退治
はい。えー、ね。パフェメットと名乗る悪魔によってね、学園に閉じ込められているわけですがね、ええ。
出れなくはないけど出たら殺されるんですよ、たくさん。いや、困った困った。
「シアちゃんさん、何か考えは?」
「何度も言うけど、元の体への影響がわからない以上攻撃を仕掛けるのは悪手」
あれからずっとどうするか考えている王女。目元にはかなり深いクマが。
対策会議としてほぼ毎日集まるんだよ。このやりとりもすでに何回かやったし。
「やはり悪魔が来たのなら、被害を出さないというのは不可能に近い。ある程度は許容すべきでは?」
「それは負けを認めたのと同じだろ」
「ならば他に案があるのか!」
「それを今考えてんだろ!」
「静かにしてよ!」
あー、うるさい。どうしようもないからピリピリし出してる。これももう見慣れた光景だ。
本来なら止める立場にある先生方もこの場にはいないし、本当にどうしようもない。
悪魔について調べるために文献は全てこの場にあるが、冊数は一桁だ。しかも大体がおとぎ話のようになっているため役に立たない。
今現在生徒の反応は大きく分けて三つ。
まずオレたちを含むどう戦うかを考えているもの。
次にもうダメだと諦めているタイプ。
最後に鬱憤を溜めてものや人にあたるタイプ。
今現在イライラ組が鬱組に当たり、それを対策組が止めると言う状況が続いている。
乗っ取られたやつを拘束、それと同時に攻撃を仕掛けると言う策が前向きに検討されていたが、校長がこの件は内密にするため死傷者は出したくないとか言い出したせいで没になった。校長を生贄にした方がいいのでは?と思ったのは内緒だ。
学校としてどうするかとは別にもしかしたら通用するかもしれない魔法がある。基本属性に収まらない特殊魔法のうちの一つ、【浄化魔法】だ。
とはいえ通用しない可能性もあるし、変に話して希望を持たせることもないし、立ち向かうと言うことになったときこっそりと試そうと決めた。
「・・・・覚悟を、決めましょう」
というと?
「今からあの悪魔へ攻撃を仕掛けます」
なぜ今なのか、と考えすぐに耐えにたどり着いた。明日生贄を差し出さなければならないのだ。
「まず物理攻撃は通じないので、魔法攻撃しかできないのですが、どんな魔法が使えるのか教えてくれませんか?私は風魔法が少し使えます」
「僕は土魔法」とエドワード
「俺は炎魔法」とショウ
「私は水魔法」とリーン
「私は光魔法」とマジメくん
「ワタシは全属性使える」とオレ
『え?』と一同
信じてなさそうなので手元に火球と水球、土の塊に弱めの風を作り出し、光と闇でそれぞれ作った剣を机の上に置いた。
ついでに治癒魔法をみんなに掛けてあげた。疲れてるだろうし。
「」
みんなして顎が外れそうなくらい驚いていたのが印象的だった。
◇◇◇◇
「卑劣なる悪魔バフォメット。今ここにあなたを打ち倒すことを宣言します!みなさん、私に続いてください!」
王女の号令と共に全生徒とちょっとの先生が魔力を手元に集め始めた。いや、先生働けよ、ていうか止めろよ。
浄化魔法と共に覚えた補助魔法で防御力とかその辺をあげておいた。広範囲に発動するのは疲れるね。
では、オレも働こうか。
「『聖者の鎖』」
これは光魔法により鎖の形を作り出し、そこに浄化魔法を組み込んだオリジナル魔法だ。
鎖のつなぎめに魔力的な細工をしてあり、空間に固定することができる。攻撃というよりも捕縛に特化した魔法だな。
「グギアアアアアア!痛い痛い熱い!焼ける!溶ける!死ぬうううう!」
弱。
いや、演技かもしれない。四肢を拘束して全力の破壊特化魔法をぶっ放した。
以前編み出したトンデモ魔法、名付けるとしたら『壊弾』だ。
「ノオオオオオオ!」
まきびしのような形の金属を中に入れたし、当たらなかったものを風魔法で飛ばして当てているので被害はない。
と、そこに他の奴らが放った魔法が飛んできた。
色々混じっているのでまず風魔法を加速させ、次に炎魔法を増幅、土魔法を減速させ、水や氷は悪いが消させてもらった。
「うぐっ!グェッ!イギっ!グホッ!」
攻撃が一旦止んだので光の矢を作って飛ばしてみた。
「ぐふっ」
他よりも効果が高そうだったので至近距離で光魔法と浄化魔法を全開にしてやった。
「ーーーーー」
声にならない声をあげ、霧散するように消えていった。
ように見えるが、まだ生きている。
ぼんやり見えたので完全に消した。最後に何か魔力のようなものを放っていたけど、なんだったんだ?
「シアちゃんだけで良かったよね?」
いやいや、そんなこと、ん?や、でも、んー、うん、そうだな。
「う、う・・・・」
あ、乗っ取られた先生は無事かな?生きてるとは思うけど・・・・うっわ。
ダメージがそのまま残っているようで、放っておけば今にも死にそうだ。治癒魔法をかけておこう。
「シアちゃんだけで良かったよね?」
何回言うんですかねえ、それ!
◇◇◇◇
あいつの眷属の方を見に行くと、なんかすごい弱っていた。
椅子に縛り付けて腕に自信のある何人かに見張らせていたのだけど、それすら必要なさそうなくらいに。
浄化魔法でしっかりと処理しておいた。念の為治癒っと。
便利すぎるよこれ。
「えー、この度の件ですが──」
学校側はやはり外部にこのことが漏れないよう手回ししている。腐りきってやがるぜ!
全寮制なのが余計にね。遠いし、家から。
っ!?
なんか今すごい悪寒がしたんだが。鳥肌立ってきた。
辺りを見回しても誰も反応していないし、魔力的なものでもない。うー、気持ちわる。
「──よつて、この騒ぎにおいて最も活躍した生徒2名。クリスティーナとシルヴィアを学年代表として任命する。両名は前へ」
へー、学年代表ね。懐かしい。クリスティーナは王女で、シルヴィアって誰だ?オレだ。
「拍手!」
ちなみに今回2年生は外に出ようと奮闘したものの結局出られず無駄に数を減らし、3年生は修学旅行で不在だ。
「受け取りたまえ」
腕につけるやつをもらった。てかなんでこいつこんな偉そうなんだ。
大人しく席に戻り、本を開き直した。
いや、こんなん真面目に聞くだけ損っしょ。ヘーキヘーキ。
「学年代表は備えるように。以上」
あれ、すっごい重要なことを聞き逃した気がする・・・・。
「シアちゃんさん、頑張りましょうね!」
王女が寄ってきてそう言った。
ああ、うん。がんばろー。
はぁ、めんどくさ。




