24、悪役令嬢降臨ですわよ
後少し話を続けてから本章、王立学園編へと入ろうと思っています。
数個のアロマを手に、人だかりを優雅にかき分けていく。かき分けていく、と言っても私を視界に入れるとすぐに皆が道をあけるからモーゼみたいな感じだろう。今回の舞踏会も子供が多いものだから余計に私が強そうに見えるのだろうか、まぁ、私もイヴちゃんもかなりの悪役顔だけれど。
「……貴女」
「あら?エリザベス様ではないですか!ごきげんよう」
人だかりの中心部、台風の目みたいなこの空間にいたのは想像していた3人と予想外のアイナ嬢であった。
後ろでイヴちゃんの歯ぎしりの音がする。やめな、本当に後が怖いんだから。
「ごきげんようアイナ嬢。そうだ、ねぇジル、リュー、約束のアロマの試作品よ?感想をよろしくね?」
「それが噂のアロマか……実際に見るのは初めてだ。母上もリズのアロマの噂を聞いて興味を示してしたよ」
「王妃様が?そんな……王妃様には試作品ではなくしっかりとした完成品を後日お送りしますわ!」
私が2人にアロマの小瓶を渡し、レオン様とお話ししているとアイナ嬢がレオン様の隣へと近づいて来た。距離感は完全に婚約者のそれである。
「確かに、国母である王妃様にはそのようなものは差し上げられませんものね」
「ちょっと貴女!エリィ様になんたる無礼を!今すぐ謝りなさい!」
「いいわイヴちゃん、本当の事だもの」
また食って掛かるイヴちゃんを窘めて、笑顔でアイナ嬢を見据える。あまり無礼が過ぎるといけないわよ、という警告も込めての笑みである。それに気づいたか、ピクリとアイナ嬢の眉が動いた。
周りの人だかりもシンと静まっている。大人でさえも幼い私達の空気に飲み込まれているため、この周りのみがスピカもびっくりの冷たさだ。
「やはり貴女は私の邪魔ばかりいたしますのね」
「邪魔、とは?それと失礼ながら地位の上の者に対する言葉使いがなっておりませんわよ?」
「……私は光魔法の精霊と契約しております」
「えぇ存じていますわ。光の魔法を使う者は世界から愛される存在であるということも。ですが、それは今の貴女に当てはまらないのではなくって?私の知っている本の中の光属性の御方は、礼儀正しく聡明であり慈愛の心に満ちている方でしたが?」
「それは私がそうではないと?」
バチバチと火花を散らして睨み合う。The 悪役令嬢、って感じじゃないか?なんだろう、かっこいいんじゃない?私。向こうは悲劇のヒロインみたいな悲惨な顔をしているし、私は多分すっごい悪い顔してるんだろう。どうしようと光を操る彼女に味方が多くなるのだから。
「そういえば貴女、レオン様を私から奪うと仰っていましたね?」
「えぇ、エリザベス様はご勝手にと仰っておりませんでしたか?」
「私気が変わりましたの。貴女に全てを奪われるのはとても不愉快なので全力で抵抗しようかと」
アイナ嬢、貴女がヒロインらしく、かつ私のことをそっとほっといてくれる人ならば私も身を引こうと思っていたのよ?でも、もうダメ。
メイリーン家を侮辱し、私の友達にも暴言を吐く貴女に負けてやる必要はないのよ?
残念ね、私学生時代はバスケ部スタメンだったんだから、対抗心とバイタリティは人一倍強いのよ?




