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19、皆さん私に甘すぎません?


「ねぇ、お兄様」


ニッコリと笑いかけてお兄様の腕に私の腕を絡める。確かゲーム内でもヒロインにマウントをとるためにエリザベスがレオンハルト殿下によくやっていた行動の1つだった気がする。一応私の顔は綺麗系の美人なので……もちろんナルシストではないし、自惚れている訳でもないけれど、客観的に見て私エリザベスは綺麗、だと思う。だから、きっと美人のご令嬢なんて見飽きているお兄様にでも少しは武器になるはずだ。

……何の話しているんだ私は。


「私はこの試みにお兄様のお力を添えて欲しいの。だってお兄様はとっても頼りになる自慢のお兄様だから……」


ここで私の必殺技。

必殺、猫なで声で甘えつつ上目遣いアンド涙目!


「お願い、長期休暇の間だけでいいから……手伝って?」


お兄様はフリーズ、私は慣れない事に心臓バックバクなんだけど。

どうだろうか、できる限り悪女感を出してみたけれどやっぱり通用しないのだろうか。

シーンとしている微妙な雰囲気に耐えきれず冷や汗が背筋を伝ったところで、ガバッと急に抱き締められた。……なんで?


「はぁ……僕の妹がかわいすぎて辛い」

「どこのラノベ作品だよ」


反射的にツッコンでしまったのですぐに口を噤む。この世界にラノベなんて文化はなかったんだった、危ない危ない。


「やっぱ王太子殿下との婚約破棄しない?こんなにもかわいい妹にはもっといい人がいるはずだよ。だって君を放置して他のご令嬢のご機嫌とりをしていたんだろう?この世に優先すべき事なんてエリィの他に何があるというんだい」

「お兄様落ち着いて」

「あぁ、だから僕はあの婚約に反対だったんだ、僕のかわいい妹を任せるにはやはり王太子殿下には荷が重すぎた。すぐに父上に僕からも伝えよう、父上もどうにかして婚約破棄して欲しかったみたいだしちょうどいい」

「ちょっと待ってお兄様!」


1人でレオン様の悪口を言って、私をべた褒めして、落ち着いたと思った婚約破棄騒動をお父様に絡めて掘り出したり、何故か自己完結したりと忙しいお兄様に大声で待ったをかける。

婚約破棄についてはマジで待って。あの時レオン様から殺されるんじゃなかろうかという勢いで謝られて「婚約破棄しないよね?」と何百回と聞かれたんだから、それが5日続いたんだから、本当に疲れたんだから。


「あの……私の商会立ち上げのお手伝いについては……」

「あぁ、それに関しては全力で協力するよ」


キラキラスマイルで爽やかに私の協力者になってくれたけど、それに関してはってどういうこと?もしかして婚約破棄に関しては協力できないってこと?いや私を大切にしてくれるのにはありがたいことこの上ないけど、私がその後辛いんだって。


「まぁ、庭師のダンヒルとベルテルが材料を調達してくれるのは1週間後なんだろう?それまでは僕と魔法の練習しよう?」


とりあえずお兄様とお父様が何かまずいことをしでかさないように目を光らせておかねば。




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