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1-3 一日目の終

 扉を開くと目の前には小さな妖精らしき生き物が浮いていた。いや、正確には飛んでいる? のか

 体長は30センチあまり、背中にはきれいな水色の羽、体は人間と変わらずJSのような体型をしている(なぜ知っている)。構造に関しても手足、頭、胴、の3つでできている。変わった所といえばこれまた容姿淡麗なところだろうか。どうやらハルヤは異世界では美少女運が強いらしい。


「ジロジロ見るのやめてもらっていいかしら? 吹き飛ばすのよ?」


ついでに毒舌運も強いらしい


「あ、ごめんごめん、それでなにか用かな?」


「改めまして、私精霊をやっております、ユルと申します。スミラ様のご要望により、今後ハルヤ様もといハルヤの面倒を見ることになった、よろしくなのよ」


「だんだん言葉遣いが荒れてきてんな」


「ハルヤについてはスミラ様からお聞きしてたから大体人柄はわかる、何よりしょぼそうな雰囲気が隠せてないのよ」


「ぐっ....」


しょぼい、ハルヤが現実世界において一番の友だったといっても過言ではない。なにをやるにしてもしょぼく、長所が薄い。


「そ、そういや面倒を見るとかいってたけど具体的にはなにをしてもらえるんだ?」


「そうね、基本的にはともに行動することになるけど、まずスキルチェック、そしてダンジョン攻略の手助けをすることなのよ」


「スキルチェック?」


「そんなことも知らないの? 少なからず誰しもスキルを持っているの、確認は精霊と専門の器具でしか確認できないから精霊の私がそれを確認させてもらうわ」


スキルというのは異世界転生もののテンプレ中のテンプレ、まさか実在するとはハルヤは思ってもいなかった。


「さっきから煽りが多いよ!?」


「あら、不満を持たれるなんて心外だわ、無知なのは事実なのよ」


この世界においてハルヤは無知というレベルではない。地形、情勢、常識、文字全てにおいて知識不足である。転生したばかりでそのへんは多めに見てもらいたい所だが、関わる人々はそんな事情なんて知らない。かといって事情を説明したらなにをされるかわからない。

 

 異世界の生物として売られるかもしれない、差別され苦しい生活、いや殺されるかもしれない。そんなデメリットと、今の待遇を鑑みると ”言わない” という選択肢が最善であろう。


「無知は認めるから説明お願いできるか?」


ユルはまるでゴミを見てるかのような見下した目をして、「はぁ....」と多めにため息をしてからこう続けた、


「スキルには4種類属性があって水、火、土、風のどれかがランダムに自分に振り分けられるのよ。その4つの他にも治癒、目くらまし、テレポートとかサブスキルが何個か付くわ。優秀な者ほどサブスキルが充実しているのよ。」


「おぉ、ロマンあふれるな!!」


「サブスキルはある程度スキルとバランスが取られているけど、経験値によって変化があるから自分の努力次第って感じなのよ」


「じゃあ確認するから肩を貸してもらえるかしら」


ユルは、ハルヤの肩を掴み目を閉じた。ユルの意識が肩から入ってくる気配を感じた。

 体内がものすごい違和感に襲われた。ユルの意識が体中を駆け巡っている感覚があり、とても愉快をは言えない状況が続いた。

 

2分ほどたつとユルは肩から手を離した。


「どうだった???」


ハルヤは、ご褒美をもらう前の犬の如く目をキラキラさせながらユルからの結果報告を待った。


「結論からいうとあなたのスキルはとても偏っているのよ」


ハルヤのスキル

属性 なし

サブスキル 短距離テレポート ライトソードの使い手 ???


”ピカッ”


「属性なしだって?!何かの間違いじゃないのか?」


「これであってるのよ、」


先程、スキルのロマンを知ったハルヤは自分のスキルにとてつもない期待をしていたため、その反動は大きくかなり落ち込んだ。そんなハルヤを救ったのはもう一つのロマン、ソウルソードである。


