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13、学園に入るまで待っていただきます!


リュシュア・ハルベルト

ハルベルト伯爵の長兄で、下に弟が3人妹が4人いる大家族のお兄ちゃんである。ハルベルト伯爵家は将来の進む道や生き方まで、他とは珍しく自由なフリースタイルのお家。彼はくすんだミルクティー色の髪の毛は毛先が遊んでいて、アメジストの瞳はこれでもかとタレ目。口元にほくろもあるという、チャラ男か遊び人みたいな見た目の人だ。

口調も柔らかいが、意外とずっと敬語でレディーには優しいジェントルマンである。ギャップ萌え?というやつか?

お兄ちゃんだから面倒見もよく、執事を目指しているという堅実ぶりからファンは多かった。もちろん、ゲーム内でもリアルでも。


「それっ」


かわいらしい掛け声と共に、魔法が発動される。そのかわいらしさと裏腹に、攻撃はかなり激しかった。地面が盛りあがり、ドールを飲み込んでバキバキと噛み砕いていく。正直誰よりもエグい。


「では次をお願いします」

「わかりました、えいっ」


天使の笑みを浮かべて、両手を広げる。器用にドールを避けて地面を飲み込んでいった。土属性の魔法だろうか、器用なものだ。

副団長さんからのオーケーをもらって、彼はこちらに戻ってきた。

そう、真っ直ぐ私の所へ。


「えっと……エリザベス・メイリーンですわ。ごきげんよう」

「初めまして、リュシュア・ハルベルトと申します。エリザベス様、お願いしたら僕にもそれをして貰えるのでしょうか?」

「はい?」

「ジオラークにしていた頭なでなでですよ」


キラースマイルを惜しげも無く私に向けて、とんでもない事をおっしゃりましたね貴方。いくらかわいいからって騙されませんわよ?

というか、さっきジオラークを呼び捨てにしていたから……もしかして


「ジオラークとお知り合いで?」

「えぇ、領地が隣でね。よく抜け出して遊んでいた仲なんです。今日も一緒にここへ来たのに、「お前といると周りがうるさい」って言って置いて行かれちゃったんです。やっと見つけたと思ったらかわいい女の子に撫でてもらって、羨ましいじゃないですか」

「お前と一緒にいたらよくわからん令嬢達が寄ってくるからだろ」


あぁ、やっぱり貴方達は幼なじみ設定でしたか。

私も幼なじみ設定がわかった途端にかわいくて身悶えた記憶がありますよ。あとジオラーク、よくわからん令嬢って失礼だぞ。


「それにしてもジオラーク、僕のリズに頭を撫でてもらうなんてどういう了見だい?婚約者の僕もまだなのに」

「ハッ、そんな婚約者をほっといて他の女とよろしくやってた奴にとやかく言われる筋合いはねぇな」


いつの間にか近寄っていた黒いオーラ全開のレオン様と、お前は婚約者かっ!と突っ込みたくなるような距離にいるアイナ嬢が、ジオラークと何か話していた。それも気にせず、隣のリュシュア様はニコニコと笑いながら私へまた話しかけてくる。

確か異名は『レディーキラーの執事見習い』だったか、その通りの爽やかスマイルですわ。


「ジオラークと同様に僕にも敬称も敬語も必要無いですよ?そうだなぁ……リューって呼んでください!」

「あ、ありがとう。じゃあ私だけはずるいから貴方……リューもそうしていいわよ?エリィ、とかどうかしら?」

「リズ!僕以外に親しくなるのは」

「私が誰と仲良くなろうがレオン様には関係無いんじゃなくって? 現に貴方もそうではないですか」


暗に「学園内ならまだしも婚約中は浮気すんなや」と示しながら、にこりと笑ってレオン様の言葉をぶった切った。

言葉に詰まったのか、苦しげなうめき声を短くあげたが気にせずに隣のリュシュアにそのまま笑いかける。

学園内ならばルートに入るので、時期を見誤らなければ必ず婚約解消できるが、こんな所でイチャイチャされても私と貴方に変な噂がたつだけでしょう。


「そうだ!よければジオラーク、貴方もジルと呼んでも?私のことはエリィと呼んで?」


至極楽しそうに笑ってジオラークに話しかけると、わかりやすくレオンハルト殿下が顔を歪めた。







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