16、やっと終わりましたね
はい、精霊契約編、終了です!
ありがとうございました!まだまだ序章に過ぎないので、これからもよろしくお願いします!
ジルが死体となったレオンハルト殿下を起こし、肩を貸して講義を聞いていた時の席に座らせる。体格はほとんど同じかそれより少し大きいくらいだから大変だろうなぁなんて他人事のように思いつつ、腕の中のイヴちゃんを揺すった。我が今生に一片の悔いなし、と書いてあるかのように満足げ。もはや起こさない方が彼女にとって幸せなのかもしれない。
「エリィ?」
「リュー、イヴを運びたいのだけど手伝ってくれない?」
「もちろん!お易い御用さ!」
ニパッとキラースマイルを向けて、私の反対側に回り込み小さなイヴちゃんを抱き上げた。なんだろう、この溢れ出る兄妹感。背の高さも関係しているだろうけど、疲れた妹を抱き上げるお兄ちゃん感がすごい。これで2人共私と同い年だ。なんかずるい、主にリューが。
「皆様、これで精霊との契約の全過程を終えました。これより閉会し、それぞれに解散していただきます」
副団長さんが大きな声でそう宣言した。
やっと終わった、長かった。色々と濃かったし、私婚約解消を宣言するしでかなり疲れた。
「エリィ」
「ジル、お疲れ様ね」
「しかし、あんなにはっきり婚約破棄を言い渡すなんて、お前も酷な事をするなぁ。さすがの俺でも可哀想だと思うぞ?」
「酷だなんて……彼も私よりアイナ嬢の方に盲目でしょう?」
「そうか?お前の方があいつの素を見てると思うけど?例えば、民衆の前では一人称が『僕』だがお前の前では『俺』だろ?」
「そんなもの些細な違いでしょう?現に彼はアイナ嬢に注意をしなかったのだし」
「そうかーやっぱそっちかー」と天を仰ぎながら何かを呟いた。ジルはなんか同情するかのような目でレオンハルト殿下を見つめる。
そういえば私の周りの人はだいたいレオンハルト殿下の扱いが雑だよね。私も人のこと言えないけど。
「エリザベス様」
唐突に後ろから声を掛けられ、優雅に振り向く。ジルも警戒しつつ目線だけをそちらに向けた。
「アイナ嬢……どうされて?」
「私は、きっと聖女になります。光魔法を使えるので絶対です。貴女に聖女の座もレオンハルト殿下も奪わせません」
「ハッ、滑稽だな。誰が聖女になるかなんて決まっている訳がないだろう」
いやまぁ、ゲーム上それがヒロインの設定ですからね。多分、というか本当に絶対彼女は聖女になるわな。
「殿下も奪わせない?そもそもレオンハルトはお前のものではない」
「いいえ!きっと私のもとへ来てくださります。私は信じております。貴方のような野蛮な方には解らないでしょうが、深い絆がありますのよ?」
まるでそう決まっているのを知っているかのように、しっかりとこちらの目を見て一言一言落とすように重く伝える姿に、違和感を覚える。
その違和感を拭えぬまま、アイナ嬢はどこかへと行ってしまった。残されたのは私と真っ赤になって怒っているジルだけ。
「おい!エリィ!」
「は、はいぃ!」
「お前絶対あの女に聖女を渡すな!相手は光属性でかなり手強いが魔力量にはミジンコと王宮くらいの差がある!」
「嘘そんなにあんの!?」
「あと性格もあいつはクソだがお前は変なだけだし、全然マシだ!」
「おいそれ褒めてねぇだろ」
「だから!絶対ぶっ潰すぞ!」そう言って、無理矢理私の手を取って宣言された。どう考えても面倒な事になる気がするんだけど。
特にイヴちゃんとかに言っちゃうともっと面倒になるよこれ、止めてねジル。
あと、もう帰んなきゃいけないから。




