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悪者を罰することに意味は無い

*個人の感想です



勧善懲悪という言葉が嫌いだ。何故己は間違わない、間違っていないとそう無邪気に信じられるのか。己が悪ではないと思っているのか。己が善である、正義であると何故断言できるのか。

現実には、悪を論じる意味は無い。悪を定義する意味などない。何故なら、悪を成す者は、それを悪だと思っていないか、それが悪であることを気にしないからだ。あるいは、それを悪と断じられないギリギリのラインを攻めてくるからだ。勧善懲悪など、現実にはない。

お前も知っているだろう?

人が悪を裁こうとしてはならない。何故なら、己で悪を裁こうとする人間はいつか、悪ではないものを悪と弾劾し迫害するものになるからだ。己が正しいという確信は人を先鋭化する。どんどん思想を過激にする。他者に攻撃することへの躊躇いをなくす。そうなれば、それは"悪"ではないのか?ミイラ取りがミイラになる、ということだ。

人は、間違うものだ。だから、悪を成したものを迫害することを当然と考えてはならない。間違えて悪を成したのかもしれない、という意味でもあるし、悪を成していると思ったのが間違いかもしれない、という意味でもある。お前が悪と断じたものが、本当に悪であると誰が保証できるのか。

お前は己に問い続けなければならない。己は本当に正しいのかと。悪を憎むというのなら、なおさら。それが己の独善か好き嫌いなのではないかと。己の嫌いなものを悪と呼んでいるだけなのではないかと。

悪者を罰することに意味は無い。罰して改心するものなら、罰されずとも改心する。改心しないものは罰されてもそのことを恨むだけだ。表面的な行動を縛るだけなら罰則は有効かもしれないが、見つからなければ、罰されなければいいと思うものが出てくる。不毛だ。人は所詮完璧にはなれない。

悪事を成したものであっても、迫害してはいけない。どんな理由があっても、迫害は迫害だ。容認すれば、罪のないものが迫害されることに繋がる。義憤など、燃えるゴミとして捨ててしまえ。罪に憤るより、迫害を受けたものに手を差し伸べることの方が大切だ。そして、悪を迫害することは被害者に手を差し伸べることではない。己の正義に酔っているだけだ。

お前は全知全能か?違うのなら、他者を断じてはならない。

人は愚かだ。人間である俺も、当然愚かだ。だが、俺は己が愚かであることを識っているから、己の行動に歯止めをかけることができる。お前はどうだ。

この国には、たとえ悪人であっても基本的人権を奪ってよいという法はない。全ての人間は最低限文化的な生活を、幸せに送る権利がある。全てと言ったら全てだ。例外はない。全ての人は、その人格を尊重され、幸福になる権利があり、それを迫害することが許される人間はいない。全てだ。

お前もだよ。

神は人を区別しない。神は人ではないからだ。見分けがつかないのかもしれない。人が他の動物の見分けがつかないように。親しいものがわかるのは当然だ。俺は親しくないものの話をしている。

善悪そのものは存在するだろう。それは否定しない。だが、人はそれを議論し運用するには愚かに過ぎる。利己的に過ぎる。悪意的に過ぎる。

人には相手の心を本当に知る力はない。推測、すべては推論に過ぎない。己自身すら正しく把握できないところがあるものを、他者が完璧にわかるわけがない。ただ、経験則で近似値の出る場合もある。

人間がもっと聡明で善良な知的生命体であれば、そもそも悪について語る必要はない。語らざるとも自明のものであり、そもそも意図して罪を犯すことはないからだ。

悪を定義することに意味は無い。定義された悪は抜け道を作る。not itを悪ではないと言い訳させる。悪とはそのように固定的なものではない。流動的なものだ。故にこそ、人の手に負えるものではない。

お前もだ。

正義もそうだ。一言で語れるものではないし、語ってはならない。善でないものが悪とは限らない。それらは二元論で語るべきものではない。それはもっと、スペクトラム的なものだ。人の独断で切り分けられるものではない。具体的な話をすれば、前提条件を確定した上での限定的な話しかできない。

お前は何故己が悪ではないと言い切れるのか。

俺は己が今、悪ではない、これから後も悪にはならないと言い切ることはできない。そういうことだ。




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