43、メイクアップです
パーティーの準備をするから、とお茶会をお開きにしてフラフラするイヴちゃんと共に女性寮に戻った。
サラに出してもらったのは、レオン様にいただいたフリルの多い真っ赤なドレス。混じりけのない純粋な赤のドレスはかなり派手。
確かに悪役顔の私にはこういう真っ赤だったり、派手なドレスは驚く程似合うのだが、やはりこんな派手派手なものは前世でも見たことない。どこか外国の前衛的なファッショニスタがファッションショーで見せていたものと同じレベルだぞ。
「お嬢様、このドレス贈り物ですからね?くれぐれも食べ物をこぼしたりしないでくださいね?」
「わかってるわよ……さすがに私も16歳なんだし」
長いウェーブのかかったストロベリーブロンドの髪をつむじの辺りで大きなお団子にしてまとめるサラが、本日何度目かの注意をしてきた。
私が不貞腐れたように返事をしても、信用していないのか表情は固まったままだ。きっと彼女の中で私は8歳の時から成長していないのでしょう。
「ミフィリア」
「ミフー?」
私に呼ばれてベッドの上で暇を持て余していたミフィリアが首をかしげて鏡越しにこちらを見た。さっきまで私が付けていた髪留めのリボンで遊んでいたからか、身体中にリボンが巻きついている。
その青いリボンはゲーム内でエリザベスが髪留めにしているものなんだけど。
「貴方もパーティーについてくるのでしょう?」
「ミフー!」
「それじゃあバレないように何かに変身してくれる?さすがにパーティーにその姿の貴方を連れて行けないわ」
食べ物もあるし、また魔物否定派の人に何か言われるのは腹立たしいのだ。私のかわいいペットがバカにされて、なぜ大人しくしておかなければならないのだろう。ミフィリアは貴方達に何かしただろうか。
「……イヤリングはどうでしょうか?今日つけるアクセサリーにはイヤリングがありませんし、このドレスに合うようなものに変化していただければ肌身離さずにいれますよ?」
それを聞いて、すぐさまミフィリアが白い煙に包まれた。
そしてベッドの上、今までぬいぐるみのミフィリアがいた辺りに鮮やかなトパーズのイヤリングが置いてある。
「片耳用ですか……」
サラがイヤリングを手に取り、右耳につける。最後に、同じく贈り物のネックレスをつけて準備が完了した。
なんだろう……なんか強そう。もちろん綺麗だよ?綺麗なんだけど、それも相まってすっごい怖い。
自分の悪役っぷりにおののく私を見てか、サラが横に出て口を開く。
「今日の『聖乙女の水鏡』の儀式での事、お聞きしました。あのアイナ様が聖女に選ばれたのだと。ですが、お嬢様には王太子殿下も信頼できるご友人も、ドラゴンの最上種のミフィリア様も精霊様も……旦那様方もついています。私はこれからお嬢様にたくさんの幸せがありますようにお祈り申し上げます」
表情は固いままだが、雰囲気を柔らかくしてサラがそれを伝える。
厳しいけどなんだかんだ私に優しいサラに、私はニコリと「その中には貴女達使用人もいるんでしょう?」と笑いかけた。




