4-11話 スライム達の休日
私が失っていた大切なものを取り戻せたその次の日。
私達は再びクエストに出る予定だったが……結局この日もお休みになってしまった。
ロランさんは、11月の寒い日にずっと外を歩いていたせいで、風邪を引いた。
私はずっと室内にいたけど、私も何故か風邪を引いた。
ターシャさんは過労で倒れた。
「う~ん……メルちー……外を裸で走り回っちゃダメ……」
悪夢にうなされるターシャさんの声が、隣の部屋から聞こえていた……。
「メルティさん、大丈夫ですか?」
宿屋のオウルさんの娘、ネリーちゃんが、お見舞いに来てくれた。
「ご飯を持ってきました。
メルティさんの風邪を引いた時の食生活が分からなかったので、とりあえずチキンスープとパンがゆを持ってきましたけど……食べられますか?」
「ネリーちゃん、ありがとう……」
テーブルに料理を置いてもらう。
「あとこれ、父と母からです。風邪用のポーションです」
「え……そんな高いもの……」
「いいえ。ザジの件で助けて戴いた事と比べたら、こんなのたいしたこと無いです……って、もし断られそうならそう言えって言われましたので。受け取ってください。
じゃあ、今日はゆっくり休んでくださいね」
私はお礼を言って、風邪用ポーションを受け取る。
ネリーちゃんが部屋から去った後、暖かいスープをすする。
……うん、おいしい。体があったまる。
こういう、体温の変化を感じるのも久しぶりだな……。
スープをこくりと飲み込み、お腹の中に入れる。
昨日は、『噛む』と『飲み込む』っていう行動を忘れていて、ずっと口の中に入れたまま、何で溶けないんだろうって思ってたな……。
思えば、第23番旧坑道から帰った後、ずっとスライム娘のままだった気がする。
クルスさんが、『時々は元の姿に戻るのが大事』ってアドバイスしてくれた事を忘れていた。
うん……大切だな、これは。
食後にポーションをいただいた後、寝起きで汗をかいたので着替えする。
……うん、今日はちゃんと着替えできる。
下着を取り換えて、パジャマも新しいものを着て……と。よし、問題ないね。
あ、でも、タンスの中に入っていた『ブラジャー』というものの事はまだ思いだせない。
まあ、思い出せないならそんなに大事なものじゃないのかな。
ターシャさんも、これは「アタシには不要なものだから……」と、なぜか涙ぐみながら言ってたし。
多分頭に付けるヘアバンドみたいなものだと思う。後で付けて、ターシャさんに見せてみよう……。
ベッドの上で寝ていると、私のおでこの上に、アオが乗ってきた。
「あ……気持ちいい……」
ひんやりとした感触が、火照った顔に丁度いい。
――メルティ、大丈夫?
アオが聞いてくる。
「……ありがと。気持ちいいよ」
――人間って大変だね。服を着なきゃいけなかったり、ビョーキになったりするなんて。
「そうだね……人間の身体ってこう言う時不便だよね……
スライムは、病気になったりするの?」
――うーん、分かんない。ワタシ、産まれてからまだそんなに経ってないし。
そういう状態異常になったこと無いから分かんないや。
「そっか……他のみんなは、何してるの?」
――今日はいろいろやってるみたいだよ。
「そっか……」
私は落ち着いてきたのか、ゆっくりと眠りについていった……。
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「ミリィさん、今日はお1人ですか? あら、えっと確か……『ルー』ちゃん?」
『ルー』は、ミリィさんと一緒に、ミリィさんの肩に乗って冒険者ギルドにやってきた。
そんな珍しい組み合わせの2人を見て、ソレーヌさんが驚く。
「なるほど……みんな風邪で……。
じゃあ、今日はミリィさんはお1人でクエストを?」
「ううん。今日は、いかないつもり。その代わり、修行所、貸してほしい」
ギルドには中庭に修行所がある。
以前、メルティとコーストさんがここで模擬戦をした場所だ。
でも、今日はそこではなく、中庭の一角の魔法練習のコーナーに来ていた。
地面に白い線が引いてあって、その向こうに、カラフルな色のついた的がある。
魔法耐久性の高い素材で出来た的だ。
魔法系のジョブの冒険者が、そこで練習をしている。
「ここで、いいの?」
あたしはぴょんと跳ね、肯定の意味のジェスチャーをする。
あたしは言葉を発せないので、ジャンプが肯定、体を横に揺らすのを否定のジェスチャーに使っている。
基本的にはミリィさんとはお話しできないんだけど、ミリィさんも外国語になれなくて苦労している身。
言葉で苦労している者同士で伝わる何かがある。
ミリィさんは自分が通う道場が別にあるんだけど、あたしが無理を言ってギルドに連れて来てもらった。伝えるのは、本当に大変だった……。
あたしは、人間用の白線のだいぶ手前に降ろしてもらった。
そして、的のほうを見る。
周囲の冒険者が、何事かとあたしを見ている。
私は集中し、心の中で呪文を詠唱する。
……酸素、熱を生み出せ……。
そして、的に向かって魔法を放つ!