 剣といえば男からは銃に匹敵するほどの人気を誇っている。無論ロマンに対する抵抗力がないハルヤには理想のスキルと言える。


「ライトソードの使い手ってなんだ?」


「本当になにも知らないのね、文字通りよ、ライトソードっていうのは光のように輝かしい剣。光のエネルギーが含まれているからかなり強力な武器なのよ」


「おぉ!!でもなんでそんな強い武器がサブスキルなんだ?」


「魔法のほうが使い勝手がいいからなのよ、接近戦でしか使えないもの」


異世界ならではのデメリットを知ったハルヤだったが、戦闘センスに関してはまだ未知数なため期待を捨てなかった。


「そのライトソードはどこで手に入れるんだ」


「一般的なダンジョンで手に入るわよ」


「ところで一つ???があるけどどういうこと?」


「よくわからないけど、このユルの力を持ってしてもわからないのよ」


「そんなあ....」


「まあ安心しなさい、他のスキルのことを考えるとどうせ大したスキルじゃないのよ」


「残念だな」


ハルヤの物分りが過去一で良いのは、ユルに説得力があったからであろう。属性なしに加えサブスキル2つが低レベルであることは自分でも重々理解していた。


「じゃあ早速ソウルソード、いやハルヤスペシャルを手に入れるためダンジョンに行こうぜ!」


「気持ち悪い名前をつけるんじゃないわよ、悪いけど普通のダンジョンは誓約にはないから行かないわよ」


ユルは誓約には切実だが基本的には家――もとい屋敷にいたいタイプらしい。俗に言うインドアと言うやつだ。


”コンコン” また扉を叩く音が聞こえた。


扉を開けると一人の男と一人の女が立っていた。どうやらこの屋敷の使用人のようだ。服装は二人共しっかりとしており、いかにも使用人という佇まいだった。男の方は背丈がとても大きく、体もがっしりの限度を超えている。女の方は男の方とは対象的に背丈は小さく手足も細い、だが出るところはきっちり出ている。


使用人の観察をしていると女の使用人の方が口を開いた。


「タースト様がお帰りになられました、ユル様、及びお客様をお呼びです、至急タースト様のお部屋へ」


ハルヤは使用人に案内されるままにターストというものの部屋へ向かった。


部屋に入ると中には大きなソファに座った緑髪の男とスミラがいた。


「ようこそ、私がこの屋敷の領主のターストだよ。話はスミラから聞いているよ、よろしくねハルヤくん」


ターストは緑の髪、緑の服、緑の帽子、全てが緑だった。とてもやさしそうな顔立ちをしており、思わず南無阿弥陀仏を唱えそうになると言ったら過言だ。いってしまえばそこそこ優しそうというところか。ここまで曖昧な表現になるのはハルヤ同様、この男にも特徴がないからである。色以外、喋り方、動き、顔立ち、身長、全てにおいて特徴がない。ない同士仲良くできそうだ。


「よろしくおねがいします、あのこちらの方々は....?」


ハルヤは使用人について訪ねた。


「申し遅れました私、この屋敷で使用人をやらしていただいております、ロゼと申します」


「....グリス..です......」


”ピカッ”


丁寧な挨拶をしたロゼに比べ、グリスは巨大な体格には似合わない小声で挨拶をした。


「グリスは他人と接することを苦手としています、代わってロゼがお詫びします」


――そういうことか、にしてもこの巨体が目に入ると消極的な態度が違和感でしかないな。


グリスは体格に関していえば、文句なし、身長は軽く2m超え、さっきから視界に入る大木のような腕っぷしがグリスの最大の特徴だ。服装も一応使用人らしく正装をしているのだが、筋肉のせいか冒険者あたりの者にしか見えない。


「もう聞いてると思うけどハルヤくんにはミッションをやってもらいたい。私からはダンジョンについて」説明させてもらう。」


――スミラが説明があるって遠回しな言い方をしてたのは説明をするのがターストだったからか。


「まず、ダンジョンは3段階あって2段目までは普通なダンジョンで、合計20層ある。そのうち5層が迷宮の極楽と呼ばれる安全地帯になっている。敵もそこまで強くないはずだから、順調にいけると思うよ。だけど問題は三段目なんだ」


「三段目はどうなっているんだ」


「三段目は挑戦する人によって敵が変わるんだ。敵は自分の一番大切な存在の容姿に化け、攻撃してくる。」


「そんな....」


敵が自分の大切な存在と同じ見た目をしているということは、その人を痛めつけ、殺さなければならないのだ。そんな残酷なことができるのか。敵はダンジョン最終ボスということで強く、複数回攻撃、あるいは自分が大切な存在に殺されるかもしれないという。


「そのモンスターに殺された人はどうなるなるんだ?」


「死にはしないらしいが、全員が絶望により記憶を失い、後遺症が残った状態になっている」


「なんでそんなダンジョンに行く必要があるんだ?」


まったくもってそのとおりだ。人を廃人と変わらせるようなダンジョンに、わざわざ行くなんて自殺行為同然だ。


「あのダンジョンはもともと人で出来てるんだ。300年前、人々はモンスターに支配されていた。モンスターたちは、人を捕まえ、硬質化を行うことで建物を作っていた。当時の最高建造物があのダンジョンだった。しかし突然、ダンジョンへと全てのモンスターが移動した。当時の人々はチャンスだと思い、魔法で封印をしたんだ。その魔法は中からの干渉ができないようになっているため、外に出られないモンスターは食糧不足に陥り共食いを始め、ダンジョン内でモンスター同士による戦いが始まった残ったのがダンジョンのボスとなり、少数のモンスターを支配している」


