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50、悪意なき悪役令嬢になりまして


パーティーから帰った時間が早かったからかサラはものすごく目を丸くしていたけど、レオン様がエスコートしているのと私達の顔を見て何も言わずに動いてくれた。

こういう時は優秀な侍女を持ったななんてしみじみ思うけど、だいたい私の世話をしてくれるだけでかなり優秀なんだと思う。

ほら、私って前世の記憶があれやそれしているからかなり変わり者らしいじゃない?

うわ、自分で言って傷ついたわ。


そして今日から授業が始まる。

この学園は、国語とか数学とか地理とかの前世の必須科目の授業はしないらしい。めっちゃ嬉しい。

そのかわり、魔法を専門に学ぶため実技試験がかなりあるのだと。

確かに座学なんて家庭教師にだいたい教えて貰っているし、前世の記憶も相まってか、数学と歴史に関しては免許皆伝しちゃってるし。


「エリィ様!最初の授業は魔法生物らしいですわ」

「魔法生物……って何をするのかしら?」

「ええっと、確か魔物の名前と生態を学ぶらしいですわ。でもまだ初めての授業なので、名前と種類くらいしか習わないのでは?」


「そっか」と返事をして、肩に乗ったまま私の頬に頭を擦り付けているミフィリアの頭を撫でた。やはり私がミフィリアという魔物、しかもドラゴンの最上種だなんだを連れているから好奇の目で見られるのは仕方の無いことなのだろう。

中には私がこの国の指折りの名家であると忘れて、侮蔑の含まれた眼差しを送る者だっている。まぁ、なかなか辛いものがあるがこれが知れたら大変なことになるのは彼らだ。

もし私の両親かお兄様に知られてみろ?絶対一族ごと破滅するからな。


「そういえば席順は適当に決めていいそうなので、エリィ様さえ良ければお近くの席に座らせていただけないでしょうか?」

「もちろんよ?でも、なんで隣じゃないの?隣は嫌だった?」


単純に疑問で、首を傾げてイヴちゃんを見下ろした。

見下ろすなんて悪役感半端ない行為だから怯えさせないか不安だったけど、自分でも分かるくらいに眉尻が下がり、口がすぼめられているはずだ。

多分かなり情けない顔をしているのだろう。

それを見てか、イヴちゃんは何故か顔を真っ赤にしてわなわなと震えると、いきなり顔を真っ青に変えて道にめり込む勢いで頭を下げた。

テラコッタのアンティーク調の可愛らしいレンガ造りの道に少しヒビが入っていますわ。大丈夫なの?


「嫌だなんて!滅相もありません!私にとってはエリィ様と同じ空間同じ空気同じ次元にいるだけでこの世に生を受けた全ての運を使い果たしている……いえこれからの輪廻転生後の人生の分の運すらも使い果たしているのでエリィ様関連の事柄で私に『嫌』という」

「あぁぁぁ!わかったわかったから!そこまで言わなくていいから!とりあえず顔上げてって!」


大路のど真ん中、しかもこれから授業のある校舎の目の前で、伯爵令嬢であるエリザベスとそれに膝まづいている男爵令嬢であるイザベルがいるのだ。

どうしよう、悪い噂がすっごいたちそう。







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