表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/19

13

 洞窟の前にたどり着くと山の上の方の木々が倒れていく。何が起きているんだと思いながら、洞窟の上に向かう。


「今木倒れたのって………」

「ガタだろうな」


 その場にあるもので最高品質の家を作り出す職人のガダ。彼には以前魔王城を作ってもらったことでかなり好感を抱いている。城と言えばイアは大丈夫か?


「なぁアイリ」

「ん? なに?」

「イアは………」


 ぴくっと反応するアイリ。突然目の前が砂吹雪に覆われていた。目の中に砂が入らないように目を閉じようとする。だが、誰かに足を踏まれたのか一気に痛みが走る。


「いってぇえええ」


 咄嗟に目を開けるとアイリが俺に抱き着きながら目を閉じていた。足元を見ると彼女が履いているヒールが俺の足に刺さっていた。あーこれだ。ポンポンっと彼女の背中を優しく叩くとぱっと目を開きこっちの方を見つめてきた。


「血、ちょうだい………」

「なんで今! そ、その前に足どけてくれ………」

「え~」


 悔しそうにしながらアイリは俺の足から自分の足をどけてくれた。足を見ると、中心が赤くはれているが、それ以外は何ともなかった。


「真祖様、やっと見つけました」


 砂吹雪が球体のように吹き、その真ん中から声が聞こえてきた。アイリの方を見つめるとげっとした表情を浮かべている。すると、砂吹雪が晴れ空に高そうな服を着て、背中にはコウモリのような羽を生やした吸血鬼の男性は、そのまま俺たちの前に降り立った。


「もう見つかったのね………」


 はぁっと大きなため息を付きながら俺から離れて、左腕にしがみついていた。その様子を見たのか、吸血鬼の男性は俺を睨みつけてきた。


「さぁ、ともに城へ帰りましょう。母上も待っております」

「ふ~んそっか」


 まるで興味なさそうな返事をするアイリ、その反応を受けた吸血鬼の男性は俺の方を指さして怒鳴り始めた。


「こんな家畜と一緒にいると汚れてしまいます! 私の方へといらしてくださ………」


 一瞬アイリが動き、吸血鬼の男性が俺を指さしている指をそのまま折った。あああっと悲鳴をあげるが、湯気がでてすぐに元の形へと戻っていく。


「今………なんていった?」

「………家畜といるのがよくないのです! 私ともに………ぐああああああ」


 アイリは、吸血鬼の男性が服に付けていたバッチを取る。すると突然全身が炎に包まれた。彼らにとってそれは日常に必須なものだろう。魔法で太陽でもそがいでもしているのか。


「ねぇ? アイレス。私の旦那様になんていったの? もう一回言って?」


 全身燃えている吸血鬼の男性の前で笑顔を見せる。

 

「……………な、なぜ………あ、あなたには………魔王様………しか………」

「へぇ~この状態でしゃべれるんだ。さすがあの子の眷属………まぁ見る目がないから私はいらないけど」


 俺の横にアイリが来ると「いこ」っと一言言い残し、目に涙をためながら、そのまま、森を抜ける方向へと向かっていった。一人残るが、落ちていたバッチを燃えている吸血鬼に付ける。すると、全身が燃えていたのがすぐ収まった。


「なぜ助けた………人間」

「あ~アイリが泣いてたからかな」

「な………なぜあの方が泣いていた………?」


 素っ裸の吸血鬼が俺の前に立っていた。


「ああ、さすがに自分の眷属てなるとあいつ自身も同情するんだろな」

「な、なるほど。どうして真祖様の名前を………」


 風が上空から俺の方へとふぶく。咄嗟に上を見上げると、白いパンツが見えた。


「な………真祖様………」


 アイリがそのまま俺の横に降り立つと、頬を膨らませてこっちを睨んでくる。


「見たでしょ!」

「何がだよ………」

「む~達樹のえっち! 変態!」


 プイっとアイリはそのまま明後日の方向を向いてしまう。ごめんっと謝りながら、頭を撫でてあげると「ずるい」と返ってきた。


「達樹………ま、まさか………だがあり得ない。あの方はあの時死んだはず」

「誰のことだそれ?」

「い、いや、真祖様が魔王様の名前を呼んでいたのでな………」


 先ほどとは思えないほど全く元気がなくなっていた。感がかなりいいようだ。


「そこまでわかってんならわかんじゃないのか? ほれ吸血鬼なら鑑定くらいできるだろ」

「い、言われなくても………あ、、、ああ」


 鑑定を使ったのかその場で吸血鬼は凍り付いたかのように固まってしまった。そういえば俺自身の鑑定のデータ知らないんだよなぁ。


「アイリ、俺を鑑定してくれ」

「いいけど………なんで?

「いや気になったから」

「はいはい、分かったから」


 鑑定と小さくアイリがつぶやく。そのまま俺のデータのことを話してくれた


ー--------------------

名前 湯水達樹 (元魔王・ユーベルト・ダイヤ)

性別 男

年齢 18(245歳)

種族 人間(エルシアに創られた肉体)

ステータス:hioihihihjpgihaihodj@akp[8/(36198908-8!###$%&’()=

称号:「もう貴方は私の子」(すべてを超越した存在になれる)異世界から召喚された勇者、異世界人、日本人、高校生、魔王、勇者、英雄、蘇り、真祖 アイリ・ダイヤの旦那 イア・ダイヤの父親龍の盟友、獣人の盟友、ハイエルフの親戚 「相変わらず化け物ね」「アイリ大事にしてよね?」「バ~カ」

ー--------------------


「こんな感じだけど……ママから色々言われてる」

「うーむ」


固まっていた吸血鬼が気づいたら俺の前で土下座していた。この世界でもあるのかと感心しているとアイリが慌て出す。


「ちょ……それダメだって……」

「私は、主のことを忘れていたなど自分でも許せないのです」


銀色に輝く剣が突然吸血鬼の首の上に現れる。手に取ろうとするが、すり抜けてしまった。


「言っとくがなぁ、お前がいないと俺らはイアの状態を知れないからな」

「それは困ります! 今すぐにでも姫様の事を………」


反射的に土下座を辞めたせいか、銀色に輝く剣はいつの間にか消えていた。

なんだったんだ?


「じゃあ話してくれ」

「はい」


 そのまま吸血鬼は、語りだした。アイリが俺の元へと飛び出した際、魔族領全体が混乱し始めた。「王は俺だ」と暴れるものが大半を占め、弱肉強食が生まれていた。だが、あの日の宣言によって国がさらに強化されたとき、獣人族と龍族が腹を立てて城に乗り込んできたらしい。城にはイアがいたが対応できなかったとか。


「あいつらかよ………」


 はぁっと大きなため息を付きアイリの手を握る。


「な……なに?」

「あいつら懲らしめに行くから付き合え」

「え~やだよ。また城もどるの………」

「どうせ書類仕事したくないだけだろ」


 ギクッと表情を青ざめてそのまま黙り込んでしまうアイリ、吸血鬼はその様子を見て何が起こっているのかよくわからないようだった。


「あとでいくらでも吸わせてやるから」


 小声でアイリの耳元で言うと、頬を真っ赤にしながら明後日の方向を向く。


「分ったよ………やればいいんでしょ………バカ」


 アイリを中心にルーン文字が俺たちの下を広がっていく。それは何千何万の術式が組み込んであることはわかるが、詳細はよくわからない。

 

「転移」


 アイリがつぶやくと目の前が真っ白になり、思わず目をつむった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