中庭での散歩
翌日、目覚めて身支度をしていると、ちびっこメイド達が扉をノックして部屋に入って来た。
「おはようございます!あっ!もう着替えてらっしゃる!」
1番年長のグラムが慌てていた。
「いいのよ。もともとレルは私の侍女なんだし、あなた達よりもずっと私のお世話に慣れているわ」
「そんな~。ボク達の仕事が無くなると困ります」
「なぜ困るの?」
「せっかく厳しいテストに合格してお城で奉公できたのに、家に戻されちゃいます!」
「つまり、君達は選ばれてきた優秀なメイドだということ?」
レルが問うと、3人はうなずいた。
「確かに選ばれただけあって、あなた達は可愛いわ!ね、レル?」
「はい、可愛いのは間違いありません!……ですが、厳しいテストと聞いて私がノーラ男爵家に仕えるために必死だった頃を思い出しましたよ」
「お父様が厳しいテストでもしたの?」
「まあ、はい。大事なお嬢様を守るためですから」
マリアは平民に近い暮らしをしてはいるが、曲がりなりにも貴族だから本当の貧しさを知らない。レルが苦労してノーラ男爵家に入り、マリアの侍女になったことはあまり知らなかった。
「グラム達、朝ご飯は食べたの?」
「いえ、マリア様達のお世話が終わったら食べます!」
「なら、一緒に食べましょうよ」
「え、ダメですよ!叱られます!」
「君達が給仕をすると言えば、他の人に知られることもないでしょう?」
レルがナイス発言をする。ちびっこメイド達は考えている。育ち盛りの男の子達だ。美味しいご飯をたくさん食べたいに違いない。
「グラム、お姉ちゃんたちが秘密にしてくれるっていうならいいんじゃないの?」
「バカ!ピースがそんなこと言ってどうすんだよ」
「ボク、一緒に美味しいご飯食べた~い!」
3人がゴチョゴチョ話し合っている。
「さあさあ、話してる間があったら朝ごはんにしましょ!」
「はい!じゃあ用意しますので!」
しばらくすると、ちびっこメイド達だけで給仕をすると聞いて心配したアンゴルがやって来た。
「お食事の給仕までこの子らがすると聞いたのですが……?この子らにはまだ満足できるような給仕はできないでしょうと思いまして」
「いいんです。子の子達ができないことは私達がやるので。皆でワイワイと食事をすることが楽しいんです。アンゴル、あなたも一緒に食事をしませんか?」
「いえいえ私は……とりあえず、私がお仕度致しますので」
結局、3人のちびっこは申し訳程度のお手伝いをして食卓についた。アンゴルは固辞して食卓には共につかなかった。
「あの、この子達のことを叱らないでね?私達の国ではこのくらいの子は伸び伸びと過ごしているのですから」
「…分かりました」
納得はしていなさそうだが、アンゴルはそれ以上何も言わなかった。
そこに、ひょいとリコラルが顔を覗かせにやって来た。
「やあ。食事は済んだかな?」
「殿下、ご機嫌麗しく……」
「ああ、そういう固いのはやめよう。気軽に話したいんだ」
リコラルはあまり固い口調を好まないようだった。
「ちょっとレル嬢に用事があってやって来たんだが。レル嬢、君が港で立ち向かった男を覚えてる?」
「はい。とても強い方でした」
「彼はね、コーナーといって私の護衛でありイントの将軍をしている。彼が君にもう一度会いたいって言うんだ」
「え?私に罰を与えるつもりなんでしょうか…?」
「まさか違うよ!詳しくは彼から聞くといい。ということで、アンゴルはさっそく、彼女をコーナーの元に案内して」
「かしこまりました」
レルは一人連れて行かれそうになって慌てた。
「ちょっと待って下さい!私はお嬢様から離れるわけにいきません!」
「大丈夫、大丈夫!この城内は安全だよ」
「そういうことじゃなくてですね、私は…」
「分かっているよ。君はマリア嬢の侍女で護衛なんでしょ?大丈夫、レル嬢がコーナーに会っている間、僕がマリア嬢のことをみているから」
(いや、そういうことじゃないんだけど......)
とマリアも思う。リコラルは自分が側にマリアの側にいれば安全だと言いたいらしいが、会って間もない良く知らない男性が側にいること自体が不安になるのだ、とは考えないらしい。
(まあいいか。品の良さそうな王子様なら特に問題ないでしょう)
レルにマリアがうなずくと、レルも承知して大人しくアンゴルに連れられ部屋を出て行った。
「マリア嬢もただ待つのも退屈だろう?中庭でも散歩しよう」
リコラルの言葉にマリアはうなずいた。イント国に来て、慌ただしくしていたせいで城の外にまだ出ていなかった。
「気を付けて」
リコラルが手を差し伸べてくれる。マリアはリコラルの手に掴まって中庭に続く階段を降りた。
(足を踏み外さないように手を引いてくれるなんて優しいのね)
ケイルは普段こんなことをしてくれないなぁなどと考えていると、不意にひらけた空間に出た。
「うわぁ!とてもキレイ!」
中庭には花が咲き乱れ、デルタ国では見たこともない種類の花がたくさん咲いていた。
「気に入った?ここの庭園の花は神聖力で1年中枯れずに咲いているんだよ」
「神聖力で?」
思わぬ言葉を聞いて、マリアはリコラルを見つめたのだった。
連れて行かれたレルはどうなるでしょうか.......。
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