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53、私の味方少ないって……


私達……いや、『魔女』らしい私に反抗するミリアンナ嬢に触発されたかのように、空気に徹していた周りの人々もざわめきだした。

「やはり魔女だ」とか「聖女様をお守りする彼女は真の教徒だ」とか勝手に言いやがってですわ。

……さすがにこの言葉は丁寧に誤魔化せないか。


「……面倒だな」

「ジルうるさいわ。そういうのは言葉にしたら余計そう思えてしまうものでしょう?なんとかこの場を離れる方法を考えなさいよ、圧倒的アウェーなんだけど」

「お前俺に無茶振りすんじゃねぇよ、そういうのはエリィちゃん大好きな王太子様に言えっての」

「バカね、これ以上迷惑かけたら私不敬罪で処刑されちゃうわ」


ジルと小声で言い合いをしていると、小さく「そんなことしない……っていうか出来ないんだけど」とレオン様が呟く。

とはいえどうにかしてここを離れるべきだ。もう授業も始まるし、ここにいても私達に有利にはたらくことなんて一切無い。

しかし、ここで逃げると完全に敗者だ、と頭のすみでチラつくけど無視しておこう。挽回のチャンスなんてそこら辺にごろついてるはずだ。

そう考えていると、突然肩の重みがなくなった。


「ミフー」

「ミフィリア!?」


驚いて名を呼んだが、それより先に白い煙が周りを囲んだ。

咳き込む音がこだまし、それをものともせず混乱しながら煙をかき分けてミフィリアを探す。どうして?私達が騒がしく揉めていたから?やっぱり私と一緒にいるのはつまらなかったのだろうか?

ネガティブな思考のままに手探りで探し続けると、少しづつ煙が晴れてきた。


「ミフー!」

「ミフィリア?貴方……」

「…………すごいな」


レオン様の感嘆の声の先は、煙の中に佇む人影に向けられた。

そこに佇んでいたのはミフィリア……ではなく、前代の聖女様だったのだ。美しいミディアムヘアの銀髪に切れ長の青い瞳、その銀髪と対になるように輝く褐色の肌は、歴史書の絵姿や写真にあったまま、336年前に亡くなった聖女様だった。

不機嫌に佇む前代の聖女様は盛大にため息をつくと、私の腰に手を回して悠然と人混みをかき分けて進んでいく。

私を批難しようとしていた『聖乙女教』の教徒達もあっけに取られていた。そりゃそうだ、信仰対象がもう1人出てきて、敵だと思われる私に味方しているのだから。私が進むのを見てか、いち早く正気に戻ったレオン様達も後に続く。

190は少なく見積ってもある高身長で上から威圧しつつ、ミフィリア、もとい前代聖女様は『聖乙女教』の教徒達の視線を一身に受けて平然としている。

そのまま長い廊下を進み、目当ての教室らしい所に着いた。

あの一件があったからか、教室の中はガランとしていた。するとすぐに隣でボフンと煙が上がる。190センチの影がいつの間にか50センチ程の見慣れたぬいぐるみへと変わった。

……なんか不機嫌そうだけど。










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