ぼっ!
小さな火の玉が、私の前から飛び出る!
……がしかし、火の玉はすぐ先でぽとりと落ちる。
「嘘だろ……スライムが魔法を……?」
「噂は本当だったんだ……最近、魔法を使うスライムが現れたって……」
周囲のみんなが褒めてくれる。
でも、あたしは全然納得がいかない。
やっぱり、魔法が下手になっている……。
「凄いね……このスライム、君のかい?」
「ううん、私の、仲間の、使い魔」
「名前は何て言うの?」
「ルー」
そんなやり取りを、ミリィさんと周囲の冒険者がしている。
もう一度……もう一度魔法を……えいっ! ぽとっ。
あたしは何度も何度も魔法を繰り返す。
でも、すぐにふらふらになる。本体と分離した私のMPは、そんなに高くはないらしい。
「ルーちゃん、大丈夫? このマジックポーション使っていいよ」
「魔法と遠くに飛ばしたいのか? 手本を見せてやるよ。ほら、こうだ」
冒険者のみんなが私に構ってくれる。
ミリィさんは安心したように、少し離れた場所で自主練習を始める。
あたしはみんなに見守られながら魔法の修行を続ける。
がんばらなきゃ。
またちゃんと魔法を使えるようにならなきゃ。いや、もっとうまくなりたい。
そうじゃないと、イルハスさんと並んで戦えない……。
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『ミド』は、いつものように街を散歩する。
散歩しながら、街を歩く人々を見る。
最近理解したことがある。
人間の大人は、大きく分けると2種類ある。
『男の人』と『女の人』だ。
さらに言うと、女の人はだいたい3種類くらいに分けられる。
『おっぱいの大きい人』『おっぱいの大きさが普通の人』『おっぱいの無い人』だ。
最初の分類の女の人には、主に、宿屋のおかみさん、セシルさん、マキノさん、ドーラさんが分類される。ミリィさんもどちらかと言えばこっちかなと思う。
おっぱいの大きい女の人の上に乗ると、ぽよぽよして楽しくて気持ちいい。
ぼくのお気に入りの場所だ。
あと、まだ直接会ったことは無いけど、メルティの記憶によると、女勇者のクルスさんも大きい。
ぜひとも乗ってみたいと思う。
一番理想的だったのはシャンティさんだったけど、シャンティさんは諸事情によりいなくなってしまった。
あの柔らかさをもう体感できないだなんて、ちょっと寂しい。
メルティに、シャンティさんのおっぱいを触らせてあげられなかったのが、ちょっと心残りだ。
『おっぱいが好き』だと言うと、普段はぼくの本体であるメルティに怒られる。
詳しくは分からないけど、人間の世界だと、そういうのはいけない事らしい。
そうは言いながらも、心の奥底ではメルティもおっぱいが大好きだという事をぼくは知っている。
クルスさんの事を思い出すときは、クルスさんのおっぱいもセットで思い出すことも知っている。
でも、最近のメルティは、あまりそういう事を言わなくなった。
おっぱいの事をあんまり叱らなくなった。
どうしてかなと思っていたら、どうやら病気というものだったらしい。昨日ターシャさんが一生懸命治療?してくれていた。
次にメルティがスライム娘になる時は、元のメルティに戻っているはずだ。安心。
ぼくは裏通りを進み、セシルさんのお店に行く。
「あ、ミドちゃん!」
「ミドちゃんだー!! あいにきてくれたの?」
セシルさんは、洗浄屋さんにお嫁さんに行った、ザジちゃんのお姉さん。
シャンティさんのいなくなった今、ナンバーワンの乗り心地のお姉さんだ。
