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68、魔女と一緒でよろしくて?


マーフェディアがグループに入って、残るはあと二人。時間もあまり無い上にイヴちゃんもジルもリューも他のグループに誘われていたから、ここからどう動くべきかを考えていると……やはり悪い予想は当たってしまうのだろうか。


「レオンハルト様!ごきげんよう!」

「王太子殿下、メイリーン伯爵令嬢様ご機嫌麗しゅうございます」

「貴女方は……聖女様とミリアンナ侯爵令嬢ですね?」

「まぁ!レオンハルト様はミリアの事も覚えてくださっているのですね?嬉しいわ!」


ハイテンションのアイナ嬢は嬉しそうにいつの間に愛称呼びになったミリアンナ嬢の手を握った。それに比例するようにミリアンナ嬢の顔がかわいらしく赤くなったが、すぐにアイナ嬢は目線をレオン様に戻す。


「レオン様、私達もお仲間に入れてくださいませ!見たところあと二人分余裕があるようですし」

「あら?私もご一緒させていただいてもよろしいのかしら?」


そう首を傾げると、初めてアイナ嬢と目が合った。一応、何度顔を合わせていても、どんなに仲が良くても挨拶ではふわりと腰を落とすのがこの世界での礼儀だ。なのにアイナ嬢は駆け寄ってそのまま言葉だけの挨拶をしたのだ。どういうことだと詰め寄るのは簡単だが、それは彼女の思うツボ。あっという間に悪役令嬢になってしまう。


「エリザベス様、私は嬉しいですわよ!だってお話の中では聖女と魔女はいつも一緒でしょう?」


それは『聖女が魔女を倒す』という意味で一緒なのだろう。ふざけるなと思うが口には出さない。貴族の世界では風体が命だ。ミフィリア聖女変化事件でもそうだったが、ここで世界の中心の聖女に逆らおうものなら『聖乙女教』の信者達に何を言われるかわかったもんじゃない。


「まぁ!そうですわね、聖女様とご一緒できるなんて光栄だわ」


ニコリと笑ってレオン様に向かって小さく頷いた。感触から避けられないことを察知しての決断だ。レオン様も少し驚いた様子だったが、その判断に従って愛想良く彼女達を受け入れた。

受け入れて貰えたアイナ嬢はかわいらしく微笑むとレオン様の隣、私の反対側に立った。ちょうど私とアイナ嬢でレオン様を挟む様な状態になる。どこかで見た構図だ。


「そろそろアレックス先生の所に報告しに行かないと、行きましょうかレオンハルト様!」

「あの……一つよろしいでしょうか、聖女様」

「……えぇ、貴方は?」


レオン様の手を握ろうと宙に浮いたアイナ嬢の腕をそのままに、マーフェディアが小さく発言したのだ。これにかなり驚いた顔をしたのはアイナ嬢。完全に空気と化していた私達、しかもマーフェディアから話しかけられるのは意外だったのだろう。


「聖女様は……婚約者を目の前にこの国の王太子殿下に…………色仕掛けをされているんですか?」


そして、この場の全空気が凍りついた瞬間、私は彼の異名を思い出した。





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