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36、参りましょう、学園へ

本編参ります!


一週間前から離れようとしなかったお父様とお兄様をお母様とお姉様が引き剥がし、別れの挨拶に、と家族の頬にキスをして、私付きの侍女であるサラと大量の荷物を連れて学園へと向かった。

もう私も16歳なのだから、そこまで過保護にならなくてもと思うのだが、お母様が「もう病気だと思いなさい」と私を宥めたのをしっかりと覚えている。

まぁ、怒涛の朝を終えて今日から住む場所でつかの間の休憩をとっている今だからこそこんなに呑気に思い返せるのだけど。


「お嬢様」

「何?サラ」

「その……本当にミフィリア様をそのまま連れていくのですか?やはり隠れていただいた方が……」

「いいのよサラ、ミフィリアも私の家族だもの。心配してくれたの?ありがとう」

「いえ、出過ぎた真似を」


私の肩に乗るミフィリアを見て私の心配をしてくれたサラはかなり優秀な侍女で私にはもったいないくらい……いや、伯爵令嬢ならそんなことないけど……私の中身は平凡な社会人なんだから、もったいないくらいだけど、私についてきてくれた大切な人なのだ。


「ねぇ、やっぱり変じゃないよね?」

「……何回目ですか、勿論お嬢様はいつでもお美しいですよー」

「適当に言ってるでしょう……」


ゲーム内で何度となく見てきた王立学園の制服に身を包み、もちろん悪役令嬢エリザベスが似合わないはずないのに朝からずっと確認しているのだ。この世界では女性が脚を露出するのは御法度らしい。制服と言っても女子高生のようなミニスカではなく、パニエのない黒のロングスカートのようなドレスである。魔法の属性と魔力量によって装飾が違うようで、私のは青いリボンで編み込みがしてあったり、白や青色の糸で花や蝶の刺繍が豪勢にほどこしてあった。

中々かわいい。


「入学式の時間に遅れますよ?寮の荷解きは終わらせておきますので早く向かってはどうです?イザベル様とお約束していらっしゃるんでしょう?」

「そうね……ありがとうサラ」


気合を入れるようにホコリ一つないスカートをパフパフとはたき、無駄に豪華な金ピカのドアノブに手をかけた。カチャリ、と耳に馴染む音がなり、扉が開く。イヴちゃんとの約束は女性寮のエントランスに5分後である。彼女の制服は、手紙で『お互い当日までのお楽しみにしよう』と約束していたからよくは知らない。確か彼女は火属性だったはずだ。


「サラ、最後にいいかしら?」

「はい?」

「…………本当におかしくないわよね?」

「早く行ってきてください」


閉め出されてしまった。






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