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28、怒らないで?お父様


「ただいま帰りました!」

「エリィ!あぁおかえり、ウィシリオとの遠乗りはどうだったかい?魔物について観察すると聞いていたけど大事ないみたいでよかった」

「お父様過保護過ぎますよ」


挨拶をした途端に駆け寄ってくるお父様に苦笑しつつ、奥に控えるお母様にもにこりと微笑む。すると同じように微笑み返してくれて、「魔物に変な術を掛けられてはいませんね?」と心配してくれた。すぐにお父様が鑑定をして、私の魔力以外の力が無いことを確認してくれる。さすがだ。


「今日はたくさんお話したいことがありますの!ディナーの後に少々お時間を頂けないでしょうか?」


上目遣いで恥じらうようにおねだりをする。これでどんなに強くて怖いお父様もお母様もたちまちデレデレとした顔になる。

後ろで眺めていたお兄様もデレデレしている。どうやらこの美少女おねだり爆弾は侍女や執事にまで被爆しているようだ。


「もちろん、ディナーの途中からでいいよ?エリィが見てきたものをありのままに話して、君の魔物に対しての考えも聞かせて欲しい」

「やったぁ!ありがとうございます!」

「ミフー」


歓喜にふわふわと浮ついていると、後ろから聞き覚えのある鳴き声が聞こえた。いやいや幻聴だろう。私疲れちゃったのかなぁ。


「何か聞こえなかったか?」

「な、なんのことでしょうか?」

「ミフー」

「……エリィ、あの魔物って連れて来てないよね?」

「あたりまえですわお兄様、それに先程お父様が鑑定して私以外の魔力がないと仰っていたではありませんか」

「ミフー」


シーンとした空間に、さっきの私とお兄様の会話を聞いて表情を硬くしたお父様がこちらを見ている。

とりあえずどこにいるのか見つけないと、とくるぶし丈のドレスの裾を少し持ち上げてバサバサと控えめに振り落としてみる。サラもお母様も今回ばかりははしたないと叱ることなくこちらを見ていた。

するとヒラリ、とドレスの裾から1枚のオレンジ色の野花の花びらが落ちてきた。

なんとなく見覚えのある色味に嫌な予感がしていると、ボフン、と音を立てて煙とともにあのぬいぐるみが「ミフー!」と元気な声を上げた。


「鑑定ではエリィ以外の魔力は全く感じられなかった……」

「この形は……ぬいぐるみかしら?でも動いているし」


困惑するお父様とお母様をよそに、ぬいぐるみ君は背中の羽をはためかせて私の胸元に飛びついてきた。

それを見てまた難しそうな顔をする皆に、ちょうど抱きしめやすい動くぬいぐるみを胸に抱きしめて


「怒らないで?」


とか細い声が出た。

だって一番驚いて混乱しているのは私でしょう?





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