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3、雑なゲーム補正ですわね

お兄様の名前は、ウィシリオ・メイリーン

です。

身内の名前紹介が雑だな私、すみません。


煌びやかなフロアに水晶だかガラスだかわからないくらいに光を乱反射するシャンデリア、壁のほんの一部にも細かな装飾が施されていて、グラスも燭台もお皿も全てがキラキラで目が痛い。


そんなことを思う、指折りの権力を持つ伯爵令嬢様の エリザベス でございます。

海のような青いキラキラしたドレスに白い髪飾りでまとめたストロベリーブロンドの髪を持つ私のエスコート役は、16歳のお兄様。設定上、というか法定で16歳から王立学園に入らなければならないため、お兄様とお会いするのは数ヶ月ぶりだ。

もちろんお手紙のやり取りはしていたけど、やっぱりメイリーン家の血を引いているからすっごいイケメン。

周りのご令嬢様方が熱っぽい視線を送っているようだけど、残念お兄様にはもう綺麗な婚約者がいますから。


「エリィ?」

「……ぼーっとしていましたわ、ごめんなさい」

「そうか、王宮主催の舞踏会なんて何度行っても緊張するからね、仕方ないよ。でも、もうすぐで挨拶の順番が回って来るから気をしっかり持って」


キラリとイケメンスマイルを惜しげも無く私に向けて貰って鼻血が出そうだわ。おっと失礼、伯爵令嬢としてあるまじき感想でしたね。

とりあえず地味に挨拶を終わらせて記憶に残らない程度にしておかないと、まぁ、このお家に生まれた以上かなりいいお顔をしているから記憶に残らない程度っていうのは無理なんだろうけど。

早めに挨拶を終わらせて、隅っこのビュッフェに行きたいのよ。めっちゃ美味そう、家の料理も美味しいけど王宮ってだけでなんか特別感あるし。

さっき最初にビュッフェコーナーに向かおうとしたらお兄様に「挨拶周りの後で」って怒られちゃったもん、でも私悪くないよ、美味しそうな料理を作った料理長さんが悪いのよ。


「メイリーン伯爵家のウィシリオ様、エリザベス様はじめまして」

「ごきげんようレオンハルト殿下、お初にお目にかかりますわ」


人好きのする微笑みを向けつつ、最大級の礼とお辞儀をした。後ろに控えている重役っぽいおじ様が頬をそめた気がしたけど、お兄様が1歩前に出て私を隠しながら話し始める。


「妹は王宮主催の舞踏会は初めてなんです」

「そうですか。確かエリザベス嬢は僕と同い年でしたね?」

「えぇ、それでは8年後に王立学園でお会いできますのね、嬉しいですわ」


本当は全く嬉しくねぇんだけど。だって殺されるんだし、私のこと振るんだし。

まぁゲーム内のイラストよりも幼さが残る8歳のレオンハルト殿下はかわいいとは思うけど、こんなかわいい子が私を盛大に断罪して処刑を命じるなんて考えたくもないんだよね。


「エリザベス嬢、これからお時間を少し頂いてもよろしいでしょうか?」

「どうされましたか、殿下?」

「いえ、貴女ともう少しお話がしたいだけですが」


それを聞いてお兄様が誰にもわからない程度に顔を歪めた。私も「はぁ?」と喧嘩腰で聞き返したい気分だ。この上っ面だけの会話で、何故私に興味を持つんだ王太子よ。どこら辺が貴方の琴線に触れたのですか?あんま関わりたくないんだけど。


「あの、私時間が」

「では2階へ向かっても?もちろん軽食くらいはありますので御安心を」


おい「御安心を」って最初の私の愚行を見ていたな貴様。ニヤついてんじゃねぇよ。

唯一の救いであるお兄様も仕方ないと、私の肩に手を乗せて暗に「死んでこい」と示している。

いや「死んでこい」っては言ってないと思うけど私に取っては死亡宣告なんだよね。

仕方なく殿下にエスコートされながら、重要貴族ですら入れなかったフロアの2階に向かう。


「どうぞお掛けになってください」

「ありがとうございます」


すっごいご機嫌にニコニコしていらっしゃるけど、何がしたいの彼は。目の前のテーブルに彩り良く並べてある料理をお皿に盛り、私に差し出された。

一応受け取ろうと手を出した途端にひょいとお皿を上に避けられ、にこりと笑いかけられる。

は?何?私を犬だとでもお思いで?


「僕が貴女をお誘いしたのは一つの理由からです」

「……はぁ」

「実は僕は貴女に一目惚れしました」

「はぁ……はい?」

「とてもお美しいお姿に、飾らぬかわいらしい貴女に心を奪われたのです。なので貴女が良ければ後日婚約を申し込みたい」


柔らかな王子様スマイルを、本当に王子様なんだけど、それを向けながら手持ち無沙汰に宙に浮いたままの私の手を握る。

ちょっとかっこいいとか思ったけど、待って、婚約なんかしたら後々死ぬぞ私。でも王太子殿下の婚約を重要貴族ではあるが一貴族である私なんかが断れるのか?断ったら立場がどうのこうのってならないよね。


「あの私に」

「拒否権はありません。どうしても僕が嫌いで嫌いで仕方ないのであればこの場でお断りしてください」


腹の黒い笑みを浮かべながらギュッと私の手を握る力を込めた。そうか、レオンハルト王太子殿下は確か『孤高の王子様』って異名があってルートに入って親密度を最大まで上げるとヒロインにだけ甘いセリフを吐くんだったっけ。あの時は誰にも懐かない猛獣が懐いたみたいな感じですっごい萌えたんだよね。しかもエリザベスの断罪イベントでは証拠集めと処刑の根回しも完璧に終わらせていたから腹黒王子だねって友達と話してたし……あぁ、今のこれが腹黒王子の片鱗なのか。


「逃がしませんよ?エリザベス嬢」


絶対断れないやつじゃん、なんで私とそんなに婚約したいのよ。後8年したら運命のヒロインと逢うのにどんだけ私を殺したいの運営。

こうなったら状況を見てタイミング良く婚約解消してもらうしかないな。

とりあえず殴らせろ運営。





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