42、ゲームスタートですわ
「あぁぁぁぁ!なんなのですかあの女は!」
「……リズ、なんでイザベル嬢はご乱心なんだ?」
聖女の儀式も終わり、レオン様のお声かけで学園のサロンの上階で軽いお茶会をしているのが今。いつものメンバー……私とレオン様とジルとリューとイヴちゃん、そして私の膝の上に乗るミフィリアで美味しい紅茶を飲んでいるのだ。
そしてこの会話に至る。
「なんでも、シトラル男爵令嬢が聖女に選ばれてエリィに喧嘩をうったんだろ?噂になってたぜ?」
「まぁ……合ってなくはないけど、ミフィリアにも喧嘩うるなんて許せないわ!この子は何も悪くないし、魔物だからって抑える宣言なんて!」
あの時を思い出して頬をふくらませる。
ゲームのチュートリアル的ストーリーでは、ヒロインはあんな宣言してなかったはずなのに。これからゲームの第1部が始まると思ったら少し違ったセリフが出て驚いてしまった。
ミフィリアも私が怒っているのが感じとれたのか、今まで食べていたベリータルトの残りを1口で食べて、撫でて撫でてと頭を擦り付けてきた。うん、擦り寄ってくるぬいぐるみなんて癒しの極みだわ。
「はぁ……婚約者が俺を殺しにきてる」
「…………」
「ちょっと待って?イザベルちゃんが気絶してるんだけど!ジオラーク場所変わって!ソファーに寝かせなきゃ!」
「リュシュアも災難だな……」
なぜか深いため息をついて天を見上げるレオン様と、熱い紅茶の入ったカップを持ったまま幸せそうに気絶しているイヴちゃん、それを引いた目で見るジルと、お兄ちゃんを発動するリュー、ミフィリアは私に頭を撫でてもらって満足そうに鳴いている。
カオスですわね。
「そういえば、今夜のパーティーの準備はしたか?」
ジルが面倒くさそうに尋ねたのは、今夜開催される入学パーティーの話だ。
大きなダンスフロアもあるお金持ちな王国学園はすごいね。
そしてこのパーティーは最初のルート指定イベントだから私参加したくないんですけど。
「リズには新しいドレスを贈ったよ?俺がエスコートするから女性寮を出た所で待ってるよ」
「……また新しいドレスを?お気持ちは嬉しいですけどもったいないです!」
ていうかレオンハルト殿下はエリザベスに贈り物なんてした事なかったはずでしょう?婚約した時から貢ぐみたいな勢いで贈り物されているんですけど。ゲーム設定どうなってんだ運営よ。
「リズはとても心が美しいんだね?だけど、これは俺が好きでやっている事なんだ」
「……エリィお前レオンハルトに何しでかしてんだよ」
「知らないわよ……婚約解消宣言を取り消した後くらいからこうなったんだから。それに貴方達やミフィリアと仲良くなったら余計にエスカレートしたし……」
「とりあえずレオンハルトを蔑ろにするなよ」そう言い残すと、ジルはフカフカのソファーに背を預けた。
別にレオン様を蔑ろにしているわけじゃないんだけど……




