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9、ヒロイン登場ですわ


私達が微笑ましいお戯れをしていた頃、野原の片隅で小さな光が発された。もちろん、私をはじめとした同い年の子達も護衛として着いてきてくれた騎士団の皆様も誰も気づかない程度の小さな光。

ギリギリ気づいたのは、私達を見つめていた副団長さんだけのようでした。


「すみません、私は少し此処を離れます。騎士団員は周囲に警戒していてください」


後ろに控えている騎士団員さん達が返事をするのを待たず、副団長さんは消え去ってしまった。魔法の類いだろうか、瞬間移動みたいにフワッと消えちゃった。すごい。


「どうしたんだ?柄にもなく焦ってたぞ?」

「わからない……リズは僕から離れないでね?」

「はい、わかりましたわ」


過去……というか前世の記憶を辿る。

10歳の出来事にはあまりストーリーの伏線は含まれていなかったはずだった。まずレオン様とジオラークがここで出会い、友情を育むイベント自体無かったはずなのだから。彼らは学園内では赤の他人だったもの、私がいるから何かしらズレてきてるのかもしれない。

となると、今頭の隅を掠めたあの出来事も無かったことになるかもしれない、というかなって欲しい。


多分だが今日この時間初めて攻略キャラとヒロインが会うのだから。


結ばれる直前の勘違いイベントで回収される伏線で、攻略キャラの初恋の相手は10歳の時に一目見た光を操る少女、となっているからである。ヒロインはその少女が自分だと気づかずすれ違い、最終的にそれが自分であると攻略キャラと共に気づくという、今思えば人騒がせなイベントである。

その伏線が今日張られるとなると、ここにいるレオンハルト王太子とジオラークは今からヒロインと出会い一目惚れすることになる。


「ただいま戻りました」


考え込んでいる内に副団長さんが帰ってきたようだ。

傍らには、同じ歳の頃のかわいらしい少女が目をキョロキョロさせている。


(やっぱり、ヒロインちゃんだ)


暗めの栗色の長い髪に、黒くて丸い瞳、綺麗というよりかわいいという表現が似合う顔。ゲーム内では幼さの残る顔に明るく優しい性格というヒロインもってこいなキャラクター性。

ゲーム内では、ヒロインと悪役のエリザベスが全て正反対になるように描かれているからヒロインはめっちゃいい子だ。

例えば、丸い瞳とつり目、ストレートの栗色の髪とウェーブのかかったストロベリーブロンドの髪、女の子らしい低い背とモデルのような高い背、柔らかい雰囲気と近寄り難い雰囲気、……慎ましい胸と存在感のある胸。


「お初にお目にかかります。レオンハルト・リスタニアです」

「俺はジオラーク・ミスミレンだ」

「わ、私はエリザベス・メイリーンですわ」


社交界では、位や地位が上の者から名乗らなければ下の者は名前を名乗れない。だから、レオン様の後に私達伯爵家が名乗る。

それにしてもこの2人立ち直り早くない?ずっと引きずる初恋の相手との邂逅だよ?

頬の1つも染めないだなんて、だからヒロインは初恋の相手が自分じゃないと勘違いするんだよ。

命の危険が目前とサイドに3つあるのに、呑気にそんな事を考えていた私は図太いのだろう。









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