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4 シュークリームツリー

 まるでその声を聞いていたように、車両のとびらが開いて、ガタンガタンと音をたてながら、ワゴンが入ってきました。

 ワゴンの持ち手のところには、サンタさんのような赤い帽子をかぶったハトが一匹とまっています。くびのところが緑色とむらさき色のハトです。

 ハトは、言いました。

「クルックルッ ホットドリンクとおかしを、売ってるよ」

 ふしぎなことに、誰もワゴンを押していないのに、ワゴンは通路を進んでいき、トモロウと子カラスの横でとまりました。

「ちょうどいいね。なにか食べ物をもらおうよ」

と、子カラスは言いました。

「なにがあるんだろう」 

 トモロウはワゴンの中を見ました。いくつかスナック菓子とパンのふくろが見えます。

「ぼく、ハトの卵がたべたいな」

と、子カラスが言うと、車内販売のハトは、とてもこわい目でにらんで言いました。

「そんなものはありません」

 トモロウは、ワゴンの中の食べ物を見て、子カラスにおしえてあげました。

「ポップコーン、ポテトチップス、クッキー、シュークリーム……」

「ぼく、シュークリームがたべたいな」

と、子カラスは言いました。

 ハトは言いました。

「シュークリームツリーがおすすめだよ」

「それじゃ、それください」

 トモロウは、ポケットからおさいふをとりだしました。

 トモロウが500円玉をとりだすと、ハトは、不満そうにクビを横にふりました。

 子カラスは言いました。

「そんなキラキラしてないのじゃ、だめだよ。ほら、こっちの方がキラキラしているよ」

と言って、子カラスは、トモロウのおさいふの中から、きれいな5円玉を取り出しました。

「そっちのほうが、キラキラしてますね。グーッ」

と言って、ハトはまんぞくそうにうなづきました。

 ハトは、5円玉を受けとると、まず、テーブルの上に大きなお皿をおきました。

 それから、小さなシュークリームがたくさん入ったふくろをとりだし、お皿のうえに、どんどんとシュークリームをおいていきました。

 すぐに、お皿の上には、シュークリームのクリスマスツリーができあがりました。

 ハトは、シュークリームのツリーに、かざりのおかしをつけおえると、トモロウたちにたずねました。

「おのみものは? クリーム入りミルクティー、マシュマロ入りホットココア、シナモン入りホットオレンジジュース、エッグノッグ。どれもおいしいよ」

 トモロウは、ココアをおねがいし、おさいふの中から、なるべくキラキラしたお金をみつけて、わたしました。

 ハトはワゴンの上の小さなマシンのボタンを押しました。

 数秒すると、音がなり、飲み物がはいった紙コップが出てきました。

 ハトは、ひょいっとカップの中にマシュマロをいれ、トモロウにあったかいココアの入ったカップをさしだしました。

 ココアの上にはクリームが雪のようにのっていて、その上にマシュマロとチョコでできた雪だるまがねころんでいました。

 子カラスはエッグノッグという飲み物が飲みたいと言うので、トモロウは、もう一枚、なるべくきれいなコインを見つけて、ハトにわたしました。

 それはあんまりキラキラしていなかったので、ハトはちょっとしぶい顔をしましたが、

「クリスマスだから、とくべつだよ」

と言って、子カラスに、エッグノッグをくれました。


 トモロウと子カラスは、シュークリームをどんどん、たべました。

「エッグノッグを一口のんでいいよ」

と、子カラスが言ってくれたので、トモロウは一口だけ、エッグノッグの味見をして、子カラスにかえしました。

 それから、子カラスは、テーブルの上でエッグノッグをつついたり、シュークリームをつついたり、いそがしくしていました。

 子カラスの黒いくちばしと顔には、すっかり白いクリームがついています。

 トモロウと子カラスが、あらかたシュークリームを食べ終えた時、車両のとびらが、また、開きました。

 今度やってきたのは、子ネコたちでした。

「あいつらも、のってたのか」

と、子カラスは言いました。

 子ネコたちは、ミャーミャー言いながら、あちこち走っていましたが、一匹の子ネコが、トモロウたちの食べ物にきがつくと、3匹いた子ネコたちが、みんなトモロウたちのテーブルにやってきました。

「ちょっと味見をさせてよ」

と、子ネコは言いました。

「やだよ」

と、子カラスは言いました。

「味見させろよ」

と言って、子ネコが一匹、テーブルの上にあがると、あっという間にシュークリームをくわえて、走りさっていきました。

 もう一匹の子ネコが、子カラスのエッグノッグを飲もうとして、子カラスとケンカになり、そのいきおいで、カップはたおれてしまいました。

 子ネコたちは、テーブルにこぼれたエッグノッグをおいしそうになめました。

 子カラスはおこって、クァークァー鳴き、子ネコをつつきました。

 すると、2匹の子ネコたちは、それぞれシュークリームをくわえてテーブルから走りさっていきました。

 お皿のうえには、もうシュークリームはありません。

 かなしそうにエッグノッグがこぼれたテーブルをつつく子カラスに、トモロウは言いました。

「ぼくのココアをあげるよ」

「ありがとう。でも、ココアは毒だって母ちゃんが言ってたから」

と、子カラスは、かなしそうに言いました。


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