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26、魔物って何でしょうか


「グガァァ!」

「キィーッ!キィーッ!」


まるでアマゾンみたいな魔物の叫び声にピクリと肩が震えるが構わずにお兄様に続く。なんでも、それほど気性の荒くない魔物を見て回るらしく、今から水生の『ピチュア』と呼ばれる魔物を見に行くそうだ。私もお兄様も水属性の魔法を使うから、魔物との遭遇率も水属性が多いらしい。だから多分何もしなければ生活を覗かせてくれるというのだ。


「着いた、ここが川。この茂みに隠れて……ほら居た!あの手のひらサイズのゲル状の魔物だよ」


指さす方を見るとスライムのような魔物が5匹程飛び跳ねている。ちなみにスライムはスライムでちゃんといるらしく、あれはスライムじゃないらしい。……なんかスライムって言いすぎた気がする。


「基本的に飛び跳ねているだけで無害なんですね。……あの小さいのは子供でしょうか?……まぁ!川の水と同化して……すごい水を吸うと大きくなるのね?」

「興味津々だね、あまり近づくと気づかれちゃうよ?」


苦笑いするお兄様の忠告をもらったのに、もう少し、もう少し、と無意識で近づいていく。ギリギリまで近づいた時、ふと、1匹のピチュアと目が合ってしまった。そのピチュアはつぶらな瞳を最大限に開いたかと思えば、急に皆と共に川の中へと入って行ったのだ。


「あ……」

「逃げちゃったね……」


今まで楽しそうに遊んでいたのに、私のせいで逃げてしまった。意外と可愛かったのに、もうちょっと見ていたかったのに。

お兄様が「次に行こうか」と肩を叩くが、もう少し待ってと引き止める。

少しだけ川辺に近づいて手をかざす。神経を集中してスピカを呼び出した。


「ねぇピチュア達、びっくりさせてごめんなさい。私は何もしないわ……私も水魔法が使えるの、また遊んでいるところを見せてくれない?」


ひんやりとした水を出して、スピカの力でそれを透明な鳥や葉っぱに造形して川の周りに飛ばしてみる。なんかこんな飲料水のCMあった気がするけど、イメージはそれだ。

お兄様からもお父様からも私の魔法は美しい魔法だと褒めてもらえたからこういうのは得意分野。

しばらくそれを続けていると、子供らしき小さなピチュアが顔を出してこちらに近づいて来た。私の作った鳥と一緒に飛び跳ねてダンスを踊っている。続けて他のピチュアも恐る恐る寄ってきた。


「……すごいね、魔物と仲良くなれるなんて考えられないことだよ」

「お兄様も遊びましょう?この子達水が好きみたい」


お兄様も私の隣にしゃがみこんで、川に水のアーチを掛ける。ピチュアは物珍しそうに水と同化してアーチを滑る。かわいい、すごく。


「こんなにかわいい子達を排除するなんて……私はできないわ」


私の呟きが聞こえたのか、お兄様は優しく微笑んだ。







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