29、不思議なぬいぐるみだわ
そういえばレオン様の精霊契約時の奇行について質問があったのにお話してませんでした。
なんでアイナ嬢を侍らせていたのか?
本編でも匂わせていたのですが、ここで今更解説します。
なんで今って?そろそろレオン様を思い出さないと記憶の彼方から抹消されそうだからです。
「あぁ……まず今日あったことを説明して貰おうか」
頭が痛い、と片手を頭に添えてお父様は私とお兄様に問う。
こんな空気感の空間でも、腕の中の侵入者君はぬいぐるみらしく抱きしめられるのが嬉しいのか「ミフッミフー」と上機嫌に鳴き声をあげている。お前のせいだろ!
「帰りがけにこの魔物に会いました。見た目やエリィにかなり懐いていたためかなり幼い魔物だと思いました。ですがこの立った耳に牙、太い尾と悪魔の羽から……ドラゴンかもしくはワイバーンだと思い、そのまま残して帰ってきたはずだったのですが……」
「お父様、この子は誰なのでしょうか?図鑑に載っていなかったしお兄様もわからないそうですし……なによりお父様の鑑定に引っ掛からないなんて……」
お父様は前世でいうところの防衛大臣みたいな仕事をしているそうだ。正式名称はなんか長ったらしくて聞き馴染みのないものだったから覚えてないけど。
まぁ、メイリーン家はもとより水魔法がこの国一の一族だし、頭も良くてかっこよくて魔力も強いお父様が国の力の要になるのは必然なのだろう。
「こんな魔物はさすがに見たことがないぞ……変化して潜めていたとしても全く魔力を感じさせないなんて、それこそドラゴンの……最上種でもない限り……」
「ドラゴンの最上種?」
「ドラゴンやワイバーンには階級があるんだ。
一番下の位は混血、他の魔物とのハーフだ。
次はワイバーンの純血、もともとワイバーンはドラゴンとトカゲのハーフだからな、ドラゴンに比べて力も能力もかなり低い。
次にドラゴンの最下種、ドラゴンはなかなか会えない魔物だがその中でも比較的会いやすい種だ。無法の森でならなかなかの確率で会える上に骨があるから討伐戦もよく組まれる。
そしてドラゴンの中等種、数年に一度国中の戦力をかき集めてドラゴン討伐に行くのを知っているだろう?時には他国とも協力して討伐することもある、それが中等種。火・水・風・土の力をそれぞれが司っていて『龍神殿』と呼ばれる洞窟に眠っているが、時に目覚めて暴れるんだ。最下種と比べ物にならない程の強さだよ。
最後に、最上種…………」
お兄様が真っ直ぐに私と腕の中のぬいぐるみに目を向けて緊張したように小さく息をついた。
え?待って?今までの説明だけでもキャパオーバーになりかけてるんだけど、魔物の説明なんてバージョンアップ版の話でしょ?
どんだけこのゲームやり込んでても私その前に死んでるから知らないんだってば。
あとなんなのこのシリアス展開風の空気感とぬいぐるみの気の抜けたような「ミッフーミフーッ」という鳴き声は。
今私シリアス展開なのかギャグ展開なのかわかんないんだけど、どういう顔が正解なの?誰か教えて?
(前略前書き)それはなぜか、なぜならアイナ嬢は光魔法を使うからです!
光魔法の使い手は世界から愛される、とありましたね?そうなんです愛されるんです。レオン様は本当はエリィちゃんとイチャイチャしたいのにご機嫌取りのためにアイナ嬢に下手なことできないのです。
まぁ可哀想!他の国に行かれると外交的にお互い困るからどうにかして引き止めなければ、周りの無責任な大臣達は「もう結婚しちゃえば万々歳」なんて言うしで板挟みなんですね。