ザジちゃんは、今日はこのセシルさんのお家に来ている。
ザジちゃんはこの間、誘拐事件に巻き込まれてしまった。
その後、ぼく達が頑張って、無事に救出できた。
ザジちゃんが誘拐されちゃった原因のひとつに、『オウル亭の忙しさ』というのがある。
オウル亭は、宿屋と食堂を同時に行っているお店だ。
どうしても忙しい時間が出てしまい、ザジちゃんが1人になってしまう時間があった。
その隙を狙われて、ザジちゃんは誘拐されてしまった。
なので、事件解決後、ザジちゃんはみんなに手厚く保護されている。
オウル亭が忙しい時間は、このセシルさんのお家に預けられるようになった。
洗浄屋さんは午前中が忙しく、夕方は暇になる。食堂を営むオウル亭とは逆だ。
セシルさんはもとより、セシルさんの旦那さんも、旦那さんの両親も、ザジちゃんを大事に扱ってくれている。
ただ、冒険者稼業を順調にこなせるようになったメルティとは、遊ぶ時間が減ってしまった。
昨日と今日はお休みだったけど、病気でザジちゃんとは遊べない。
だから、ぼくはザジちゃんに会いに行こうと思った。
「ミドちゃん、ここ好きよねー」
お店の休憩時間、ぼくはセシルさんのいつもの位置に乗せてもらう。
「わたしもおねえちゃんのおっぱいすきー」
ザジちゃんも、だっこして顔をうずめる。
「もう、2人とも赤ちゃんなんだからー」
セシルさんがそう言いながら笑っている。
ザジちゃんと遊ぶのは、おっぱいの上に乗るのと同じくらい大好き。
今日はいっぱいいっぱい遊んでね。
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アタシの名前はミカ。みかん色のミカ。スライムのミカだ。
『アタシ』は、『ルー』のおねえちゃん。……らしい。
らしい、というのは、基本的にはスライムは生まれた時の事を覚えていないからだ。
でも一応、生を受けてしばらくはルーと一緒に過ごしたので、つまりはおねえちゃんだ。
アタシは、ルーとは違って、メルティと融合はしていない。一応ごく普通のスライムだ。
ルーはもう普通のスライムではなくなってしまったけど、私の事を以前と変わらずおねえちゃんと呼んでくれる。
ルーはメルティと同化したので、メルティやアオやミドも、アタシの事をおねえちゃんと呼んでくれる。
手のかかる妹たちが増えて、全くおねえちゃんは大変なのよ。
ルーは基本的にはメルティと同化しているので、普段は冒険者というお仕事に行く。
アタシはそーゆーのに行かなくていいので、普段は宿屋にいてザジちゃんやネリーちゃんと一緒に遊んでいる。
冒険者に限らず宿屋に限らず、人間は『はたらく』という事をしなければならないらしい。
全く人間って大変な生き物なのね。
宿屋にはあと1匹、レイというスライムがいるけど、この子は他とはだいぶ違う。
スライムは他のスライムと混じる事によっていろいろ学習したりするんだけど、レイ君は混じったものが特殊だったみたいで、かなり頭がいい。
かといって嫌な性格ではなく、基本的には優しくて頼りがいのあるスライムだ。
レイ君は、ザジちゃんやネリーちゃんと一緒に遊んでいない時は、本を読んだり、どこかに行って何かをやっている。
何をしているのか以前に聞いてみたけど、アタシにはよく理解できなかった。
ザジちゃんもネリーちゃんもレイ君もいない時は、アタシはつまんないので、街をぶらぶらする事にしている。
お気に入りのひんやりとした日陰で休んだり、気持ちのいい日向でひなたぼっこしたり。
多分、宿の他のスライム達よりも、ごくごく普通のスライムとして生きているんだろうなと思う。
