悪魔
授業中はこれを使いながらたまにアドバイスをもらって、授業間は自主的にここで練習。
という名目でみんなゲームを楽しんでいる。オレはここでチャンピオンになっている。そろそろ魔力強化へ移ろうか迷っているが、オレだけが移ると人数の関係で1人が暇になる。偶数だし、1人用は魔力強化練習用しかない。
とりあえず音ゲー?みたいなのをやることにする。専用の腕輪と足輪をつけ、指示されたポーズを素早く取るというものだ。ちなみに腕輪とかはかなり重い。筋肉へ魔力を流してみるが、少し辛い。
何かが間違っているのだろうか。原因がわからないことには改善のしようもない。あとでティチャーに質問しよう。
「シアちゃーん、これのコツ教えてー」
そうそう。五代貴族とやらの、ショウだっけ?が最近よく質問してくる。
「これは魔力の強弱が大事だから、切り替えをもっとスムーズにできるよう・・・・・・」
「こうか?」
黙って頷く。
要領はいいんだよな。やればできるけどめんどくさがってる印象。サボってんじゃねーよと言いたいが我慢。身分的に厳しい。
そうそう、最近見つけたのだが、体から離れた場所で魔法を発動する効率のいいやり方。
闇魔法の羽は魔力で形を作るが、引っ込めると魔力も戻ってくる。そこから着想を経てポンプのように魔力を伸ばし、そこで魔法を発動。
魔力を引っ張るようにすれば戻ってくる。
そしてこれのおかげで魔力操作が一段階上へ行った感覚がある。まず魔力を糸のように細くすることができたし、物質的な概念を付与できるようになった。
ようするに魔力でエスパーみたいなことができるようになったわけだ。
糸魔力と組み合わせて動くことが必要ない自堕落な生活が約束された。拍手。
あとはワイヤーアクションや糸使いとしての戦い方を練習中。
「大変だ、校庭で先生が倒れてる!」
エドワードが慌ててやってきた。先生が倒れてるとは、一体どういうことだ?
◇◇◇◇
「う、うぅ」
先生は誰かにやられたかのように倒れ込んでいた。獣の爪のような跡が傷として残っている。一体誰が──
「はな、れ、ろ・・・・・・」
「一体どういうことですか先生!誰にやられたんですか!?」
「に、げ・・・・・・」
「っ!?」
魔力が膨れ上がるのを感じ取ったオレは糸で近くにいたやつを回収し、衝撃波を発生させて距離を取った。
「ぐ、ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ」
先生の背中からはコウモリのような羽が。側頭部からは二本の山羊のようなツノが生えてきた。
「ぐ、ハハハハハ。ようやく肉体を手に入れた。しかもそれなりに質がいい。では主人の命に従い、貴様らを殺す」
みると手が真っ黒に染まり肥大化して、大きな爪が生えていた。おそらく、あれでやられたのだろう。
「我が名はバフォメット!我の血肉となれ、ニンゲンども!」
◇◇◇◇
「皆さん、落ち着いて!誰か先生方を呼びに行ってください。私はそれまで時間を稼ぎます」
誰よりも先に動いたのは王女。
「クリスティーナ王女、私も戦います」
そう言って前に出たのはマジメくん。
「おいおい、俺を忘れてないか?」
次に前に出たのはショウ。
「仕方ない、僕の力を貸してあげよう」
そしてエドワード。
「皆・・・・・・。ここであれを倒し、学園に平和を取り戻します!」
バトル漫画のシーンみたいになってるけど、多分勝てないよ?魔力量は比較にもならないし、絶対強いもん。
「あれはおそらく悪魔でしょう。魔法攻撃以外通用しません」
へー、悪魔なんているのか。
「愚かだな」
そう言ってバフォメットは黒い禍々しいオーラを纏った爪を・・・・・・
あかん、多分食らったら死ぬやつや。
「はああああああああ!」
手元に爆炎を出した王女が真っ直ぐに向かっていく。これ、死ぬんとちゃいます?
土魔法で壁を作り、王女を引っ張った。
「無駄だ!」
紙でも引き裂くかのように壁が切られた。ていうかなんか溶けてね?腐ってる?
「っ!もし、これに当たっていたら・・・・・・」
死んでただろうね。
ま、治癒魔法あるし大丈夫。治癒魔法は腐ったものも治せるのだ。
「ちっ。今度はこっちからいくぞ!」
魔法攻撃以外通用しないらしいが、元となった肉体がどうなるのか不安だ。
「う、うわああああああ!」
錯乱した生徒の一人が逃げようとしたのか飛び出してきた。
「あいつでいいかな?」
黒い球が放たれ、その生徒にあたった。
しかし、ダメージはなさそうだ。
「・・・・・・」
ふらふらと校舎に戻り、、、
「きゃあああああ!?」
悲鳴が聞こえてきた。
◇◇◇◇
「ハッハッハ!我が眷属である下級悪魔を受肉させた!他の奴らを殺されたくなければ、大人しく殺されろ!」
人質を取られたようだ。
「くっ、みんな。攻撃をやめるんだ!」
「一体どうすれば・・・・・・」
「卑怯な真似を!」
「僕と戦うのが怖いのか?ああ!?」
「シアちゃん、何かないの!?」
いや、そんなこと言われても。
「フフフ。今ここで殺しては面白くない。毎週一人、生贄を差し出してもらおうか」
「・・・・・・!」
マジメくんが般若の形相で暫定悪魔を睨んでいる。
「ここは一旦引きましょう。少なくとも現状では勝ち目がありません」
「くっ!」
マジメくんのいまにも泣きそうな顔がやけに印象に残った。
◇◇◇◇
「先生方はどうなさるおつもりなのですか?」
「うーむ、悪魔についての文献を調べてくる」
「では私も」
「私は件の生徒の監視を」
「ちょっと、逃げるおつもりですか!?」
王女、ピリピリしてんなー。ま、露骨に逃げ出すように散っていったらしゃーないか。
粉々に粉砕するくらいなら多分きっと恐らくできなくもないけど、正直ちょっと自信ない。魔力的な要素で肉体が強化されている場合なんかは無理。下手に手を出すとあいつの眷属らしい下級悪魔が暴れ出すかもしれない。
「一体どうすれば・・・・・・」
「そもそも勝ち目はあるのか?」
みんな弱気になり始めている。
そんな中、生徒のひとりが立ち上がって言った。
「こ、こんなところにいられるか!僕は帰る!」
そうして駆け出していき──
「逃がさんよ」
あっけなく殺された。
「なぜ、こんなことができるのです!?」
「勝手な発言は控えよ、ニンゲン」
少しずつ精神的に追い詰められている。そのうち折れてしまいそうだ。
「いまこの瞬間から貴様らはここを出たら殺す」
バフォメットは追い詰められた精神に追い打ちをかけるよう、悪魔のような・・・悪魔そのもののような醜悪な笑みを浮かべてそう告げた。




