31、おねだりしちゃいます
なんかミフーミフーばっかり書いてて字面がシュールだな、って思いました。ですがぬいぐるみはこの後もまあまあ出てくるのでしっかり書きたいなと、思ってます。
「えぇー!?や、やっぱり言葉理解してるじゃん!」
「驚くのはそこじゃないよエリィ、まずこのぬいぐるみが最上種であることに驚くだろ?」
「あ、そっか……え?じゃあ本当に?最上種?」
お兄様の言葉に混乱状態の私は疑問だらけながらまたぬいぐるみを覗き込む。その様子を見ていたのだろうお父様が私、正確には自称最上種のぬいぐるみの前に立って片膝をついた。
「今までの無礼をお許しください。貴方様がかの御方であるならば私からいくつか質問がございます。よろしいでしょうか?」
「ミフー」
眉間に深く刻まれたシワは帰宅時にはなかったものだけど、この短時間で随分と老け込んだのではなかろうか。まだ40代ではなかっただろうか?もしかして私のせい?
いや私何にもしてないのに、なんかごめんねお父様?
「貴方様は紅蓮の龍でしょうか?」
「ミフーミフー」
「では深淵のでしょうか?」
「ミフーミフー」
「荒廃のでしょうか?」
「ミフーミフー」
「幻影のですか?」
「ミフー!」
なるほど、幻影のなんとかなんとかね?確か……真の姿を見た人がいないのだっけ?こんなちっちゃくてぬいぐるみみたいでかわいい女の子の夢みたいな子が世界最強レベルだなんて……
「それじゃあ貴方の名前は幻影のなんちゃらかんちゃらなの?」
「ミフーミフー!」
「その名は昔の人々が便宜上勝手につけたものだから違うんじゃないのかな?」
「そうなのですか、それじゃあ名前は何かしら?」
「……ミフー?」
その質問には本当にわからないのかからかっているようには見えないが首をかしげながら1つ鳴いた。
しかもかなり可愛かったし、さすがぬいぐるみ、あざとさが半端ないわね……私もキャラクター上見目だけはいいのだから見習わなければ。
処刑から逃げる時に使えそうだわ。
「幻影の魔龍様、我が娘を気に入って頂けたのは嬉しいことですが無法の森で出会われたとの事、娘も混乱するため無法の森へお送り致します」
「ミフーミフー!」
「ですが……」
「……飼えないの?」
「エリィ?魔物、しかもドラゴンを飼うなんて前代未聞だし、周りの人々から好奇の目で見られるかもしれないんだよ?」
「でも……」
正直言ってもうこのぬいぐるみが気に入っちゃったんだけどね。周りから好奇の目で見られるなんて、この後処刑エンドを迎える私にとっては安いものだし。というかジルからはもう変な奴認定されてるんだし、これを機にレオン様が婚約破棄してくれれば願ったり叶ったりだし。
「ダメかな?お父様、お母様?」
あのあざとさを早速使う時が来ちゃったなんて、そんなことを他人事のように思った。




