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番外1、レオンハルトの策略

視点が変わります。

最初はエリザベスではなく、王太子レオンハルトの独白みたいになったけど飽きずに読んであげてください。


数日後に王宮主催の舞踏会を控えて侍女達や執事達が忙しそうに動いているのを横目に、先程父上、現国王から伝えられた言葉に小さくため息をついた。

内容は、婚約者候補の中から気に入った人を見つける事。今までに何度か似たような舞踏会を開いては表情筋を殺してたくさんのご令嬢に笑いかける単調な作業を行ってきた。この上なく面倒でつまらない時間だったから大して記憶にない。

両親に似た整った顔、美しい透き通るような金髪、夜空を閉じ込めたような深い蒼眼、明晰な頭脳、騎士隊長にも劣らない剣の腕、それが俺にかけられる世辞の句だ。上っ面だけ褒めて、次期王妃の座を狙う欲望が見え見え。

確か今回は有力貴族のメイリーン伯爵令嬢がいらっしゃるから、とか言っていたけど別に興味もないし。

どうせなら適当に有力貴族の中から決めようか、なんて思っていた。


しかし、面白い誤算があったのだ。

当日、会場のざわめきが扉の開く音と共に静かになった。そちらを見て俺は目を見開いたんだ。

すっごい綺麗なご令嬢がいる、って。

多分あの人がメイリーン伯爵令嬢、噂にたがわぬ美しい姿に周りの者も息を呑むのがよく分かる。

そしてもう1つ。彼女は真っ先に俺、王族の元ではなく料理の盛ってあるテーブルへと向かったのだ。これに対しては久しぶりに心からの笑みが零れた。面白い人だ。おかげで目の前の何とか令嬢様が真っ赤になってこちらを希望に満ちた目で見つめているが、気にせず後ろの執事が丁寧に追い返してくれた。なんて優秀な執事だろう。

今まで見たことのないご令嬢に対して興味を持ってしまい、挨拶の後にすぐさま求婚してしまった。無礼だったかもしれない。でも断れないように邪魔な者達の居ない2階で圧を掛けながら逃げ道を断った。

初めて興味を持ったご令嬢なんだから一目惚れってのも間違いじゃないだろう。

状況に追いついていないエリザベス嬢の不格好に浮いた手を取り、にこりと笑いかける。絶対に逃がさない。


混乱するエリザベス嬢に柔らかくもう一度笑いかけると、観念したのか「……はい」と短い承認の返事を勝ち取ることができた。


そうして父上にエリザベス嬢のことを話し、嬉嬉として正式な婚約の手続きを進める母上と、かなり渋るメイリーン伯爵を説き伏せる父上をニコニコと眺めていた。

また彼女に会える、それが一番嬉しかった。

混乱しながらも差し出された食べ物は必ず食べる彼女に対する初めての柔らかな気持ちには戸惑いが多いが、それでも何だか心地よかったのだ。


やっとメイリーン伯爵が折れて、正式にエリザベス嬢が婚約者となったのは舞踏会のあの日から数ヶ月は経った頃だった。

それまで1度も彼女と会ってないが、やっと会える日が来た。彼女の屋敷に赴くのだ。


「お久しぶりですわ、レオンハルト殿下」

「お久しぶりですね、エリザベス嬢。この度は婚約を受けて頂いて本当にありがとう」


久しぶりに見る彼女はやはり美しい人であったが、緊張からか微かに表情が硬いように思う。

そのまま苦い顔の伯爵と楽しそうな奥様に挨拶をし、その奥様が隣の伯爵を無視した「殿下をお部屋に招待したら?」という一言に素直に従う。止めようと口を開きかけた伯爵の鳩尾に奥様の肘がくい込んだのは見ないふりしようと思う。


「レオンハルト殿下、お茶を用意致しますね」

「おや、婚約者なのだから愛称と敬称なしで呼びあってもいいのでは?そうだな、貴女をリズとお呼びしても?僕……俺の事はレオンと」

「……えぇ、婚約者なのであまり堅苦しいとあらぬ噂をたてられますからね。どうぞリズとお呼びください。失礼ながら私もレオン様とお呼び致します」

「様も付けないでいいのに、堅苦しい敬語だって2人の時は使わないでいいよ?」


にこりと笑いかけて用意してくれたお茶を1口飲む。目の前でリズが「愛称呼びとかシナリオに無かったはずなのに」と、よくわからない独り言を早口でまくし立てていたけど気にせずにソファから立つ。

驚いたように見つめているリズに苦笑しつつ、そんな彼女の隣に腰掛けた。大きなエメラルドグリーンの瞳が零れそうで心配になるが、お茶請けのアイスボックスクッキーを摘んで呆けるリズの口元に近づける。それでも条件反射みたいに口を開けるリズがかわいらしいと思うがしばらく続けるうちに平静を取り戻したのか「餌付けしないでくださいませ!」と怒られてしまった。


俺のかわいい婚約者の話だ。言っとくけど誰にもやらないから。






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