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55、私が何もしないと?


「お待ちください」

「……イヴちゃん?どうしたの?」

「いくらあの女が聖女だからって、あそこまでの無礼を放置しておくのは理解できません!エリィ様ならば黙らせることくらいできるはずですわ!私……エリィ様があの女のせいで無条件で貶されているのが我慢できませんの」


顔を真っ赤にして怒るイヴちゃんは私達に詰め寄る。いつもは自分よりも地位の高い者しかいないこの中で、こんな風に感情を出すなんてしないはずなのに、我慢ならないと怒っている。

ちなみにあの気絶は、感情を出す、にカウントしていない。


「確かに……聖女様も『聖乙女教』も、あのままずっと放置しておくつもりはないわ。でもね、タイミングが悪いのよ」

「タイミング?」

「えぇ、私が魔物と契約を結んでいる時点で私の立場が怪しくなるのはわかっていたの。しかも家は力が強いとはいえ伯爵家。さすがに聖女様を相手取って正面戦闘する度胸はないのよ?今は世界的に飢饉が流行っているわ、いつか聖女様が助けてくれると人々は希望を持っているけど、私達の領地もまずいことになりそうでしょう?そんな大切な時期にふざけてる暇はないわ」

「ですが……」

「それに、『聖乙女教』の拡大も問題の一つだわ。毎度聖女の誕生と共に爆発的に教徒が増加するのだもの、今回も世界的に増加していると思うわ。そうなると本格的に私は世界の敵ね?」


ゲーム内でも、ノーマルエンドの破滅後のエリザベスは世界中の聖乙女教の教徒に、ヒロインにやったことを仕返しされていた描写が匂わされていたし。

考えるべきは貧困と飢饉だし、私はそんなのも聖女様に任せっぱなしなんて癪だしね。


「まぁ、私も何もしないわけではないけどね。手始めに手下を増やそうかしら」

「手下って……お前今度は何企んでんだよ」

「うふふ、楽しみにしといて?お父様にはもう手を回してもらっているの」


入学前にお父様とお兄様にこの話をしておいたからこの後2人と会う予定だ。

私の味方は、レオン様と、ジルと、リューと、イヴちゃん、ミフィリア、そして家族に、使用人達、これくらいしかいない。立場上、ほいほいと友達を作れるわけではないし、そんな友達が信頼できるかもわからないのに、だから今の所これだけしかいないのだろう。

聖女フィーバー……というかバブルというかが世界に浸透する前にやるべき事は沢山だ。手先とやら、いくら増えるのか疑問だけど……


「早く座らないとまずいんじゃない?」


リューが苦笑しながら、ニタニタと笑う私と周りを囲む皆にそう話した。

私もさすがにまずいかと、私の髪を結っているリボンを弄るミフィリアをそのままに、席に着いた。

問答無用でレオン様の隣に座らされたのだけど……




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