いや……今はちょっとだけ、普通じゃないのかな。
アタシは以前、特に動かず、特に何も考えず、特に何も分からないまま生きていた。
『本来』のスライムは、それが普通だったんだと思う。
それはアタシだけじゃなく、ルーもそうだった。他のスライムもそうだった。
変化があったのは、ついこの間だ。
アタシはどうやら、ゴブリンに『誘拐』というものをされてしまったらしい。
生まれ育った森から、どこか暗い所へ連れていかれた。
そこでレイ君と出会い、他の沢山のスライムと出会い、そしてその後、メルティと出会った。
レイ君の持つ知識と、メルティの持ついろいろなものを、交じり合いで手に入れた。
自我とか、思考力とか、感情とか。
それでアタシは、『アタシ』になった。
交じり合ったのは、アタシだけじゃない。
誘拐されたのは、この近辺のスライム達みんながそうだ。
みんな一緒のところに連れていかれ、みんな一緒にメルティと混じり、みんな一緒の存在になった。
ただ、完全同化しているルーとは違い、同化はしていないアタシ達は、メルティとのリンクが切れた後、それぞれの自我のようなものが芽生えている。
区別らしい区別が無かったスライムが、それぞれ別の人生を生きていることを実感しながら生きている。
アタシはどうやら人間でいう所の『絆』というものの結びつきが強いルーを姉妹だと感じ、その縁で宿屋に出入りしている。
スライムのようで普通のスライムではない、でもどちらかと言えばやっぱり普通のスライムの、アタシ。
まあ、のんびり生きていると思う。
街を散歩していると、時々別のスライムと出会う。
街のスライムもまた、その何割かが誘拐によりメルティと交じり合い、残りの何割かもまたそのスライムと交じり合い、今ではほぼアタシとそんなに変わらない。
他のスライムと出会うと、アタシはそのスライムと接触する。
人間でいう所の井戸端会議のように、アタシ達は情報を交換する。
――西地区の人間さんに、赤ちゃんがうまれたんだって。
――新しいパン屋さんが出来たみたい。いい人みたいだけど、ちょっと怖いかも。
――昨日ギルドで、人間がゴブリンに変身していたらしいよ。
――中央地区で、サツジンジケンっていうのが起きたらしいよ。でも人間達はまだ知らないみたい。
――あそこの奥さんと旦那さん、喧嘩していたらしいよ。
――白い犬がもこもこで可愛い。
――女の人のおっぱいというものは、ぽよぽよしてて気持ちいいらしいよ。
人間の会話と違い、スライムの情報交換は一瞬で行われる。そのぶん情報交換量も多い。
おかげで、街の中の色々な事を、スライム達は知っている。
まあでも、ごくごく普通のスライムのアタシには、人間の街のあれこれはあんまり関係が無いけど。
内容もよく分かんないけどね。人間の世界って特に複雑だから。
まあ、スライム達とのお話は楽しいよ。
アタシは多分、今後もごく普通のスライムとして生きていくんだろうな。
ルーみたいなスライム娘としての生活も、楽しそうではあるんだけど。
でも、アタシはモンスターと戦ったりとかは御免だな。
ごくごく普通のスライムとして、今後も生きていきたいと思う。
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「ん……あれ、レイ君?」
本を読んでいると、眠っていたメルティが起き上がった。
おでこに乗ったまま寝てしまったアオを起こさないようそっとテーブルに乗せ、体を起こし、レイに話しかけてくる。
――もう大丈夫なのかい?
