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煙の王  作者: 稲田堤
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第1話 ライドの誕生

私はアリアット大陸南部に位置し、周囲を3国に囲まれた小国「ラナール国」の「カーチス領」の「ローエン村」に生まれた。


ラナール国は大きな軍事力は有していないものの、周囲3国の中継地点にあたることから交易で栄えている国だ。

この交易路であるラナール国が無くなると周囲の国々への衣食住をはじめ軍備への影響が大きいため、周囲3国がラナール国を保護するような体制が敷かれていた。


私が生まれたローエン村はラナール国の南西部に位置し、カーチス・マートン男爵がおさめている領地にある。

カーチス領はお世辞にも大きい領地ではないが、カーチス男爵は領民に優しく、そこの領民もまた彼を敬っていた。



私の両親の話をしよう。

父はアリード、母はラーシャという名前だ。

父は木こりを生業とし、母は自宅で内職をしつつ家事を行うような一般的な女性である。


生まれた時の記憶は無いので両親から聞いた話にはなるが、私は冬の強い吹雪の日に生まれたそうだ。

難産であったということは聞いており、産気づいてから生まれるまで半日かかったらしい。


幸いなことに産後は母子ともに健康ではあったが、一つ問題があった。

それは私に精霊の加護が無いのではないか、という問題だ。


この世界に住まう人の大半は何かしらの精霊の加護を持っており、加護の有無は背中に現れる痣で判別するそうだ。

父で言えば風、母で言えば火の精霊の加護をもっている。

加護は生まれた時に既に保有している場合もあれば後天的に保有する場合もあり、後者はとても稀なケースなのだ。

また、後者の場合は特別な加護を得るケースが多いが、加護を得られないということもある。


この世界で加護を持たない者は「もたざる者」と呼ばれ、将来的な出世が望めないという辛い立場におかれるようだ。


つまり、生まれてすぐに加護を有していないことに対しては喜びと不安の両方があるということになるが、その話を母に聞いた時の母からの一言は今でも覚えている。


「加護があってもなくても、あなたがあなたであることは変わらないのよ?」

「少し大変かもしれないけど、あなたがあなたらしく生きていけるなら私は何も気にしないわ」


この話を聞いた時はまだ幼かったため強く感情を揺さぶられることもなかったが、大人になって思い返すと目頭にくるものがある。


なお、後天的に加護を得られる場合は5歳を超えたくらいに痣が現れるため、当時はとりあえず目の前の幸せに酔いしれた、と両親からは聞いている。


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