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47、私が魔女ですか


「そんな言い方ないじゃないですか!」


アイナ嬢が涙目のまま私に言葉を返す。

周りからは小動物が意地の悪い肉食動物を威嚇するように見えるのだろう。何人か口を挟もうとやきもきしている人もいる。

小動物の威嚇だなんて、小さい頃の扱いやすさMAXレベルのジルに同じこと思ってたけど今は全然かわいいとか思わないもん。


「私はただ皆様に安心していただこうと思って」

「だからといって私と私のドラゴンを侮辱していい理由にはなりませんわ」


今にもこぼれ落ちそうな程涙を溜めた目で私を睨みあげるように見るアイナ嬢と、冷たく見下ろす可愛げのない私では味方の数だなんて一目瞭然だ。

しかもアイナ嬢は聖女だし、私は魔物と契約しているのだし。

どちらにつきたいかなんて考えるまでもないだろう。


「……エリザベス様はどうしてそこまで魔物を庇うのですか?世界を脅かす魔物を大切にするだなんて、まるで童話の『魔女』のようです」


静かにそうこぼしたアイナ嬢に、周りの人々は大きくざわめく。

それはそうだ、だって童話の魔女は魔物を使って人々を襲う魔力の強い悪役の事だから。

しかも物語の中では聖女様と対立して、最終的に幽閉されるか殺されるキングオブ悪役。いや、クイーンオブ悪役で、私の大先輩である。

なるほど、なかなか的をえてるな。


「聖女様、あまり僕の婚約者をいじめないでください。貴女も周りの目を気にされた方がいいでしょう……」


いつの間にか私の隣にいたレオン様が私の腰に手をまわす。

女性同士のお話に口を挟んではいけないと学んだのか、今まで静かにしていたレオン様が急に近くにいてびっくりしたわ。

まぁ、こんな女同士の口喧嘩みたいなことに男は口を出さないのがいい判断であるけど。

1人他人事のように思う私の隣で、王子らしく腰をかがめてアイナ嬢に小さくそれを伝えた。王子らしいキラキラした笑顔を浮かべているが、目が笑ってない。

もう一度言おう、全く目が笑ってない。


「申し訳ありません。私また失礼なことを……」

「……ごめんなさい、少し1人にしてくださる?」


はぁ、とバレないように息をつく。

もう帰ろうかな、すんごく疲れたんだけど。また顔を青ざめて震えるアイナ嬢を後目にレオン様が気を使って、体調が優れないというそれらしい理由をつけて私をホールの外に連れ出してくれた。

あぁ、ジル達のところに行こうと思ってたのに。まぁこの状況ならば仕方ないだろう。


「聖女と魔女か……」


ぽつりと呟いてまたため息をつく。これ絶対広まるよな、いや別に合ってなくはないからいいんだけど、これ以上私が担ぎあげられるのはちょっと迷惑だわ。

目標は攻略キャラと円満に疎遠になって、優雅に余生を満喫することだと決意していたのに。


「リズ」

「はい?」

「少し話があるんだ」


真剣な顔をしたレオン様が私の目を見てそう言う。

おぉ……ここで?と思ったけど、とりあえず頷いて先を促した。









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