”ピカッ”


「要するに、モンスターはもとは外にいたってことか?」


「そういうことになるね、モンスターがダンジョン内に移動したり理由は資料がないからわからないけど。」


この世界のダンジョンはここに来る時それらしいものを見たが、ダンジョンとしては珍しく上空にそびえ立つようにしてできている。


――あれ自体、昔は今ある塔と変わらないただの建物だったのか。


「その話とミッションのなにが関係してるんだ?」


「魔法で封印したって説明したと思うんだけど、その魔法の効果が300年ぐらいしか続かないんだよねぇ」


タートルがあまりにもサラッというためハルヤは一瞬冗談かと錯覚した。


「つまり、魔法が切れる前にボスを倒して危険を取り除いておこうということか」


「そういうこと、他に質問あったりする?」


「質問じゃないんだけど、ミッションの期限に猶予はあるか?」


「猶予?期限自体は今年中、あと10ヶ月ほどあるけどなにかやりたいことでもあるのかい?」


どうやらこの世界の時間軸は現実世界と変わりはないらしく、1年は365日の12ヶ月、一日は60分が24回の24時間。時計まで存在している。


「やりたいことというよりは、少し整理する時間がほしいんだ、急なことだったし」


タートルにしてみれば、ハルヤはこの世界の人間に無理を言ってるだけに過ぎないが、ハルヤ本人はそれに異世界転生がトッピングされる。いくら要領の良い人であっても状況整理には時間がいる。


「確かにそうだね、一人だとあれだしロゼを休みにさせて一緒に行動させよう。ロゼ、頼めるかい?」


「了解いたしました」



++++++++++++++


その夜


朝食を済ましたハルヤは自分の部屋でペンを走らせていた。記録用の日記をつけていたのだ。なにもわからない異世界でわかったことを記しておくためだ。今日はダンジョンについて書いた。


”コンコン” 日記を書いていると今日3度目のノックが聞こえた。


扉の前には荷物を持ったロゼが立っていた。ロゼは先程まで来ていた使用人用の正装ではなく、部屋着と分類される比較的軽装でやってきた。


「どうしたんだ?」


部屋に招き入れるとハルヤは尋ねた。


「今日から同じ部屋で住むことになりました。改めましてよろしくおねがいします」


――は?............



ロゼは、動揺しているハルヤとは対象的に落ち着いた様子だがこのような状況に慣れているというわけでもなさそうだった。


「いやいやいやいや、ベッド一つしかないよ?俺男だよ?他に部屋あるよ?」


「結局行動をともにするのですから部屋は同じのほうが都合が良いと思いまして....寝床に関しても私は構いません」


問題はそんなことではない。ハルヤは思春期真っ盛りの18歳。よく見ればロゼもスミラほどではないがかなり整った容姿をしている。そんな彼女と同部屋、ましてや同じベッドで寝るなど、いつまで理性が持つかわからない。やましいことがなかったとして、緊張により通常通り寝られる気がしない。だが、


「た、確かに効率的だしそうしたほうがいいかもな!!今日はもう遅いし、行動計画は明日やろう明日。おやすみ!!」


ハルヤはそそくさとベッドに潜り、目を閉じた。目を閉じ、視界から入る情報を遮断したせいか、ロゼの気配が敏感に伝わる。



ベッドに入り2分ほどたつと部屋の明かりが消え、ロゼもベッドへ潜った。ビッグサイズのベッドとはいえ、一人用に二人で寝るとなるとある程度の密着感が生まれる。

 最後に異性と寝たのはいつごろだろうか、覚えているのは小3の秋。ハルヤは小3まで自分の部屋がなく、睡眠時は家族と同部屋で寝ていた。小3の秋頃に引っ越した移住先には自分の部屋があったため、そこからは一人で寝るようになった。異性=母親のハルヤにとってはそれが最後である。


「ハルヤさん起きていますか?」


まるで修学旅行の夜に友達から言われる「おい、まだ起きてるか」のノリでロゼにそう言われた。


「ああ、起きてるよ」


思わず返事をしてしまった。


「困ったら、ロゼを頼ってくださいね、その時は微力ながらお手伝いさせてもらいます」


なぜ唐突にそんなことを言い出したのかハルヤにはわからなかったが、ロゼが言いたいことはなんとなくわかった気がした。

 この屋敷に来て、ロゼとのまともな会話はこれが始めてではあるが、ハルヤの様子が周りと違ったのを察してくれていたようだ。


「それは頼もしいな、お言葉に甘えてそうさせてもらうよ」


こうして長く、濃かった、激動の一日目が終わった。




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