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27、貴方は誰?


ピチュア達と遊んでしばらくすると、お兄様から帰ろうかと言われてしまった。まだ日は高いがこの後の帰り道や馬の様子を見るに、これくらいにしてお父様に報告しようという話になったのだ。


ミフーミフー


「……なんか変な声聞こえません?」

「そうだね、迷子の魔物でもいるのかな?」


ミフーミフーミフー


「向こうですね……」

「危ないから僕が先にたって見てくるよ。絶対に離れないようにね」


気の抜けたような高く優しい鳴き声がさすがに気になったのか、お兄様が見てきてくれるらしい。

さすが、とても優しくてかっこいい自慢のお兄様ですわ!


「…………何もいない」

「でもこちらから鳴き声が」


ミフーミフー


「ほら!何処かにいますって!」

「エリィ!あまり遠くに行っちゃダメだ!」


お兄様の制止を背に、声の聞こえた茂みをかき分けて声の主を見つけ出す。その中にいたのは、


「……ぬいぐるみ?」


そこにいたのは、30センチくらいのぬいぐるみだった。オレンジ色ベースのふわふわした生地とレモンイエローのすべすべした生地で出来たボディと、それに付いた大きくて太い尻尾、頭はぬいぐるみらしく少し大きいもので、鼻と口の部分が突き出ている犬みたいな形をしている。その頭に大きな狐のような立った耳、小さな背にはコウモリのような可愛らしい羽がついていた。横腹には大小2つのボタンが縫い付けてあり、可愛らしいドラゴンのモチーフのぬいぐるみ。

ただしかし、キラキラと輝く新緑色の目と、ミフーミフーという聞き覚えしかない声が嬉しげにその可愛らしい口から出てくるのはどう処理したらしいのだろう。


「エリィ!……っとそれが声の主かい?」

「はい、しかしこの子、動くぬいぐるみみたいで……魔物図鑑にも乗っていなかったはずです」

「……ドラゴンの一種か?ガーゴイルかもしれないな…………ともかく、ドラゴンだとしてもワイバーンだとしても、どちらも魔物の中でトップクラスだし、というかドラゴンがトップなんだし放っておいても生きていけるよ」


お兄様がぬいぐるみを一瞥して私に手を差し伸べる。動くぬいぐるみなんて前世の幼い頃からの夢だったのだけど、見れただけでラッキーだよね?名残惜しいけどそろそろ帰らなきゃ。


「ミフー」

「ごめんね、私もう帰らなきゃなの。バイバイ」

「ミフーミフー」

「連れていけないわ……仲良くしてくれるのはありがたいけどね」

「ミフー…………」


捨てられた子犬みたいな潤んだ顔をしたぬいぐるみに「ん゛ッ」と喉の奥から声が出てしまったが、お兄様に急かされて後ろ髪引かれる思いでその場を後にした。

その時、後ろを振り返らなかったから、もうぬいぐるみはいなくなっていて、私のドレスに小さな野花の花びらが付いていたのに気づかなかったのだ。










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