ジブンがそう聞くと、
「うん、熱は下がったみたい」
メルティは、そう答えた。
――全く、人間には病気というものがあるんだから、気を付けなきゃだめだよ。
「そうだね……ゴメン」
メルティはちょっと気まずそうに笑った。
時間はもうすっかり夜。
ジブンは起きたばかりのメルティと、少し会話に付き合う。
「またオパールさんの本を読んでいるの?」
――まあ、特にすることも無いからね。
「こんな難しい本を読めるだなんて、レイ君は頭がいいね。いつも本を読んでいるよね」
――あのね、これはオパールさんが君のために用意してくれた本なんだよ。君ももうちょっと読むべきだよ。
「うっ……ま、まあそうなんだけど……私には難しくて……」
――まあ、難しいと言っても、この間『オパールさんの研究データ』が入ったジブンと混じる事で、君の基礎読書力も上がっているはずだ。前よりは突っかからずに読めるようになっているはずだよ。
「え、そうなの?」
――そうさ。君は今回、記憶最適化の不具合を起こしてしまったみたいだけどさ。それも悪い事ばかりじゃない。いろいろな恩恵があったはずだ。
「恩恵……」
――そうさ。ほら、現に君とジブンは、この程度の距離なら、接触無しでも会話できるようになっただろう? 自分自身では気が付いていない能力強化もまだあるはずだ。それを知るためにも、もっと本での学習はした方がいいよ。
「そう……だね……」
――知識は力さ。必ず君の助けになる。
まあ、僕が接触で君に知識を伝達しても、良いと言えばいいんだけどさ。
でも、接触伝達より、自分自身で読んで吸収した知識のほうが、最適化時の欠損が少なくて済むはずだ。
「うん、分かった。いつもアドバイスありがとうね、レイ君」
――い、いや、そ、それほどでも……。
ま、まあ、最近忙しかったみたいだし、今日は君も病み上がりみたいだから、今日のところは勘弁してあげるよ。
さ、晩御飯に行っておいで。
ルーもミカも帰ってきているし、ミドもザジちゃんと一緒に帰ってきているよ。心配していたみたいだし、顔をだしてあげて。
「ありがと、レイ君」
そう言うとメルティは、ちょうど目覚めたばかりのアオと一緒に、下の食堂へ向かっていった。
ジブンもまた、スライム。しかし、他のみんなとは違う。
他のスライム達の思考や知識は、この間混じった際、大なり小なりメルティがベースになっている。
対して、自分はメルティよりも、オパールの比率が特に大きい。
一番最初に混じったのが、オパールが実験に使っていた粘着ボールだったせいだろう。
性格もまた、メルティの部分はほとんどなく、オパールのものがベースになっている。
メルティにはよく「レイ君ってオパールさんみたいだね」と言われる。
実際、それは間違ってはいないのだろう。
がしかし、メルティが知るオパールの部分もまた、ほんの僅かだ。
修行期間中、オパールは終始メルティに優しい態度で接していた。
しかし、それはオパールの一面に過ぎない。
修行の家ではあまり見せる機会の無かった、オパールの学者的な一面などは知らない。
粘着ボールに対して実験を行っていたのはそちらの学者的な面が多かったので、ジブンの性格はそれがベースになっている。
強いて言うなら、ザジちゃん誘拐事件の際、黒幕の男にメルティが論破していた際に顕出したあの性格が近いかと思う。
とはいえ、ジブンにもスライム的な一面はある。
オパールは、自分のその知識を大衆に知らしめる事を喜びとしていた。
事実この世界には、オパールが広めたものが少なからずある。
対してジブンは、人間達や他のスライムに広めるよりも、己が知識欲に従ってただただ知識を得ているに過ぎない。
どちらかというと、日がな一日散歩や日向ぼっこしているミカに親近感が沸く。
まあ、人間と違って、スライムにあれこれ高度な知識を与えてしまうのは、それはそれで人間社会に混乱をもたらしてしまいそうだというのもあるが。
下からザジちゃんの楽しそうな声が聞こえる。
どうやら久しぶりにメルティと沢山遊んで嬉しいようだ。
ここからでは感じ取れないが、メルティや他のスライムも同じだろう。
ただの森の一塊のスライムだったジブンが、随分と様変わりしてしまったなと、つくづく思う。
まあ、変化量で言えば、アオ達同化した3匹のほうが大きいのだが。
アオ達3匹は、メルティと同化した。
メルティ以外にも、瀕死時に同化して仲間を助けるスライムがいないわけでは無い。
しかし、アオ達のそれは他のスライムの同化とはかなり異なっている。
普通は同化の際に、意識も思考も精神も完全に交じり合い、完全にひとつの状態になる。
がしかし、アオ達には明確な個性がある。本来ならばあり得ない事だ。
メルティが時々人間に戻れるからなのか。
あるいは、メルティが、アオ達がそれを望んでいるからなのか。
明確な理由は分からず推測するしかできないが……まあとにかく、メルティと3匹は、現時点ではこの世に他に例を見ない『スライム娘』だ。
このままメルティ達を見守って、『スライム娘』が今後どういう人生を送るのか。
それを見届けるのも悪くはない。
さて、メルティ達は、いったいどんな明日を過ごすのかな……。




