34、言ってなかったっけ?
「エ、エリィ様……その……その動くぬいぐるみは…………?」
「あれ?教えてなかったかしら?この子は私のペットのミフィリアよ。ドラゴンの最上種らしくて幻影のなんちゃらかんちゃらなんだって、あぁ、もちろん契約してるから襲われないはずよ?」
この間発見した事だが、ミフィリアは耳の付け根を掻くように撫でると気持ちよさそうにするため、そこが好きらしい。
あと甘い果物、ベリーとかりんごとかが好きみたい。かわいい。
「……おい、最上種とか色々言いたいことはあるが魔物と契約したってことはもう聖女にはなれないってことだろ?」
「そうね、私のために頑張ってくれたジルやリューやイヴちゃんには申し訳ないけどそうなるわ。聖女は世界の人々のために力を使う御方だけどね、私は人々の他にも力を使いたいと思ったの」
もちろん聖女は人々の他にも祝福としてたくさんの救いの施しを与えることが出来る。でも、唯一できないのは魔物と精霊への救いの施しなのだ。魔物は人々を襲うこともあるし、畑を荒らすことだってある。しかし、子供を守るために気がたっていたとか、縄張りを荒らされたとか事情はあると思うのだ。
それを問答無用で切り捨てるのはいかがなものかと、そう思った。
「でも、あの時アイナ嬢に宣戦布告しただろう?それはいいのかい?」
「リューの言う通りもちろんよ、でもね、私が負けないと言ったのはレオン様を取られないし、貴女にそう易々と負けないって意味なの。ジルいわく私と彼女には魔力量に大きな差があるんでしょう?聖女の肩書きくらいくれてやるわ、いいハンデだと思わない?」
ひとりひとりの色の違う目を見て送り出すように話した。
ジルは難しい顔をしているし、リューは困ったように笑っている。イヴちゃんは真剣に私の言葉を噛み砕いているようだ。
どうしよう、気まずい、この沈黙が、私のせいだけど。
「ダメ……かな?」
まぁ勝手だなんだと批難されるのは覚悟している。皆が魔物に対して否定的なお家であるならばもう皆に近寄らないし、話しかけもしないように心がける。でも……出来ればまだお友達でいたいと思うのだ。すごく自分勝手だし自己中だと思う。でも、私はそれほど彼らが大好きなのだ。
沈黙が場を支配し、それが皆の答えかと目を伏せる。
それを破ってのはジルの大きな笑い声だった。




