第ゼロ話
時はアリアット歴986年
大国がひしめき、長きにわたり戦国の乱世が続くアリアット大陸は1人の男の手によって統一された。
その男の名は「ライド・ローエン・スモーク」
人はその名を「煙の王」とも呼ぶ。
ライドはいつものように朝食をとっていると、お付きのメイド「シア」からこんなことを言われた。
「ライド様、後世のためにロイド様の半生を記してみてはいかがでしょうか?」
いつもは愛娘や愛猫の話ばかりのシアから出てくる言葉ではなかったためライドは驚いた。
「唐突であるな」
「して、どうしてそのように考えた?」
シアは無邪気な笑顔で言い返した。
「この平和がずっと続いたらいいなと思いましたもので…!」
ライドは朝食を食べ終えナイフとフォークをテーブルに置き、天井を見上げながら答えた。
「なるほど」
「今に至るまで様々な経験をしたが物書きはしたことがないな」
シアは笑顔のまま答えた。
「あら、ライド様でも経験されたことがないこともあるんですね!」
「それじゃ楽しみにしています…ね!」
そういうとシアは朝食の食器を片付け、部屋を出て行った。
ライドはおもむろに立ち上がり窓から外を眺めてつぶやいた。
「…それもまた良いものか」
辺境に生まれ、持たざる者と呼ばれた彼がいかにして乱世を統一したのか。
これは煙の王と呼ばれたライドの波乱な半生を追う物語である。