74、エリィハーレムへの帰還ですわ
すっごい間があきましたね。なんかごめんなさい。
あの後、ミリアンナ嬢が泣き顔のアイナ嬢にハンカチを渡してアイナ嬢がミリアンナ嬢の葉っぱを取るというほのぼの茶番タイムを挟んで、3人で手を挙げる。
キラキラした光が足元を照らし、目の前が真っ白になると急に体に衝撃がやってきた。
「リズ!」
「うげぇっ!」
「おいそこの過保護王子、エリィが死にかけてるから離してやれ」
「えりゅぃしゃまぁぁぁ!イザベリュはっ!イザベリュは心配しておりぃまじだぁぁぁぁぁぁ!」
「エリィおかえり、あとイヴちゃん、そのままだとエリィが涙と鼻水だらけになるから抱きつかないでね?」
「……」
目を開ける前に衝突してきたのはレオン様だ。遠慮なく背中と腰をガッチリホールドしている上に、ものすっごいいい匂いがする。ただ勢いが凄すぎて口から内蔵がこんにちはしかけたけど。
それを呆れたように笑いながら止めるのはジル。多分本気で止める気ないから遠目にやる気ない声をかけているだけだ。コノヤロウ、お前のせいで私は命の危機だってのに。
そして涙と鼻水でお年頃のレディらしからぬ顔をして、リューに羽交い締めにされてジタバタしているのがイヴちゃん。……私のことを思ってくれているのは嬉しいが、そこまですると婚約者とか貰いにくいんじゃないだろうか。
その羽交い締めしている張本人リュー、キラキラキラースマイルを向けながらちっちゃい爆弾をしっかりと押さえつけている。ありがとう、君のおかげで私の平和は……レオン様だけに冒されている。
後ろに呆然と突っ立っているのはマーフェディアか?あのオセロカラー、圧迫感で息ができず滲んだ目からもわかりやすい。できればこの状況に引かないでいただきたい。
「あの…………息、ぐるじっ……」
「あぁごめん、でも大丈夫だったかい?何もされてない?」
「えぇ、少し聖女様とお話をしていて……ご心配をおかけしました。報告をしにいきたいのですが、アレックス先生はどこにいら」
「大丈夫だよ、リズは死ぬまで俺の目の届く腕の中にいたらいいんだから、報告ならジオラークに行かせるし」
「は?おい待てよ」
「行くよな?」
「…………わかったよ」
ジルが黒いオーラ全開のレオン様に押され気味に頷いて報告に行ってくれた。なんだろう、標的をジルに変えたから聞き流せない言葉を誤魔化された気がする。
ヤンデレルートなんて聞いてないぞと見上げると、バチリと目があい、レオン様がこれ以上ないくらいに蕩けた顔で笑み、内蔵こんにちは攻撃をされる、という謎の流れを作られた。
これは、もう抵抗しないで時の流れを待つしかないだろう。
「魔龍ガール!聖女様!よかった生きてたんだね!」
「本人の前でなんちゅうことを言ってるんですかあんたは」
しまった、淑女らしからぬ言葉を発してしまった。
と思ったのも束の間、アレックス先生を見た私の顔をレオン様が両手で挟み鼻と鼻がくっつく程に近づけた。色っぽい吐息がかかる。否が応でも顔が熱くなるのがわかった。
「リズ、僕以外見ちゃダァメ」
「…………今すっごいイヴちゃんの気持ちがわかる気がする」
距離感を気にせず、そしてたくさんの人の目も気にせずに早口小声でまくし立てると、遠のきそうな意識を手放さないよう、ガリッと頬の裏側を噛んだ。




