オーガ
よし、場所の確保OK、人払いOK、失敗した時用の準備OK。
水と『ノドナオース』というポーションを持ってきた。ふぅ、緊張するな。
「ブレステストオオオオオオオオオオ」
おおおおおお!出た!ちょっと痛いけど前回とは雲泥の差だぞ!
念のためポーションは飲んでおこう。うーん、微妙。
ま、味に関しては置いといて。
火遁の術!
なんか忍者修行してる気分だぜ。
ブレスは込める魔力に比例して大きくなる。一定のラインを超えると青くなるが、そこまでいくとしんどい。
炎じゃなく風でやったらどうなるんだ?ポーションはまだあるしやってみるか!
「何言えばええねえええええええええん!」
取り敢えず本音をぶちまけてみたが、凄まじく大きな声が出た。喉への負担が半端じゃない。
ポーションを飲みつつ考察タイム。魔力量で効果が大きくなる。ここまではさっきと同じ。
なぜ音が大きくなったか、だが多分こういうことだ。
音とは空気の振動。風魔法は空気を操る。風属性を『声』で振動させ、音が増幅した・・・・ということ。『咆哮』の効果が上がる可能性もあるし、本来微弱な威圧の効果も大きくなってる。と思う。思いたい。思わせて?
(あ、やべ)
人が集まってきたので撤退!火を使って姿を隠す魔法を発動した。以前から兼ねて練習していたのだ。
「そして風魔法で音を消す!」
完璧だ。あ、草に引火してる!炎魔法の応用パート2で温度を下げ、火を消す!今度こそ完璧だ。
ん?体の中に何かある?それも二つ。まぁ、後回しだ。どうせ目立つし。
◇◇◇◇
別のひらけた場所にやってきた。
体内の異物その一、自己主張が激しい方を引き出してみる。
ピカッ
「グギァガアアアアアア!目が、目がぁぁ!」
凄い光った!痛い、目が痛い!あああああ、失明したんじゃねぇだろうなこれ!
ゆっくり目を開いていく。色は見える。時間経過で治るだろ、くっそいてぇ。
次、もう一つ!
バチャチャチャチャチャ
水。操れる。
これは、水魔法を習得したってことか?
体内の異物感が薄れて──
あ、まだある。これは?
次の瞬間、手から闇が溢れた。
◇◇◇◇
悲報、おれこの短期間でほぼ全ての魔法を習得してしまう。
推定ネオの進化補正が働いている。パネェっす兄貴。
水は凍らせることができるとわかったのだが、光と闇は強力すぎてまともに操作ができない。
あの感じだと実体も持ってるし闇の剣!とかできそう。あとは土を習得すればフルコンプだ。どうせなら揃えたいじゃん?
『今回は魔族との戦い!そろそろ脱落者も増えてくるだろう!今回の相手は、なんとオーガだ!』
オーガとは、ゴブリンの上位種族だ。額にツノが生えている以外はただのデカい人間だ。
ただの人間と、変わらないのだ。
これに攻撃はできても殺すのはちょっと、、、
『オーガは魔族の一員なので、降参と言わせれば勝ちだー!』
魔族とは人族、獣族などと同じ括りだ。魔物が進化した種族ということで蔑まれてもいる。
てかそうか。オーガって魔族だったのか。
そして今回も最初はオレ。えーい、やったらぁ!
「拙者は不器用故、手加減は出来ぬ。今なら引き返すこともできるが?」
「それはしない。ところでここってそっち的にはどんなとこ?」
「拙者にとっては力を示し、オーガの存在を広める場だ」
うーん、よくわからん。常識がそもそも違いそうだ。
『開始っっっ』
「いざ、参る!」
オーガが腰から大鉈を抜く×2。当たったら痛いじゃ済まなそう──
「ガハッ」
顔に横から、首がもげそうになるほどの衝撃が加わる。
鳩尾の辺りが燃えるように熱くなり、遠のく意識が鮮明になった。
脈動と魔法による身体強化を発動。
火で体温を、風で呼吸と聴覚、嗅覚を。水は生命力に溢れているようで、体内で回すだけでかなりの回復効果が得られる。
ネオを抜剣し、空気を目一杯吸って、全力で『咆哮』を使った。
「ぬぅっ」
「ブッ殺す!」
鉈が下から襲ってくる。脇腹に食らうが、魔法を使い耐える。
肋骨が折れたような音がする。しかしそれを意図的に無視してオーガに肉薄する。
「シネェェェェェェ!」
風の付与で刀身を伸ばして横薙ぎに切り掛かった。
「ぐっ!?」
鉈が片方砕け散り、オーガは蹴りを放つ。
強すぎる衝撃に意識が遠のくがやはり鳩尾の辺りが熱くなり、強制的に意識が戻ってくる。
体にかかる負荷など考えず、相手の懐へ全力で飛び込み袈裟斬りを放った。
「見事」
剣は、体の中程で止まっていた。
◇◇◇◇
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
「男の子でしょ、しっかりなさい!」
時代錯誤なことを言われても、痛いものは痛い。
試合が終わって興奮が冷めてきた辺りでとんでもない痛みに襲われたのだ。死ぬかと思った。
怒涛の成長ラッシュ