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 俺のことが広まった翌日、魔族領全体から国民達が王都へと集まりだした。

以前着ていた鎧を装備したまま皆と再会を果たす。さすが魔族なのか二百年もたっているにもかかわらず、皆俺のことを覚えてくれているようだった。


「てなわけで、王の座はイアに任せるから」

「「「「えええ」」」」


 例の謎の会議室で俺は部下たちと話し合っていた。定位置である俺の膝の上にはアイリが乗っているわけだが、これがほんのり暖かくかなりよい。


「ぱ………陛下それは」

「あ~隠居だけど?」

「やっぱり! じゃあ私も行きます! ぱ、陛下と一緒に過ごします!」


 アイリの頭を撫でながらう~んと悩んでいると、廊下の方から声が聞こえてきた。


「来てやったぞ、戦闘狂」

「いるか? 戦バカ」


 ライオンをそのまま獣人化させたかのような男と、人間の男が入ってきた。


「うっせぇ、お前らこそ戦いたいだけだろ!」

「あたりめーよ! エリシア様がじかに俺の前に降臨なさったからな」

「われもだ。達樹、お主が復活することをわれらは知っていた」


 会議室が慌ただしくなる。だが、小さな光が俺と二人身体を飛ばした。


「うるさい………寝てたのにふわぁぁ」


 俺たち三人は、会議室の壁にもたれかかっていた。その中央で、眠そうに欠伸をするアイリが立つっていた。寝てたのかよ。


「ギラ、千、出てって達樹も」

「え~」

「いいから」

「はい………」

 

 アイリに俺らは会議室から締め出されてしまった。


「夫婦喧嘩か?」

「うっせぇ………」


 獣王・ギラヴァンが煽ってくるその隣で、龍王・千が黙り込んでいた。

 彼らは、元勇者時代からの仲間だ。まだ見習いだった彼らとあと二人引き連れて俺は魔王を倒すことができた。自分自身が魔王になっても彼らは交流を欠かせず、いつも飲み相手になってくれていた。


「しかし、よくあの状況から蘇生できたなぁ」

「うむ、さすがはエリシア様だ」

「は? 死んで転生したが?」


 二人とも歩みを止め、その場で崩れ落ちた。


「マジか………」

「そんなことがあろうとは………


 落ち込んでいる二人を外へと連れ出し、いつの間にか、墓地へとたどり着いた。


「なんで俺はここに………」

「さぁな」

「我にもわからぬ」


 俺は二人が眠る場所で、手を合わせた。


『ただいま。美優、幸人、俺また死ねなかったみたいだ。アイリの隣を歩きたいために、俺は不老不死になるよ』

そう心で二人伝える。


「こっちに来てください。いいものがあります」

「ん? なんだ?」


 千が俺を呼ぶ声が聞こえ、そのまま彼の背中を追う。墓標の前を過ぎ去り、その横に地下への階段が作られていた。


「なんだここ?」

「いいから入れって!」


 ギラが背中を押し、俺の前には、禍々しい大きな扉があった。その中心には『アイリの部屋』と書かれている。


「いやいやいやまずいだろ!」

「ふふふ、彼女の許可もとっています」

「はぁ? いつだよ!」

「今さっきです」


 ギラに押され、大きな扉が開く。突然部屋全体の青い炎が燭台につきはじめ、真ん中を照らす。そこには、大きな棺桶が置かれていた。


「おい………お前ら………これって」

「達樹、お前の身体だ」

「ええ、魔王となった君の身体です達樹」


 表面がガラスでおおわれており、全身が見れる。綺麗な状態で残っており、色々と驚きを隠せなかった。


「あの扉の看板は?」

「あれは………」

「俺の嫁さんが付けたもんだ。二百年ずっとここでお前をみていたからな」


 棺桶の周りには、多くの花が添えられていた。すべて魔法で保存されている。

 その横には、手紙が置かれていた。中身を出してみてみる。


『今日、達樹………貴方がなくなった。どうして? どうしてなの? なんであの時私をかばったの? 貴方は死ぬ。だけど私は死なない。どうして? ねぇ答えてよ………』


 その手紙を棺桶の上に置き、他の手紙を開くとそのすべてにあの時の後悔が記されていた。何も言えずにその場に固まり、自分の亡骸を見つめる。


「おい、大丈夫か?」

「大丈夫ですか? やはりここに連れてくるのは早かったのでは」


 二人が俺の横に来て心配そうに声をかけてくる。


「来いよ、アイリ」


 俺が彼女の名前を呼んだ途端、空が斬れその中から今まで座っていたような状態でこちらに落ちてきた。びっくりして固まっている彼女に声をかけると少しおびえた様子で抱き着いてきた。


「私はもう大丈夫だから………」


 その言葉を聞いた途端、俺は自分の遺体に火をつけた。みるみる焼けていくのを見つめる。胸が少し痛いような気がするが、気のせいだろう。一瞬で灰となり、俺はその場から立ち去ろうとする。


「待った!」


 ギラの声が聞こえ、振り返ると、燃えた遺体から何かを取り出して俺に渡してきた。


「これは………なんだ?」


 ルビーのように輝き、アイリの瞳のように赤い石を渡された。


「魔石?」

「あ~そうかもなぁ」


 魔力の予備機関としてモンスター達は生まれ持ったその時から持っている。だが、俺の場合はモンスターですらないため生成されないはず、しかも異世界人だから余計にだ。


「いるか?」

「いいの!」


 アイリにその石を渡すと、そのまま口に入れて飲み込んでしまった。


「飲み込んだのか?」

「え? うん」

「何か変化はないか! 大丈夫か!」


 アイリの肩を持って前後に揺らす。


「ちょっと………変、か、も?」


 お腹を押さえて言いながらアイリが地面に倒れてしまった。

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