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「………!」

「………………? ………!」


 騒がしい声があちこちから聞こえてくると、腕を刺されたかのような痛みに襲われ目が覚めると、アイリが俺の腕を抱き枕にしていた。

 はぁっと大きなため息を付きながら目を閉じようとする。誰かが思いっきり扉を開け、カチャカチャと足音を立てて近づいてきた。


「陛下、申し上げます。現在ドラゴン族が魔族領全域に現れました。至急指示を!」


 閉じた目を開けて、声の主の方を見ると、ベッドの横で鎧を着た魔族の男が跪いていた。

 アイリを起こそうと、お腹をつんつんとするが一向に起きる気配がない。

 俺が起き上がると、魔族が瞳の色を変えた。

「人間、陛下の横で何をしている!


 そういえばこいつ、魔族領に来た際見かけなかった魔将の一人じゃねぇか。

 鋼色の剣が俺の首元の前に突き付けられる。


「答えろ!」


 はぁっと大きなため息を付くと、俺は次元の狭間から魔王時代に使っていた魔剣を取り出すと、男は俺を殺そうと勢いをつける。

 だが、男がもっていた剣はいつの間にか半分に折れてアイリが寝ている布団の上へと落ちた。


「な、なんだ今のは!!」

「やれ、サラ」


 大剣は、槍の形へと変わり男の左肩を貫き部屋の壁を貫き、叫び声が聞こえ、廊下が慌ただしくなる。


「貴様、なぜ魔王様の武器を………」


 槍は、俺の横に戻ってくると勝手に次元の狭間へと消えていった。

 

「陛下御無事ですか! え? ガリアン?」


 女騎士が部屋に入ってくると壁にもたれている男の名前を呼んで近づいた。


「ラフィラ、あやつは、一体何者だ?」


 傷口を押さえてながらこっちを指さしてくる。


「めんど………」


 ルーンの刻印が男の肩の前に現れると徐々に傷口が消えていくが、やはりこれだけのことで半分の魔力を使ったのか身体がだるくなってくる。


「な、陛下今のは………」

「どうして、あの傷口がふさがって………」


 ふわぁぁぁっと大きくあくびをこっちに見せながらアイリが俺に抱き着いてきた。


「達樹だぁ」


 槍の威力で布団が粉々になっていることにアイリが気づくも、何も言わずに俺にキスをした。


「おい………」

「いいじゃん、誰もいないんだし」

「いるけどな………」

「ほへ?」


 部屋にいる二人を見た途端、アイリは、霧となって俺の前から消えてしまった。

 あ~これは二時間コースだなぁ。


「陛下………」

「魔王様、アイリ様は………」


 俺のことを魔王と呼んだことに気づいたのか徐々に男の顔が真っ青になり始める。


「あれは二時間くらい戻ってこないだろうなぁ。あとで着替えて持っていくからこれをイアに渡しといてくれ」


 次元の狭間から漆黒の大きな鱗と、古びた書類を彼女に渡した。


「お預かりします。魔王様は、これからどちらに?」

「あ~とりあえずアイリ探すわ」

「分りました」


 男に声をかけるとそのまま二人して部屋から出て行った。

 はぁっと大きなため息をついてぼーっと天井を眺めていると背中に人肌のような暖かな感触が触れていた。


「お早いお帰りだなあ」

「見られた………」


 小さな声が後ろから返ってくる。


「あ、ありがとうございます。ちょっと行ってみますね」


 そんな声が廊下へと貫いた穴から聞こえてくると、部屋の扉があき、イアが入ってきた。


「ごめんなさい。私の不注意です」


 ベッドの横にイアが立ってそのままお辞儀した。

 近づく度に怯えているような気がして仕方ない、アイリと一緒に彼女の頭を撫でる。

 数秒撫でると俺達は、そのまま部屋を後にした。


「え? ええええええ!」


 驚いた声が聞こえてくる中でふんふんっと鼻歌を歌いながら城内を歩きだす。

 部屋を出た時、寝間着ではなく普段来ている服に代わっていた。


「これからどうするの?」

「あ~ちょっとな」


 アイリは首をかしげるとそのまま俺の横に張り付いたかのように歩き出す。

 禍々しい扉の前にたどり着き、そこで足を止めた。


「陛下だわ………」

「魔王様………」


 使用人たちの声が聞こえてくる中で、静かにアイリが手を握ってきた。俺は彼女の方を見つめると、ニコッと笑顔を見せ、踏み込む勇気が湧いてきた。


「いくか」


 禍々しい扉に触れた途端、鍵が外れたような音が聞こえ、勝手に大きな扉が開き始める中、俺達は中へと入る。

 王座の間の中心で俺と勇者は戦ったが、今はその痕跡すら存在しない。全て片付けたのだろう。


「ほう、エリシアがまた人を創造したか」


 王の椅子に、禍々しいオーラ身に纏う少女が座っていた。


「サラ、さっきは助かった」

「へぇ~やっぱり君なんだ」


 少女は椅子から俺の前に立ち顔を近づけてくると、隣にいたアイリを見つめる。


「ふ~ん………エリシアの子共に一緒にいる人間? いや君は………彼か………」

「ああ、一応俺だ」

「あれ? でも君たち魂繋がってないかい?」


 その言葉に背後の者どもがざわつきだし、俺達も冷や汗が止まらなくなっていく。

 

「ふ~んまぁいいや、今日は暇だったから来ただけだからあんまり気にしないでね? じゃあね~!」


 禍々しいオーラの少女は、次元の狭間へ入るとそのまま消えて行ってしまった。


「相変わらずだなぁ」


 余裕そうにしていると手を握っていたアイリの手が震えているのがわかる。

 サラに認められたのはいいが、俺が一度殺されてるしなぁ。


「まだ恨んでるのか?」


 ぷいっと首を横に振って何も言わなくってしまう。ポンポンっと繋いでないもう一つの手で彼女の頭を撫でると、そのまま俺に抱き着いてきた。


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