14、私が聖女候補ですか?
どうせならヒロインを、悪意なき悪役、にしてやろうかと画作している今日この頃です。
でも無理だろうなぁ、中途半端な当て馬になりそうなんで止めちゃおう!と昨日思いました。
はい、いつもの通り中身なんて全く無いです。
「次にエリザベス様、お願いします」
スカッとした気分に浸っているといつの間にか私の番が回ってきたようだ。確かに何度か派手な音が聞こえていたから間に何人か訓練が終わっていたのだろう。
とりあえずドールに近づいてみようか、それで魔法を放つ。
……どうやって?
「えっと……スピカ?どうやったら魔法が使えるのかしら?」
『ボクにめーレー、ボクがンバる』
「……おぉ、そうなの。じゃあ最大限の力であの案山子攻撃してちょうだい」
どこからか出てきた水の蝶、スピカがヒラヒラと私の周りを舞うので右手を差し出し、私の人差し指に舞い降りる。
そのまま初めて魔法を使った時のように大きく羽を広げた。
体の中に今までの比じゃないくらい大きな力が湧いてくる。それを、ドールを睨み付けて一気に放つ。
するとどこからかドールの頭の上に白い霜のような雲が現れて、太陽の光にキラキラと反射した。そこから大きな氷柱がドールに向かって落ちてくる。
低い地割れの音を響かせながら、降り続き冷気で近くの草花が萎れて氷漬けにしてしまった。私の味方のスピカちゃんはなかなかすごい事をするらしい。
今までガヤガヤとうるさかった貴族達も水を打ったように黙ってる。
「えっと、あの案山子がそのままなんですけど……」
『そノまマモどしちャえ、カィふくできるヨ?』
「そっか、水は回復得意だっけ?じゃあ、案山子の氷を解かして氷漬けの草花も元に戻して」
私の命令を受け、驚くような速さで冷気が収束していく。たった数秒で穴だらけでボロボロの案山子と周りを囲む枯れた草花だけになった。そして、体の中の力をもう一度使って周りの草花に向ける。
柔らかな光を発しながら下を向いた茶色い花々が徐々に生気を取り戻してほんの数秒で元よりも綺麗に咲き乱れるようになった。
よし、成功成功、さすが私の味方スピカちゃん。
「エリザベス様……契約初日であれほどの力を出せるとは、歴代の聖女にも匹敵する才能です……」
戻るやいなや、副団長さんが放心状態で私に語りかけてきた。周りも目ん玉むき出して驚いている。あぁ、表現がご令嬢らしくないと?仕方ないでしょう、私見た目は子供、中身は成人女性その名も悪役令嬢エリザベス
ですもん。私が心の中で何を思おうと勝手だろう。
「てことは、多分今聖女の第1候補になったんじゃねぇ?」
「え……私聖女とかなりたくねぇですわ、どうしましょうジル」
さっき心の中で……とか言ってた癖にガッツり声に出してたわ。危ない危ない、語尾だけ丁寧にしたけど誤魔化しきれてないだろうから固まったままの皆様にご令嬢スマイルを振りまいておこう。美少女のそれはそれは美しい笑みだよ?なんと今なら0円!どこかのファストフード店もびっくりの笑顔の良さだろう。
「で、でも!私は光魔法の使い手です!きっと聖女に選ばれるのは適性のある私でしょう!」
光魔法は攻撃力が皆無なため、この訓練を傍観していたはずのアイナ嬢が必死にレオン様に縋りながら訴える。
いや、まぁ…なりたくねぇとは言ったけどそこまで言う必要無くない?
あと貴女が引っ付いてるそこの王太子は目の前の私の婚約者なんですけど、気にせずにさも自分が本物の婚約者と言いたげに腕に抱きついてますね。
別にいいんですけど、そういうのはゲームが始まってからにしてもらっていいですか?




