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32、正式なペットです!


あざとさ満載のおねだりをお父様とお母様に向ける。それこそぬいぐるみもあるんだから乙女チックな感じで眉を下げ目を潤ませる。


「はぁ……何故聡明なエリィの初めてのおねだりがこれなんだ……」

「私は賛成よ?エリィのおねだりなんだし、ペットなら他の御令嬢も持っているし、なによりエリィのおねだりなんだし」


お母様、私にかなり甘いのね……でもわかるよ?エリザベスちゃんは本当に顔だけはいいってキャラ設定だったし、そんな女の子が一抱えのぬいぐるみを抱きしめておねだりしているのだもの。私だって撫でくりまわしたいと思うはずだもん。


「今までの行動から、このドラゴンは知能指数が低く幼いと思われます。それにエリィに懐いていて、敵意は無いし……幻影の魔龍はイタズラが好きな幼い性格だと私の知っている文献資料にありました。僕は大丈夫だと思います。まぁ、誰にもバレないようにするならばですが……」

「お兄様!」


ニパッと顔を明るくして見上げるとデレデレのお兄様と目が合った。

やっぱりこの家の人達は私につくづく甘い、甘過ぎる、だから私が悪役令嬢になったんだよ。


「だが、いつエリィに危害を加えるかわからないだろう……それこそ契約でもしない限り」

「契約?」

「精霊と同じように魔物とも契約出来るんだ。精霊と魔物の契約には違いがあって一言で言うなら、協力者と主人、くらいの違いかな?」

「では私がこの子と契約したら私はこの子の主人になるのですか?」

「あぁ、そして契約は精霊と同じ条件だ。お互いが承認して名前をつける」


なるほど、あの時副団長さんも同じこと言ってた気がする。でもこのぬいぐるみが私と契約したいかっていうとそうでもないのではないだろうか。イタズラ好きな幼い性格なら、わざわざこんなロリ……幼女……女の子に支配されたくないはずだし。


「しかし、魔物と契約するならば聖女にはなれないぞ?聖女は魔物を滅ぼす存在だ、しかも今は光魔法を使う者もいる。敵対するかもしれない。民の間では魔物と契約する者は畑を荒らされないように命令出来るから割と受け入れられているが、保守的な貴族の中では疎まれるだろう」

「契約するかどうかはこの子次第だけど、周り関係なく私はこれから魔物のこの子とずっと付き合っていきます。だから、ね?お父様?」


ふぅ、と一息ついて困ったように笑いかけられた。

つまりは、つまりはあれだよね?OKってことだよね?自分でも顔が綻んでいくのがわかる。その顔を見てだろうか、またデレデレした顔で私を撫でてくれた。やっぱりお父様も私に甘過ぎる。


「ねぇ、貴方私と契約する?」

「ミフー!」

「え?いいの?」

「ミフー!」


嬉しそうに鳴くぬいぐるみに素っ頓狂な声が出たが、くるりとぬいぐるみを回転させて向き合うように抱き上げる。パチリと大きくてクリクリした新緑色の瞳と目が合った。


「それじゃあ貴方の名前は……ミフィリア、ミフィリアよ」


返事をするように、大きくてご機嫌なミフー!という声が聞こえた。








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