に関わらず神聖力を持っているらしい。だが、女性である場合は多くの神聖力を持つことから、聖女として活躍することになるという。
「君はこの国のヒミツを知りたいかい? 知るにはそれなりの覚悟がいるけど」
「覚悟?……そんなに重大な話なんですか?」
「ああ、そうだ。君達がイントに来て数日経ったし、今なら君達に知ってもらいたい気持ちがある」
「今なら?」
「うん、君達はどうやら女神様のお導きでここに来たようだからもう大丈夫だと思って」
「大丈夫?...何だかよく分かりませんが、私達はただ単に手違いで連れて来られただけですし、あまり期待されるような者ではありませんよ?キルトを私達が売っていたから関心を持たれているのでしょうが」
「まあ、キルトは大いに関係あるね。キルトはね、この国でとても神聖なものなんだ。だから、ここに関わる人にとってキルトつくりをしている君達は特別だと考えてしまう。キルトは、女神様に捧げる神聖物だから」
「はぁ…」
神聖物、なんて初めて聞いた。返事にならない言葉しか出てこない。
「分からない、って顔しているね。イントのことをもっと知りたくないかい?」
「それは......イントは女性が少なくて子どもをメイドに使うとか、色々と気になる点がありますが、覚悟したら話せると言われても.......。まさか、話を聞く代償が命だとでも言わないですよね?」
「まさか!そんなわけないよ。怖がらせちゃったかな.....あ!レル嬢とコーナーがあそこにいるよ」
リコラルの視線を辿れば、レルとコーナーが花畑の中にいた。何だかレルが困っている様子だ。
「なかなかいい答えがもらえていないみたいだな」
「いい答え?」
レルは、護衛であり将軍だというコーナーにもう一度会いたいと言われて連れられて行ったが、尋問でもされているのだろか。
「レル嬢が困っているみたいだから、助けに行こうか」
リコラルに連れられレル達の元に近づいて行くと、気付いたコーナーがリコラルに礼をする。
「どうなんだ?」
「そ、それが、そんな簡単には受け入れられないと言われまして……」
(受け入れる?)
マリアの中にハテナが浮かぶ。
「レル嬢、コーナーは好みじゃないかな?」
「そ、そういうわけではありませんが、私はお嬢様に仕える身でしていきなり言われましても無理です」
レルがうろたえている。
「レル、何があったの?」
マリアが声を掛けるとレルは顔を赤くしていた。
「それがその………コーナー様が私に求婚を」
「求婚? プロポーズのことよね?」
「そうです」
レルは赤い顔をしている。今までレルのこんな様子は見たことがない。
「何故、突然、プロポーズを??」
マリアに問われて大きな熊のような彼が恥ずかしそうに身体を縮めながら口を開いた。なかなか愛嬌のある姿だった。
「港でレル嬢が果敢に私に挑んできた姿がとても美しかったので……。主君を必死に守ろうとする姿に感動しました。あの日からレル嬢の姿が頭から離れません。ぜひ、私の妻になって頂きたいと思ったのです」
コーナーは顔を真っ赤にしていた。
(顔を真っ赤にしちゃって。コーナー様は純粋なのね。それにしても、一目惚れってことよね。そんな簡単に人を好きになるものなの??)
マリアはケイルを好きだが、それは長年かけて積み上げたもので、人を好きになるには時間がいるものだと思っていた。
「レルは、レルの気持ちはどうなの?」
「先ほども言いましたが、私はお嬢様の侍女ですから!」
「それを抜きにして考えたらどうなの?」
マリアの質問に、コーナーがゴクリとツバを飲みこむのが分かった。
「……イヤということはありませんが、私は……人を信じるには時間がかかりますので」
レルの言葉を聞いたコーナーは慌てて言う。
「時間!私は早計でした!確かに私を知って頂かなくては判断もできないでしょう。私を知って頂くチャンスを頂けますでしょうか?」
巨体の男は必死で言った。
「レル嬢、コーナーにチャンスを与えてやってくれないかな?」
「はぁ……」
レルが戸惑う。
「………そういうことならば、レルの気持ちがハッキリとするまでしばらくイントに滞在しましょうか。ね、レル?」
マリアは困るレルに助け船を出した。単純にレルがどうするのかも知りたかったのだが。
「本当かい?」
マリアの言葉に今度はリコラルが嬉しそうな顔をする。
「ええ、大丈夫でしょうか?」
「もちろんだ。皆が喜ぶ」
「皆が.....喜ぶ?」
何か期待させてしまったようだが、マリアは単純にレルの浮いた話を応援したいだけだ。
(レルは私の大事な侍女だもの。私がしっかりと嫁ぐ人を確認しなくちゃ)
「マリア嬢も素敵な恋ができるといいね」
「え?私ですか? 私は好きな人がいるので」
マリアは正直に答えた。
「えっ!?」
すると、リコラルとコーナーが同時に驚きの声を上げたのだった。
いきなりのプロポーズ......。
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